第90話
学園対抗戦、2日目にして最終日。カイとミカは前日通り観客席で見ていた。
ただ、いつもと違い今回はラクダレスも一緒に座っていた。
そして、昨日同様、カイの方が先に出番が来た。
カイは控室に行くと、昨日と違って、先に待機している杖型の
カイが控室に入った後すぐに、昨日の一回戦の始まる前に入って来た人と同じ人が入って来て、同様にカイのことを睨んできた。そこでカイはこの男と昨日の二回戦に来た男が自分の監視役だと気付いた。
精神統一していると、係員に入場口に来るように言われたため向かう。
入場口で身体検査を受けてから入場口から出ると観客席からブーイング起きる。その数は明らかに昨日を増えていた。
そんな声を聞きながら舞台に上がると、相手は昨日まで先に控室にいた男子生徒だった。
審判が確認を取った後、開始の合図を出した。
すると、相手はすぐさま杖に魔力を流し始めた。カイはある程度接近すると、相手は
「ウォーターボール」
カイの耳に気だるそうな声が聞こえると、言葉通りウォーターボールが飛んで来た。カイは今度は横に転がるようにして避ける。
「ウォーターバレット」
相手は間髪入れずに魔法を撃ってくる。カイは舞台上を走り回り避けると、舞台はいつの間にか水浸しになった。その間相手は上手く魔法を使い、カイを接近させなかった。
「ウォーターキャノン」
相手は威力の高いウォーターキャノンを撃つと、カイがそれに当たったのか確認することなく、杖に魔力を流し始めた。もちろんカイは飛んで来たウォーターキャノンも避けて、動かなくなった相手に向かって走り始める。相手が杖に魔法を溜め終わる前に接近出来たカイは、相手の顔面目掛けて蹴りを放つ。相手は目を見開いて驚くが、何とか杖で蹴りを止める。
「うっ!つっ!ぐはっ!」
相手は何とかカイの攻撃をつたない体術と棒術で防ごうとするが、全てを防ぐことは出来なかった。数十回攻撃をくらった相手はフラフラになりながらも、なんとか杖に魔力を溜め切った。その杖をカイに向けた瞬間、カイは斜め後ろに跳ぶ。すると相手はその杖をカイから自分の足元に向け直した。直後杖から炎を出す。すると、その炎の熱で相手の周りだけ水が無くなる。
「ぐぅぅ」
相手は炎の熱によってできた火傷の痛みで声出しそうになるが、それを何とか耐える。カイは足に向けて魔法を撃ったことに固まってしまったが、すぐに正気に戻り相手に向かって走り出す。相手は手に持っていた杖を手放し、地面に向かって手を向ける。そのころにはカイはもう接近出来ていた。だが、相手はカイのことなど見ずに魔法を撃とうとする。
「サンダーボール!?」
魔法名をを言った瞬間、相手は勝ったと歓喜したが、途中で手首を握られ上に向けられた。相手は驚きながらも、自分はやろうとしていたことが危険だと言う判断で審判に止められたと思いながら手首を握っている人を見てると、それは自分の真横に移動していたカイだった。意外な相手に止められたことで相手は止まる。カイは止まった相手の鳩尾を殴る。相手はそれをくらい前のめりに倒れる。相手はそこで痛みで気力が尽きたのか、気絶してしまった。
相手を支えていたカイは審判を呼ぶと、審判は気絶していることを確認すると、カイの勝利を宣言する。
カイは今回は入場口に戻らず、観客席まで戻る。
「帝国との対抗戦参加決定おめでと、カイ!」
戻って来たカイに向かってミカが言った。
ミカが言った通り、先程の試合に勝ったことでカイは帝国との対抗戦への出場権を手に入れたのだ。今日の試合で1回勝てば、出れるのだ。
「ありがとう。試合頑張ってね。ミカなら勝てるはずだから」
「そうですよ。ミカさんなら勝てるはずです。頑張ってきてください」
「はい」
そのあとは、他の生徒の試合を見ながらミカの番になるまで3人で待った。
少ししてからミカの番になったため、カイとラクダレスは楽しみに思いながら待つ。
すると、先にミカが呼ばれ入場してくる。
次に相手の生徒の名前が呼ばれた。
「続いて!総合第三学園 マスカル=ブラン!」
その名前を聞いた瞬間、カイの顔をしかめる。そんなカイを見てラクダレスが話しかける。
「どうしたんですか?」
「…あの生徒、あんまり良い性格ではないですよ。長期休みに兄に会ったんですが。その兄が人を痛みつけるのが趣味だったんです。相手の試合を前に見たんですけど、そんな兄と同じ笑顔をしてたんです」
「…そうですか。審判ですね」
2人の会話はそこで途切れた。
「おい、女。せいぜい良い悲鳴で鳴けよぉ」
ブランは舞台に上がった瞬間にミカにそう言った。ミカは何も反応せず、だた槍を構える。
ブランは笑いながらもミカと同じ様に棒を構える。
審判が合図を出した瞬間にミカは魔法を撃つ。
「っつ。いってぇなぁ。ふざけんじゃねぇぞ!」
ブランは怒り、棒を振り回しながらミカに向かって走ってくる。だがカイが見た試合で使っていた身体強化は使わず、素の状態だ。ミカも走り出した。そう思っていると、ミカは気づいたらブランの後ろにいた。観客達がミカの姿を確認した瞬間、ブランが倒れた。
審判は驚きながらも、倒れているブランを確認するとブランは気絶していた。そのため、ミカの勝ちとなった。
カイの時と違い、歓声をあげられながら退場したミカはすぐにカイ達がいる観客席に来ていた。
「お疲れミカ。ミカも出場おめでとう」
「ありがと!」
「ですが、ミカさんがあれを使うとは思いませんでしたよ」
「早く終わらせた方が良いと思ったんで使いました」
最後の高速移動はいつも通り、ミカが足に雷を纏わせたものだった。
「カイ君と相手の生徒は性格が良くないと話していたんで、無傷でよかったです」
「そうなんですか?」
「前に話した俺の性格が良くない兄と同じ顔をしてたんだよ」
ミカはカイから聞いたグイを思い出し「あー」と言った後、そんな相手とすぐに決着がついてよかったと言って、3人で安堵した。
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