第78話
白ローブがいなくなるのを見て、アルドレッドとセレスはまたかと言うよな目をしており、カイは突然目の前から消えたことに驚く。
「アルさん!?消えましたよ!?」
「あぁ、昨日も同じ様に消えたんだよ。セレスが感知使って調べたが探せなかった」
「えっと、感知できなかったのは
「ん?ならなんでカイは感知出来たんだ?」
「近くにいればいるほど感知できなくなる物みたいです。俺はそれなりに遠くの方にいたので感知出来たんだと思います」
「私が感知出来なかったのは近くにいたからだったのね」
セレスが昨日探知できなかった理由もわかり、その後はローブ男達のことについて何か収穫があったか聞き合うが特に情報は無く、対抗戦が終わった後に医務室で会おうと言い別れた。
(あの子すごい感知能力だったなー)
そのころ、カイ達の目の前から消えた白ローブは大通りに入り人混みに紛れていた。
普通白いローブを着た人などがいたら目立つが、誰も気にした様子は無く隣を素通りしていく。
(100mも接近されるなんて初めてだよ。団長でも150mは接近できなかったのに。何者なんだろ?)
疑問に思いながらそのまま大通りを通って行くと、途中で曲がり住宅街に入っていく。
(団長が『自分以上に魔力感知と操作が出来るのはラウラだけ」って言ってたから、ここまで接近出来るのはラウラさんって人だけだと思ってたけど...。そのラウラって人の弟子だったりするかな?)
カイの正体を予想しながら歩いていると目的の場所を見つけたのか早歩きになる。そこは普通の一軒家で白ローブは普通に扉を開ける。
「ただいまー」
元気よく言いながら白ローブは入っていた。
闘技場で予想されていた予選が終わり、教師たちは会議室に集まっていた。
「それで、無能は不正をしていたか?」
議題はもちろん本選に上がる生徒のことだ。特に絶対に勝ちあがってこないと思われていたカイのことだった。
「い、いえ、身体検査をしましたが武器はおろか
「本人確認は?」
「しました。確かに本人でした」
学園長は目を閉じ何かを考え始める。他の教師たちは学園長が話すのを黙って待つ。
「おかしい!!」
我慢ができなかったのか、カイのことを高圧的な態度で詰め寄った初老の男が机を叩きながら叫ぶ。
「うちのクラスのビューンが負けるわけがない!!あいつが不正をした以外ありえない!」
「そ、そうだよな?うちのトップ2の片割れが負けるなんて...」
「ビューンとグリンドの2人で他校を蹴散らす予定だったのに」
「無能が勝つなんておかしくない?」
皆も我慢していた分一気に話し始める。
「学園長!無能を不正したとして出場停止にすべきです!」
その声に他の教師からは賛成の声しか上がらなかった。
「...それは出来ん」
「なぜですか!?」
「証拠が無くては王子が認めん」
学園の運営などは学園長が行うことになっているが、それを決定する時は必ず国に報告することになっており、それをチェックしているのが王子だった。今回の対抗戦で不正をしたとしてカイを追い出そうとしても、王子に「証拠は?」と言われてしまう。しかも、それがでっち上げの場合は学園長が解任され殺されてしまう。
「王子様...ですか...」
王子のことを聞き、皆が暗くなる。
王子は決まりに対してとても厳しいが自分は平気でその決まりを破り、好き勝手している。つまり、自分に甘く他人にとても厳しいのだ。
貴族は平民に対して横暴な態度をとるが、王子は誰に対しても威圧的かつ横暴で無茶な事を言う。
そして、そんな王子に対して学園長は、過去のある出来事から逆らわないと決めていた。
その出来事とは、前任の学園長が殺されたことだ。
王子は前の学園長に「あの生徒、顔が気に入らないから殺せ」と言ったのだ。その生徒は学園1の実力者で学園長は手塩をかけて育てた大事な生徒だった。学園長は自分の命よりもその生徒の命を優先し、生徒を逃がした後に「無理です」と言ったのだ。
その後、学園長は拷問にあった後に殺され、広場にはりつけにされたのだ。そして、逃がされた生徒は、王子が王国の全兵士を使い見つけることで殺されたのだ。
そんな無茶苦茶なことをしている我がまま王子を王と王妃は叱らなかった。
可愛い可愛い1人息子だからなのか、王達はとてもかわいがる。欲しいと言ったものは必ずあげ、あいつ気に入らないと言えば王は兵を使い殺す。そのくらい可愛がっていた。
「無能が勝ったことは王子様にも報告している。王子様が何か命令してくださらない限り私は何もできない」
学園長がそう言ったため教師たちは何も言えなくなる。皆がどうすればいいのか分からないような顔をしてる中、1人だけ笑っている教師がいた。
カイ達は昨日と同様に医務室に集まり報告会をしていた。
「ってことがあったんだ。一応白いローブを着た女がいたら味方ってことだけ覚えておいてくれ」
アルドレッドが代表して白ローブのことを説明する。
「それでミカには口止め料にこれだって」
「これって、仮面?」
アルドレッドの話しがひと段落したため、カイは渡された仮面の
「いや、これ
「へぇ~」
ミカは興味深そうにその仮面を見た後、実際に着けて話し始めた。
「どうなってる?」
声が変わると分かっていても、ミカがカイの声で話し始めたため皆が驚いた。
「本当に変わってるわね」
「すごいですね。こんな
「でも、視界がふさがれるから魔力感知出来ないと何もできないんじゃないか?」
セレスとラクダレスはそれぞれ称賛して、アルドレッドは疑問を口にする。
「これつけ心地最高です!つけた瞬間に透明になって、つけて無い時と視界は全く変わらないですし、すごいです!」
ミカの言ったことに3人が驚く。
「マジか!?それ顔を隠して任務する時とか便利すぎるだろ!?」
「そうね、隠密に持ってこいの
「カイ君もつけてみたらどうですか?」
ラクダレスの言葉を聞き、3人はカイの方を見るとすでにカイも仮面をつけていた。
「これとても良いですね。少ない魔力で思った声を出せるみたいです?ミカの声になってますよね?」
今度はカイがミカの声で話し出す。
「なってるなってる!しかも、外そうと思わない限り落ちないね!」
「うん。これしながらでも戦えそう」
「今度、これつけて模擬戦しようよ!!」
「でもその時に壊しちゃったら代えが無いよ?」
目の前で会話しているのがカイとミカのはずなのに、お互いが逆の声でいつも通りの口調で話し始めるため3人は混乱し始めた。
「ま、待て。どっちが話してるのかわけ分からなくなる...」
「そ、そうね。取った方が良いわ」
それを聞き2人は仮面を外し、ミカは仮面をカイに渡した。
「カイは袋あるからかさばらないけど、私はかさばっちゃうからカイが持っててもらって良い?」
「分かった。必要になったら渡すから言ってね?」
カイはそのまま袋に仮面を仕舞った。
「まぁ、お前ら二人は常にって言っていいくらい一緒にいるもんな」
「それはアルさん達も一緒じゃないですか!」
アルドレッドの言葉にミカが言い返し、皆が談笑し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます