第84話


 誰もが寝静まる夜、1人白いローブを被った者がある貴族の屋敷を遠くの屋根から見ていた。その屋敷は外から見るだけでも20人くらいが屋敷の周りを巡回していた。巡回者の数を確認した白ローブは、屋根から静かに下りてゆっくり歩いて屋敷に向かって歩き始めた。




「今日も静かだなー」

「貴族様に喧嘩売るバカはいないだろうからなぁ」


 門番が雑談している中、巡回している兵士が近づいてきた。


「おーお疲れ。なんかあったか?」

「あー?あるわけな…」


 巡回中の兵士が門番と話そうとした瞬間にうつ伏せに倒れた。


「おいおい酔っぱらってんのかー?」

「いくら暇だからって酒は飲むなよー」


 門番たちは笑いながら倒れた兵士に近づいて行くと、血を流しているのが分かった。


「なっ!?大丈夫か!?」

「今すぐ医者を呼んでくる!」


 片方の兵士が医者を呼ぼうと離れた瞬間に先程の兵士と同じ様に倒れた。


「おい!!どうした!?」


 残った兵士が声をかけるが、その兵士も何かによって倒された。最後の兵士が倒された直後、3つの死体は一瞬にして無くなった。


「これで兵士は全員やっつけたね」


 声がした瞬間に血が垂れているナイフを持った白ローブが現れた。

 2回ナイフを振って血を飛ばした後にローブの下にナイフを仕舞ってから屋敷の中に入って行った。


 白ローブが魔力感知を使ってみると中には50を超える反応があった。

 これは白ローブが事前に集めた情報通りで、そのうち約40人がこの屋敷の主が雇った犯罪者たちだった。

 割合として地下に30人、1階に15人、2階に5人、3階2人だった。


 静かにばれない様に入った白ローブは初めに地下へと向かった。


「飲め飲めーー!」


 地下に下りると、犯罪者たちは晩酌して騒いでいた。地下は3部屋に分かれており、白ローブは1つの扉を開けた。扉はキィーと甲高い音をたてながら開いた。


「あ?誰か開けたか?閉めとけよー」


 この部屋のまとめ役みたいなやつがそう言うと下っ端が扉を閉めた。

 扉が閉まった瞬間にその下っ端が倒れる。


「あー、どうした?」

「がぁ!?うぅぅぅ」


 下っ端の足を見るとアキレス腱切れていた。そのため痛がって倒れたのだと声をかけた男が気づいた。


「おい!!どうし…」


 そこまで言うと、男の首が切られ血が噴き出した。周りにいた者達は状況を理解できなかったため固まったが、まとめ役の男が声を上げた。


「気をつけろ!なんか…」


 そこまで言って先程の男同様に首から血を噴き出した。周りは混乱して叫び声をあげるが、確実に一人一人やられていった。最後に残ったのは最初にアキレス腱を切られた下っ端だった。


「ねぇ、あなた達の仕事は何なの?」

「だ、誰だ!!どこにいる!!」


 聞き返した瞬間に下っ端の両腕が斬り落とされ、男が叫び声をあげる。


「仕事は何?」

「お、俺たちはガキを殺せって言われただけだ。場所はあのジジィが教えるって言われてる。俺は雇われの身なんだ。だから助けてくれ!」


 男が命乞いをするが、白ローブは下っ端の首を切った。




 白ローブは残り2つの部屋にいる犯罪者たちを同じ様に倒すと1階に戻った。1階にいた15人は使用人たちだったため白ローブは誰も会わない様にして2階に行った。

 2階の魔力反応がある部屋に入ると、男1人と女4人がいて、男は女たちに酒を注がせていた。


「もっと酒を持ってこい!足んねぇーぞ!!」


 男がそう言うと、1人の女が酒を持ってくるために離れた。その瞬間に白ローブはナイフで接近し男の首を切る。血が噴き出した瞬間は女達は何が起きたか分からないと言うような反応をしたが、少しして全員がキャーと叫び声上げる。その叫び声を聞いた瞬間に下から数人が走ってくる音が聞こえたため白ローブは3階に行く階段に向かった。


 3階ではこの屋敷の主と犯罪者達のリーダーが作戦の詳細を話していた。その主とは、総合第一学園の3年Aクラスの担任だった。


「言ってたガキはこいつだ。こいつをお前らに殺してほしい」

「こんなガキ相手に俺たち40人で殺んのか?」

「なめるな。この前30人に依頼したが全滅だ。あいつらを処理するのにどれだけ苦労したことか…」

「ほぉー、そのガキ強いな」


 主人がリーダーに写真を見せながら話していると1人の使用人が扉を叩いた。


「ご、ご主人様!ご子息様が!」

「何だ」

「ご子息様が何者かに」


 使用人が急に話さなくなったことに不審に思っていると扉が開けられた。

 扉の先には白ローブがいた。


「誰だ」

「学園の教員が生徒を殺そうとするのはどうかと思うよ?」

「ふん、無能が学園にいさせるわけにはいかんのだ」


 白ローブはそう言うと主の喉を切ろうとしたが、リーダーが持っている斧で防がれた。


「おいおい、俺様の雇い主を殺そうとするなよ」

「あなたも殺す予定だから今は引いてくれない?」


 白ローブは先程まで纏っていなかった魔力を纏い男を蹴る。男が壁に向かって飛んでいき、白ローブは主とすれ違う。白ローブの腕にはナイフではなく、槍が握られており、その刃には血がついていた。白ローブが槍を振って血を落としたところで主が叫び声をあげる。主は腕と足が斬り落とされていた。


「お、お前ただではすまんぞ…!おい、そいつを殺せ!殺したら財産をすべてやる!」


 主はいつの間にか立っていたリーダーに向かって命令する。リーダーは白ローブに向かって大剣を構える。


「そんなこと言われなくたってこいつは殺す。安心して寝ろ」


 そう言いながら白ローブに接近するが、白ローブは動かない。接近したところで白ローブが槍を振ったためリーダーは槍を受け止める。


「フレイムバレット!」


 リーダーが撃った魔法を白ローブは避けると、魔法は本棚に当たり火が移った。


「死んどけ、フレイムキャノン!」


 リーダーは接近しながら魔法を撃つが、白ローブは先程と同じ動きで魔法を避ける。避けた先で近くに来ていたリーダーに向けて薙ぎ払う。リーダーはそれを受け止める体勢に入るが一向に槍が来ることは無く、気づいたらリーダーの腹に槍が刺さっていた。


「なっ!?」


 男が驚愕の声をあげるが、白ローブは気にした様子は無く槍を抜き首を斬る。リーダーは腹を貫かれた痛みと驚きで動けずにそのまま首と胴体がおさらばした。

 白ローブは燃える部屋の中で何も言わずに主に近づく。動けない主は白ローブのことを睨むしかなかった。何か主が喋ろうとしたが、その前に白ローブが首を斬ろ落とした。

 白ローブが扉から出て、最初に蹴飛ばした使用人を掴んだまま部屋の窓から飛び降りる。使用人はそこに置いて、白ローブはカイ達の前から消えたときと同じ魔法を使い姿を消した。

 次の日、屋敷が燃えて、ある貴族一家がいなくなったことで都市中で騒がれたが、いつまでたっても犯人は見つからなかった。

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