第73話
全てのクラスのダンジョン探索が終わり4日が経った。
ミカもカイと同じ様に1人で5階層まで行ってきたのだが、帰って来たミカは一言「もう4階層には行きたくない」っと言っていた。
そして、そこから数日たって、カイとミカ、アルドレッド、セレスそして、ラクダレスが学園の演習場に来ていた。ミカとの約束を果たすために。
「急にどうしたんですか?カイ君」
ラクダレスはカイから急遽呼ばれただけで何が起こるか知らなかった。
「ミカとダンジョン探索が終わったら本気で模擬戦をするって約束したんです。なので先生にも戦力を把握してもらおうと思って」
それを聞き、今から何が起きるか分かったラクダレスはそれ以上聞かなかった。
準備運動が終わった2人は演習場の真ん中に向かい合って立つ。
「じゃあ、2人とも準備は良いな?人払いもすんでるから、この中だったら全力戦って問題ない。さすがにヤバイと思ったら俺とセレスが入るからな」
2人とも頷くと、カイは今回は何も持たず半身を前に出す形で、ミカは槍を構える。
「よし、始め!!」
アルドレッドが合図すると、ミカは居なくなり、カイは腕をクロスさせて防御の体勢に入る。
瞬きをした瞬間、ミカの持っている槍をカイが止めていた。
カイから出された課題のおかげでミカの魔力操作はとても速くなった。そのため前よりも早く雷を足に纏わせることが出来るようになっていた。
カイと特訓をしていなかったら、カイは開始と同時にミカを地面に固定して捕まえられていたが、それが出来ないと分かっていたから最初から防御態勢に入っていた。
「魔力感知??」
「全力だからね!!」
ミカはカイの近くにいるのは危険だと感じたため離れようとするが、離れられなかった。
遠くでよく見えていなかったラクダレスはカイとミカが固まったことに不思議に思ったが、目を凝らして見ることで何が起こっているか分かった。だが、見たことが信じられないと思っていた。
カイの腕とセレスの槍がくっついていたのだ。氷で
「セ、セレスさん!?あの氷は!?」
「それはあとでカイが説明してくれるわ。今は見ることに集中した方が良いわ」
そう言われ、ラクダレスは何が起きてるか分からないと思いながら模擬戦を見続けた。
「返して!!」
「そう簡単に返すわけないじゃん!」
ミカは槍を取り返すために殴りと蹴りを放るが、カイは片手でそれを受け止める。
ミカが2発入れたところで接近戦では敵わないと分かったミカは槍を離して下がる。
「槍は良いの?」
「肉弾戦じゃカイに勝てないから良いの!」
ミカは雷を飛ばすが、カイは目の前に壁を作り防ぐ。そして、ラウラと戦った時と同じ様に壁の後ろで手に氷を纏わせる。
このまま飛び出して驚いた所を攻撃しようとしたが、ミカが足に魔力を集中させ始めたため、カイは移動先は横だと予想し横に壁を作る。
だが、実際に攻撃が来たのは後ろだった。ギリギリ反応出来たカイは咄嗟に腕の氷で防いだ。
「やっぱり移動先は分からないんだ」
(まだ一直線にしか動けないと思ったけど...。フェイクだったんだ。やばいかも)
実は、カイの魔力感知では雷を纏わせた状態のミカが速すぎて追えなくなっていた。そのため、カイはミカの移動先を予想するしかなかった。
また、足に雷を纏わせることの弱点が一直線にしか走れないことだったが、ミカはそれを長期休み中に克服していた。
一直線にしか走れないと思い込んでいたこと、最初の一撃でそれは克服は出来ていないと思ったカイの思い込みが、油断がこの状況になっていた。
そして、ミカは前より速くなったのに対して、カイは先程手で受けた攻撃のせいで痺れ動きが遅くなっていた。
そのためカイは焦り始めていた。
「このまま押し切るから!」
またミカが高速で動き始めた。魔力を全て足に使うつもりのため、ミカは物理攻撃しかしなかった。。
カイはすぐさま防御体勢に入るが、何発は防御できずにくらいながらものけぞらない様に我慢しながら考える。
(一発入れたら下がってる。捕まりたくないのが目に見える。とにかく逃げる場所を無くさないと)
カイはミカの行く手を阻むため、片手を炎にし炎の手をデタラメに伸ばす。
「きゃ!」
急に伸びて来た炎に当たりそうになり驚いたミカが小さな悲鳴を上げる。
カイはその後も、自分が不自由なく動けるくらいまで炎を伸ばし続けため演習場が炎で包まれた。
これを見ていた外野の3人はひどく驚いた。
(暑い...。これで動きづらくしたつもりかもだけど、まだ全然いける!)
ミカはそう思い足に力を入れるが、足が動かない。ミカが急いで下を見ると、地面がほとんど凍っていた。
ミカが止まった瞬間にカイが地面を凍らせたのだ。これに気づかなかったミカは靴が凍り付き、簡単に地面とくっついてしまった。
ただ、この氷は薄く出来ていて周りが炎だらけのため、ミカは地面から剥がすことが出来た。
カイに接近しようと前を向いた瞬間にミカは驚いた。
目の前から氷が来ていたのだ。咄嗟の判断ミカはそれを横に避けたが、これは間違いだった。
その氷の手はミカの横で急に止まり、ミカのいる方を向き捕まえた。
「えっ!?」
何が起きたか分からないミカは驚愕の声を上げ、カイはそんなミカにゆっくり近づいた。
「避けたと思って油断したでしょ?」
「...なにしたの?」
ミカは何が起こったか分からなかったため尋ねるが、実際はカイが話し始めた瞬間に右手に魔力を集めるためだった。
まだ何かすると思ったカイは警戒しながら話し出す。
「このこ・・・」
話し始めた瞬間にミカは右手に魔力を集め、魔力を纏うのと雷を纏うのを同時にする。後ろで自分を捕まえている氷を無理やり砕こうとしたのだ。
そして、ミカは後ろにある氷を殴るが氷は少ししか砕けなかった。
「聞いてきたのに」
カイは不機嫌そうなフリをして言いながらも、ちゃっかり氷に触れていた。
ミカの魔力が動いた時にカイは氷に触れ硬度を上げた。
少し砕けたのはカイが硬度を上げるよりも早くミカが砕き始めたからだった。だが、途中で硬くなってしまったため全てを砕くことが出来なかったのだ。
「...アルさん降参します」
「ミカ降参、勝者カイ」
カイとミカの本気の戦いはカイが勝った。
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