第85話
学園対抗戦は一般客にも公開されるようで、カイとミカの周りの席は一般客で溢れていた。観客たちはまだ開会式ですらしていないと言うのに盛り上がり始めており、多くの人が酒を呷っていた。
少しして、会場が先程よりも盛り上がり始めたころで、舞台の上に審判が拡声器型の
「観客の皆さまぁぁあ!大変長らくお待たせしました!各学園から集められた代表生徒達による、王国最強の学生を決める戦いが今始まります!只今より学園対抗戦を開始いたします!!」
審判が開会の宣言をすると観客席にいた人全員が声をあげる。会場のボルテージは最高まで上がる。
その後は国王からの言葉があったり、審判がルール説明するなど色々あり、特に問題が起きることは無く、さっそく第一試合が開始されようとしていた。
「カイはどっちが勝つと思う?」
ミカがカイに聞く。周りがバカみたいに騒いでいるため、ミカの言葉はカイ以外に聞こえていなかった。
「魔法第一と第三養成学園だからなんとも言えないけど…魔法の対策が上手く出来たら第三養成学園の生徒が勝つと思う」
カイが予想を言った瞬間に試合が始まった。
試合は泥仕合のひと言だった。結論から言うと魔法第一学園の生徒が勝った。見ている観客達は大いに盛り上がったが、カイ達は見ていて楽しい者じゃなかった。
試合開始と同時にお互いが
その後の試合は多少使用度に差があれど、全てが
「
「たぶん全員が
「そうだけどぉ~」
ミカがつまらなそうなにしていて、まだ言いたいことがあるようだったが、カイの試合の2試合前になったため、ミカをなだめてから控室に向かった。
控室の中に入るとすでに1人だけ男性がおり、試合の準備をしていた。お互いに目を合わせることなく準備していく。途中でもう1人控室に入ってくる。その男はカイのことを睨んだまま壁にもたれ掛かる。
途中で最初に待機していた男が、突然立ち上がると片手に杖型の
その後、カイは観客席で起こる歓声を控室で聞きながら待機していた。その間後から入って来た男はカイのことをずっと睨んでいた。
歓声が控室にいてもうるさいと感じられるくらいに最高潮になり、少しすると先程の男が控室に再度入って来て、置いていた荷物を持って再度出て行った。
少しすると、カイは呼ばれたため舞台に向かった。
「それでは次の試合です!!彼はまさに魔法の神童!魔法第二学園~」
生徒の説明に入り、相手の女生徒が入場して舞台に向かってゆっくり歩いて行く。舞台に着きそうなところで、今度はカイの説明になる。
「今度の生徒は何と珍しい!数十年に1人いるかいないかの魔法を使えない少年!総合第一学園 カイ!」
呼ばれたためカイが舞台に向かい始めると、歓声が上がることは無く、観客の7割程は困惑した表情に、残り3割はブーイングをし始める。
カイはそれを無視しながら舞台に行くと、相手の女生徒が話しかけ始めた。
「今なら痛い目に合わないです。棄権して下さい」
「痛い目に合うからって棄権なんて出来ないです。それに俺はあなたに勝ちます」
「魔法が使えない可哀そうなあなたにわざわざ忠告してあげたと言うのに無視するんですね。分かりました。全力であなたを痛めつけてあげます!」
そう言うと、相手は杖を構えた。それを見てカイも構える。
「準備は良いですね?」
審判は拡声器から口を少し離してから2人に確認を取る。お互いが返事をしたのを見て離れてから拡声器で話し始めた。
「お待たせしました!では試合開始です!」
合図が出たため、カイは一目散に相手に向かって走り始める。
「ウィンドボール!」
相手は魔法を撃って接近させない様にする。不可視の風での攻撃のため、女生徒はこれに当たったと思っていたが、カイは紙一重で避けた。予想していなかったことに固まったため、カイは走っていた速度をのせたタックルをする。タックルを防御もせずにくらった彼女は、衝撃で杖を離してしまう。カイはそのまま場外に持って行こうとしたが、彼女もここで負けるつもりは無いため魔法を撃って来た。
「ウ、ウィンドバレット」
魔力がほとんど込められていない魔法だったが、当たったらよろめく位の威力は合った。カイは後ろに飛ぶことでそれを避けると、女生徒はポケットの中に隠していたナイフ型の
「くらってください!」
彼女がそう言うとナイフの先端に風の刃が発生する。もしも当たったら簡単に体が2等分されるくらいの切れ味を持った刃が飛んでくる。カイは横に跳んで避けると、女生徒は驚いた顔をする。
「何で見えないのに避けられるんですか!?」
「全部真っすぐなんで分かりますよ」
女生徒は驚くと長い間固まってしまう癖があるのか、カイは彼女の所まで簡単に接近出来た。動かない相手の手を掴んで引っ張る。体勢を崩した所でカイは相手を投げる。投げられた女生徒は何とか転がることで受け身を取ったが、場外まであと一歩だった。立った後に場外の線を見た女生徒は焦った顔でカイを見ると、目の前にカイが迫っていた。近くに来たカイは彼女の肩を軽く押すと、彼女はそれに耐えられず、足を後ろに移動させて体勢を整えた。
「そこまで!勝者 総合第一学園 カイ!」
審判に勝敗を宣言されたことで女生徒が足元を見ると、見事に場外の線を越えていた。
「…納得できません。次は勝ちます」
女生徒はそう言うと、そのまま入場口に歩いて行った。
観客は勝者が出たと言うのに歓声を上げることは無く、ほとんどの観客は何が起きたのか分からないようだった。
カイがミカの方を見ると、笑顔で手を振って何かを言っているが、入場の時にブーイングしていた者達がその時よりも大きな声でブーイングしてきたため聞こえなかった。
それに対してカイは少しイライラしながら入場口に戻って行った。
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