第75話
学内対抗戦の内容が発表されたため、カイはミカと一緒に確認していた。
学内対抗戦は去年までは各学年ごとにやっていたが、今年からは全学年でやることになった。
そして強者同士がつぶし合わない様に予選と本選に分けられた。
予選は4つのグループに分けられ、そのグループで行われるトーナメント戦の上位8人が本選に上がることが出来る。
本選は集まった32人で再度トーナメント戦を組み、後に控える学園対抗戦に出る上位10人を決めるだけとなった。
これを見たときカイはこの学内対抗戦を初戦で敗退する予定だったが、アルドレッド、セレス、ラクダレスの3人に言われたことと頼み事を聞き、絶対に帝国との対抗戦まで行くと決めていた。
その内容が、ラクダレスからは「帝国との対抗戦でローブ男達が何かしてくるなら出たほうがいいです。もし、帝国で行われることになればFクラスのカイ君は絶対に帝国に行くことは出来ないですから」と言われていた。
そして、アルドレッドとセレスからは「対抗戦で帝国の生徒と戦ってほしい」と頼まれたのだ。
ローブ男達のことがあるが、生徒達がカイと戦うことで同年代でここまでの強者がいるのだと知ってほしいとの思いからだった。
カイは2人からの頼みを聞き思った。
(王国よりも魔法技術が進んでる帝国の生徒はどのくらい強いんだろ?戦いたい)
その後のカイの頭は帝国の生徒と戦うことしかなかった。
そして、発表から数日が経ち、学内対抗戦の日となった。
カイとミカは先程発表されたグループ分けを見ていた。
「どこだった?」
「私はCグループだったよ。カイは?」
「俺はAグループだった。絶対に勝って本選に行く!」
「私も勝って本選行くよ!」
2人ともやる気満々だった。
「予選は4回、本選は2回勝てば、ひとまず学園対抗戦に行けるから2人とも頑張るのよ」
「まぁ2人なら確実に学園対抗戦に出れるから落ち着いて戦えよ」
「そうですね、私の情報でもカイ君とミカさんが手こずりそうな方は居ないですね」
3人がカイ達に激励の言葉をかけに近づいてきた。
「有名な生徒達はどんな手口で戦うか分かってるから大丈夫ですよ!!」
「ダメだよミカ。油断してると痛い目見るって」
そんなやり取りをしていると、生徒達は集まるように放送された。
「じゃあ、行ってきます。絶対に勝ってきます」
「私も上級生にどこまで敵うか、全力で戦ってきます!」
カイとミカは3人と分かれて、集まるように言われた闘技場の観客席に向かった。
「これより、学内対抗戦を行う。今年は去年と違う形だが、全員死力を尽くして戦ってくれ」
クラスごとに座ることになっていて、ミカと別れたカイは出入口に一番近いところに座っていた。
学園長が真ん中の舞台で軽く話した後、副学園長がルールの説明を始めた。
・武器は自前で準備
・
・気絶、降参、場外が敗北条件
ルールはとてもシンプルな物だった。
「では、これからトーナメント表を張り付ける。初戦の生徒はすぐに控室に来るように」
そう言って、副学園長は舞台から下りて行った。
それを見て皆が動き出す。カイもトーナメント表を見るために移動する。この時出入口に一番近かったことに幸運だったと思っていた。
そして、自分の名前を探そうとして見たが、探す前に名前を見つけることが出来た。
一回戦
1年Fクラス カイ VS 3年Aクラス プレア=ビューン
と書いてあった。
控室に着いたカイは椅子に座り精神統一していたが、すぐに邪魔が入った。
「君がカイとかいう屑だねぇ!!」
知らない男がノックも無しに、扉を乱暴に開けて入って来た。
「君は舎弟の邪魔をしたんだ!覚悟しておくと良いよ!!教えに来てあげるなんて僕ちんは何て優しいんだろかぁ!」
「僕ちんのことを無視だなんて!?この屑は死んだ方が良いねぇ!殺してあげるよぉ!!わざわざ僕ちんが殺してあげるなんて...なんて優しいんだろうねぇぇえええ!!!」
そう叫びながら男は出て行った。
先程のカイは動かなかったのではなく、最初の発言で唖然としたためだった。そして途中からはあまりにも頭のおかしい行動をとる男が幻なんじゃないかと思い、顔を左右に大きく振った。
(つ、疲れてんのかなぁ~?あんなにイカレタ人なんていないよね?うん)
現実逃避をしていると、教師に順番だと言われたため、カイは闘技場の舞台と控室をつなぐ通路で待機していた。
「カイだな?身体検査をする」
と先程の教師が言ったため、カイはおとなしく従う。
「
「持ってないです」
「武器はどうした」
「拳です」
教師はこいつは馬鹿かと呆れた顔をしながら待機するように言った。
「初戦を始める!!」
審判の教師がそう言った瞬間に生徒達が大きな歓声を上げる。
「3年Aクラス プレア=ビューン!!」
名前が呼ばれた瞬間、先程とは比較にならない歓声が上がる。入って来たビューンは笑顔を浮かべ手を振りながら舞台に上がって行く。そんな中、観客席から「プレアーー!!」や「ビューン様ぁ!!優勝してぇ!」と声を上げる者もいた。
「続いて、1年Fクラス カイ」
教師もテンションが低く、闘技場内に聞こえるか聞こえないかくらいの声でカイの紹介をする。呼ばれたカイは舞台に向けて歩き始める。先程のビューンと同じくらい観客から声が上がるが、内容は真逆だった。「無能が帰れ!!」「学園の恥だ!出てけ!!」とブーイング上がる。そんな中カイが観客席の方に目をやると、ミカと目があってしまった。
(...悲しいかもしれないけどこれが王国の普通なんだよ、ミカ)
ミカは目にいっぱいの涙を溜め、この前カイの前で泣いた時よりも悲しそうな顔をしていた。
(でも、俺はこんなのには負けない。絶対に)
カイは絶対に屈しないと気持ちを込めながら右の拳を胸の前に持っていく。
そして誰にも聞こえないであろうこの場で一言呟く「勝つ」と。
舞台に上がったカイを待っていたのはいつまでも止まないブーイングの嵐だった。
「屑ぅうう?降参するなよぉお??」
そう言った男は先程控室に来た頭のおかしい男だった。
「あれれぇ?無能の屑は武器を使うことも出来ないのかなぁ?」
剣を腰に下げていないカイに向かってバカにしながら言う。無駄に大きな声で言ったため観客席まで聞こえ皆が笑う。
その笑い声をBGMにビューンは無駄に装飾された剣を抜く。
「まぁ、僕ちんが殺してあげるんだからぁ?喜びなよぉ!」
相手が剣を構えたのを確認したカイは、左足を引き右手を前に出す。ビューンはまだ何か言おうとしていたが、審判が話し始めたため黙った。
「それでは試合、始め!!」
「じゃあ、屑殺してあげるねぇ!!」
わざわざ喋ってから、ビューンは魔力を纏い走って来た。その纏いはカイとミカからしたらとてもお粗末なもので、纏ってい無いに等しいと言って良い物だった。
ビューンが持っている剣だが、これは切った時は特に何も起きないが刺した時は剣先で小爆発が起きる
そんな剣をビューンはカイの腹を刺そうと突進する。
カイに剣が刺さったと思って教師を含めた観客席にいる者が歓声を上げる。
だが、ビューンはカイを素通りする。皆がどうしたんだ?と思った瞬間にビューンが倒れた。
ただカイは突進してきたビューンを避けて隙だらけの顎を思い切り殴っただけだった。
そのままでも、試合が終了だったが、カイはわざわざビューンを場外に運んであげた。
カイが審判の方を見ることで審判はようやく勝敗を告げる。
「しょ、勝者カイ...」
審判は全く声を上げていなかったが、闘技場が静かだったため全員に聞こえた。
1人が「あり得ない!!」と言い始めると周りの人も何か言っていたが、カイは無視して控室に戻った。
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