第102話


 ダンジョンでの出来事から約1週間が経ち帝国と対抗戦をする日になった。

 学園対抗戦の時と同じ闘技場を使うことになり、王国の代表生徒10人と帝国の代表生徒10人、それから審判を含めた21人が舞台に上がって開会式の始まりを待っていた。


「よ、カイ。ついに今日だな!」


 後ろから急に肩を組んできたのは前回の対抗戦から仲が良くなったメッサーだった。


「楽しみだな!つえー奴はいるかな」


 ものすごく楽しみにしていたのか1人でに話し始める。


「どうだろ。でも強いと思って戦った方が良いと思うよ」

「そうだね。見た目から強そうだよ」


 カイとミカが強そうだと言ったため、メッサーより楽しそうな顔をする。

 そしてカイとミカは根拠もなく強いと言っているわけではない。2人とも相手の魔力を流れを見て結論付けだのだ。帝国の生徒は全員が王国の生徒よりもうまい魔力操作で待機している今も動かして練習していた。それに比べ王国の生徒はただ突っ立って話しているだけだ。軽く体を動かして準備運動をしているのは帝国の生徒とカイ達3人だけで、それを見た王国の生徒は馬鹿にするような目を向けていた。


 開会式の途中で今回の試合の内容が詳しく説明された。

 今回の対抗戦は今日1日かけて個人戦をし、明日に2対2の団体戦をすることになった。その時の団体戦のペアは自分達で組み、今日までに係に連絡することを言われた。

 また、ルールは学園対抗戦の時と同じ物だった。帝国も同じようなルールで対抗戦をしたことがあったためか混乱はなかった。

 その後、国王と皇帝から一言ずつ貰い、最後に対戦の組み合わせを発表されて開会式は閉式となった。

 カイとミカの2人は学園対抗戦で優勝と準優勝だったため、今回来た生徒の中でも1番と2番目に強い生徒が相手となった。そして、カイの対戦相手の名前は『ルナ』だった。


 さっそく初戦が行われることになり、カイとミカは舞台が見やすい位置に来ていた。初戦は何とメッサーが出ることになっていた。

 先にメッサーが舞台に上がり歓声が上がる。カイ達は入場してくるメッサーと目が合ったため拳を前に出すとメッサーも拳を出し返してくれた。

 相手の生徒が入場してきて審判から確認された後、メッサーはナイフを構える。相手は剣を構えた。

 開始の合図でメッサーは相手に特攻をかける。相手はそれを剣で受け止め、カウンターをするが、メッサーは避ける。メッサーが距離を開けると相手は驚いた表情に一瞬なると先程よりも真剣な顔になる。そして、メッサーは逆に冷や汗をかいていた。観客性からは見ることが出来ないが、メッサーの服が切れているのだ。メッサーは完璧に避け切ったつもりだった。

 メッサーは魔法を撃ってその隙に接近するつもりで魔法を放つ。


「ウォーターキャノン!」

「ハァ!」


 皆がそのまま飛んで行くと思ったウォーターキャノンは飛んで少しすると、真っ二つに割れた。相手がやったことと言えば、ただ剣を縦に振り下ろしただけだった。王国の国民達は魔法道具マジックアイテムによってそうなったと思うことにしたが、実際は剣から風を飛ばしただけだった。

 メッサーは自分が撃った魔法がどうなったか見る前に体勢を低くして接近してナイフを振る。王国の生徒相手だったらそのナイフは入っていたが、帝国の生徒はそれをいとも簡単に受けきった。メッサーは勢いを殺さずに、流れるように追撃しようとしたが、衝撃が走り出来なかった。よく見ると、相手がメッサに受けて手を向けていたのだ。そして怯んだメッサーに向けて相手は強風を送る。メッサーはそれを受け止められず、場外まで飛んでいく。

 試合開始から数分しか経っておらず、こんなに早く決着がつくと思っていなかった審判は固まるが、場外になったメッサーを見て相手生徒の名前を言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る