第91話
カイとミカは帝国との対抗戦への出場権を手に入れたが、この学園対抗戦では優勝者を決めるまで戦うことになっている。生徒達にはその目的は離されていないが、生徒間では対抗戦の時のリーダーを決めるのが目的ではないかと噂されていた。
カイは再度、身体検査などを受けてから舞台に上がる。今度の相手はナイフを使う相手の様で、両手に逆手でナイフを持っていた。
開始の合図が出されると同時に相手が走ってくる。ここまでの相手と違い魔力を纏っていたためにカイの元に来るまでが早い。そのためカイはむやみに攻めず、まずは防御の姿勢に入る。相手は片方のナイフを勢いを殺さないように上から振るうが、カイはいとも簡単に軌道をずらす。相手もここまでは予想していたようで、もう片方のナイフでカイの腹を切るために横に振るう。カイは今度は後ろに跳んで避ける。これを予想していなかった相手はナイフを振りぬいたところで一瞬固まってしまう。そこで今度は接近したカイが攻める。カイが相手の腕を蹴ると、持っていたナイフが舞台の端まで飛んで行く。それでようやく状況が分かった相手は、次のカイの攻撃を受け止める。だが急な攻撃だったために体勢を崩してしまう。転びはしなかったが、その後はカイの攻撃を防ぐのでいっぱいで反撃できずにいた。
魔力を纏っていないにも関わらず相手を一方的に攻撃する者、魔力を纏っているのに防御しかできずに時々攻撃をくらっている者、今闘技場で起きていることに改めて観客達は理解が出来ていなかった。
長い間、攻防が続いているが、相手は一歩一歩少しずつ後ろに下がっていき、ついに場外まであと一歩になってしまった。
「ウォーターボール!」
相手は防御を捨て、魔法でカイのことを攻撃した。だが、感知で分かっているカイは避ける。そして相手は拳がもろに腹に入り、気絶することは無かったが舞台の外に足をついてしまった。
「しょ、勝者 総合第一学園 カイ」
勝者の名前が呼ばれた瞬間、相手は気力が尽きたのかその場で座り込む。それを見て審判は急いで相手に近づくが、相手がそれを手で静止させる。
「まさか、近接戦で負けるとは思っていなかった。俺もまだまだなんだな」
すると、相手がカイに向かって話し始めた。
「入場した時に紹介されたが、改めてメッサー=ゼーラだ。覚えてくれるとありがたい。また今度再戦してくれ」
「俺はカイです。是非お時間が在りましたら再戦しましょう」
「俺には敬語なんて使わなくて良いぞ」
そう言いながらメッサーが手を出してきたため、カイはその手を握り、引っ張りメッサーを立たせた。
カイとメッサーは話してる間も、観客達は関係ないとでも言うようにカイに向かって罵声を浴びせていた。
観客席に戻り、カイは先程のメッサーについて知ってることが無いかラクダレスに聞く。
「彼は有名人ですよ。2人は『ゼーラ流武術』を知っていますか?」
カイはそんな物全く知らなかったため首を傾げる。そんなカイを見てミカが『ゼーラ流武術』について話し始める。
「『ゼーラ流武術』って言うのは王都で一番有名な武術だよ。さっきの人みたいなナイフ術だけじゃなくて、ありとあらゆる武器の指南をしてくれる所だって聞いたよ」
「ちなみにどのくらい有名かと言うと、兵士たちのほとんどがこの流派の指南を受けてます。先程のゼーラ君はゼーラ家の息子であり、ナイフ術の師範だそうです」
これにはカイと、師範だと知らなかったミカが驚いた。
「彼はつい最近まで平民で腕を見込まれてゼーラ家の養子となったそうですよ。私が知ってるのはここまでです。もっと調べてみますか?」
「いや、大丈夫です。ある程度知れれば良いな程度だったんで、予想してるよりも知れて良かったです」
「そうですか。そう言えば、知らなかったカイ君が『ゼーラ流体術』ではないのは分かりましたが、ミカさんはどこの流派何ですか?ミカさんが使う槍術を私は見たことが無かったんです。もしかして我流ですか?」
ラクダレスの質問に対して、ミカは思い出しながら楽しそうに話し始める。
「実は昔『ゼーラ流槍術』を学びたいって母に言ったんです。そしたら「私が教えるよ!」って言われて母に教わったんです」
「良いお母さんだね」
「そうでしょ。ただね、この後が面白くてさ。興味本位で「お母さんとゼーラ流の師範、どっちの方が強いの?」って聞いたら、次の日にゼーラ流の道場まで行ってお母さんが師範と戦ったの」
今まで楽しそうに聞いていたカイとラクダレスの顔が驚いた物になる。カイに関しては驚きながらも、結果がどうなったのか気になってるようだった。
「結果はお母さんの完勝。師範は傷だらけで座り込んでたけど、お母さんは息をあげないどころか汗1つ掻いてなくて、終わったら私に笑顔で「お母さん槍だったら誰にも負けないよ!」って自慢してきたの」
ラクダレスは先程よりも驚いた顔になり、カイに関しては戦いたいと言いたそうな顔になっていた。
「す、すごいお母様ですね…。それなら魔法もお母様に?」
「えーと…。魔法に関しては教えるのが下手なんです。「グアーって感じで魔力を体の奥から出すんだよ」とか「魔力はスーって動かすんだよ」って教えられて…。なんで魔法に関しては独学です」
そう言いながらミカが苦笑いすると、ラクダレスも、それまでずっと戦いたいと
言うような顔をしていたカイも苦笑いするしかなかった。
話していたら、ミカの試合まであと一試合となったため、ミカは控室に移動する。すると、前の試合は序盤で片方の生徒の魔力切れで終わったため、すぐにミカの番になった。
ミカの相手はミカと同じで槍を使う女生徒だった。ただその槍はミカの物と違い無駄な装飾がたくさんあり、その装飾のほとんどがキラキラした宝石だった。
「私は『ゼーラ流槍術』の使い手よ!お願いするなら手加減してあげるわよ?」
他の生徒と同じ様に、舞台に上がった瞬間にミカに高圧的な態度で話しかける。
「負けたときの言い訳が欲しいんですか?」
「…後悔しなさい!手加減なんてしてあげないわ!」
相手は怒りながら槍を構える。それに続いてミカも槍を構える。
「試合開始です!」
相手はミカのことなんか考えずに、その鋭い刃をミカの喉突き刺さるように突きを放つ。それをミカはしゃがんで避ける。するとミカは相手の足に向かって薙ぎ払いをする。これが相手だったら迷わずに刃で切りつけるだろうが、ミカはしっかりと柄を足に当てる。薙ぎ払いをくらったことで相手は倒れ、起き上がろうとしたときには既に首元にミカの槍の刃が添えられていた。
「こ、降参しますわ」
相手はもう動くことが出来なかったため降参した。審判は一瞬の攻防について行けてなかったが、降参したのを聞いてミカの勝利宣言をした。
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