第95話
学園対抗戦や王への謁見などが終わってすぐに長期休みになった。
長期休み初日。カイとミカはいつも通り特訓していた。
特訓の内容は学園対抗戦の時に言っていたように魔力感知だ。ミカに目隠しをさせて当たらない様に魔法を撃ったりしているが、ミカはどこに魔法が飛んでくるか感知が出来ないでいた。
カイはラウラに魔力を渡されたときには魔力感知が出来るようになっていたため、ラウラには魔力感知を習得した後のことしか教わっていない。セレスも感知を使えるが、セレスは学園対抗戦直後に帝国から連絡があり、今は帝国に戻ってしまっているためいない。
行き詰ったミカはまぐれだったと言って落ち込みながら少し自棄になっている。カイはあれがまぐれでは無く覚醒の兆しだったと確信している。だが覚醒させるあと一押しが分からないでいた。
自分では教えられない。そこでカイはある提案をすることにした。
「2日後に師匠の所に行くって言ったじゃん?」
「うん。カイはもっと強くなって帰ってくるんだよね…」
「えーと…。その時師匠にミカが来て良いか聞いてくるから師匠が良いって言ったら来る?」
それを聞いた瞬間にミカは嬉しそうな顔になるが、困ったような顔になる。
「嬉しいけど、長期休みはお母さんと過ごすって約束したから…」
「なら数日間だけでも泊まって良いかフラージュさんに聞いてみよ」
そう言うと、カイはミカの手を引きミカの家に向かった。
ラウラの家に数日泊まることの許可をフラージュから貰ったカイは、予定を早めすぐにラウラの家に向かって出発し始めた。
数日でバーシィ領に帰って来たカイは都市に入りすぐに森に向かう。もちろん顔を隠すのを忘れずに。今回はローブが無かったため、仮面だけをつけて森に向かう。
特に問題は無く。道中で会った敵を瞬殺しながら進むと、すぐにラウラの家の結界に着く。前の長期休みでカイも魔力を流して結界を作ったため、今回は壊さずに入ることが出来た。
結界内に入り、仮面を外してから家の扉を開けるとそこには椅子に座ってゆっくりしているラウラがいた。
「お帰り。急いでどうしたの?」
「ただいま。実はラウラにお願いがあって」
カイはラウラにミカが魔力感知を覚えるために教えてほしいとお願いした。
「ん。その子を連れてきて。でも今日は泊まって」
既に日が傾き始めていたため、ラウラに言われ明日王都に戻ることになった。
カイがミカをつれてくるために王都に向かった数時間後、ラウラの所に客が来ていた。
ラウラは結界の外に出てその人物を待つ。
「あなたがリアが言ってた人?」
「あなたもこの距離で感知出来るんですね。そうです私が~~~です」
ラウラの視線の先には白ローブがいた。白ローブは名前を言うと、仮面を取ってお辞儀をした。
「あなたのことはリアから聞いてたからすぐに分かった」
「それでもこれに気づくのは凄いですよ…」
白ローブはそう言いながらローブをひらひらさせると、本題を話し始めた。
「事前に団長から聞かされたと思いますが、今日は挨拶に来ました。それとあなたが王国にいない間カイ君のことは任せてください。絶対に守り抜きます。その代わりお願いがあるんです」
「お願い?」
「はい」
白ローブはお願いを話した後、ラウラの前からいなくなる。ラウラは振り返り結界の中に入っていくと家の中でゆっくりし始めた。
同じ道を通りカイが王都に戻ると時刻は昼前だった。門を通ったカイはさっそくミカの家に向かった。
家に着いたカイが扉をノックするとミカが出て来た。
「カイ!入って入って」
ミカに急かされて家に入るとミカしかおらず、フラージュの姿が無かった。
「フラージュさんは?」
「今は買い物に行ってるよ。夕方には帰るって」
そう言いながらミカがお茶を出してくれたためそれを飲む。
「師匠に聞いたら連れてきて良いって」
「本当!わざわざありがと!」
「出来れば明日には出たいんだけど良い?」
「分かった。お母さんにもそう言っとくね」
その後ミカと話しているとフラージュが帰ってきたため、カイは再度明日ラウラの所に向かうことを話した。
次の日カイがミカの家に行くと、準備が終わってソワソワしているミカと落ち着かせようとするフラージュがいた。
「じゅあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい。2人とも気をつけてね」
修業をつけてもらうため、ミカはカイに案内されながらラウラの家に向かい始めた。
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