第68話


「元冒険者ってどうゆうことですか!?」


 カイとミカの声が重なる。


「ダンジョンに入るときにアルさん達は冒険者カードを持ってたからこそダンジョンに入れていました!!元なんてありえないです!」


 カイの言ったことにミカが頷く。


「実は、アルドレッドさん達のデータを改ざんした後で聖国に戻り、その足で帝国に行ったんです」

「何で帝国に行ったんですか?」


 カイが問いかける。


「私はローブ男達が帝国の者の可能性があるのではないかと考えていました」


 カイとラクダレス以外が驚く。


「私は王国から帝国に移住した人が復讐しようとしてると思ったんです」

「...それだから行ったのね」

「はい」

「調べた結果どうだったのかしら?」

「時間があまりなかったので詳しく分かりませんでしたが、私が会った元王国国民は「あんな国2度と関わりたくない」「行きたくねぇよ」「帝国にいるのが一番だ」と同じような事を言っていました」


 それを聞いてアルドレッドとセレスは安心と嬉しさが混じったような顔になった。


「まぁ、観光目的だったのであまり聞いてないのも事実ですが」


 ラクダレスのポロっと吐いた言葉に皆が(こいつなんて言った?)みたいな顔になる。


「良いじゃないですか。前から帝国を観光してみたいと思っていたんです。セレスさんとアルドレッドさんを見たらより観光したいと思いが強くなったので、今回の長期休みを使って行ってみたんですよ」


 ラクダレスが本当の目的を言っている中、4人は口を開けたまま固まった。

 少しそのままでいたが、いち早く元に戻ったカイがラクダレスに聞きたかったことを聞く。


「どうしてアルさん達が元冒険者なんですか??」


 カイが喋ったことを皮切りに皆が元に戻る。


「実は冒険者ギルドに寄ったんですよ。冒険者ギルドは多くの情報が集まりますからね。王国のことも情報としてあるのか気になって寄りました。そこでセレスさん達『守り人の牙』のことを聞いたんですよ」

「そりゃバレるな」


 今まで黙っていたアルドレッドが話し出す。


「俺らは5年前に冒険者を止めたんだ」

「アルさん!?」


 カイとミカは言われたことが信じられないという顔でアルドレッドを見る。


「セレス、魔力探知で周り調べてくれ」

「分かったわ。カイも一緒に調べて貰って良いかしら?」

「わ、分かりました」


 アルドレッドに言われ魔力探知を始めたセレスに続いてカイも魔探知を使う。

 探知してみると、初日で放課後と言うこともあり500m圏内には自分達以外誰もいなかった。


「誰もいないわ」

「こっちもです」

「よし、お前らこれこそ本当に言わないでくれ。知られたら帝国出身という以上にマズイ」


 アルドレッドに言われ、カイとミカ、ラクダレスは頷く。


「俺たちは今、帝国の近衛騎士団に所属してる」


 アルドレッド達の正体にカイとミカは驚く。


「冒険者をしててAランクになってから数年した時、国に「兵士にならないか?」と言われたんだ。今まで帝国からの依頼も受けていたから俺たちのことは知っていたんだろう。その誘いに乗り俺たちは兵士になった。それが5年前だ」

「兵士になってから1年で私たちは騎士になって、その1年後に近衛騎士団に入ったわ」

「そんなに早くなれる物なんですか?」

「普通だったらなれないわ。私たちは依頼で皇族の方々と面識があったのと、私が帝国の学園の卒業生で有名だったからね」


 アルドレッドとセレスが言うことにカイとミカは驚き続ける。


「皇女の護衛が担当だったけど、王国が怪しいってことで私たちが来たのよ」

「まぁ、セレスの魔法の腕は近衛騎士達でもトップクラスだからな。近衛騎士の中では新人。それなのに強い。ついでに元冒険者だから、記録を偽造すれば冒険者として潜入出来る。こんなに適任な人は他にいないからな。俺はセレスとコンビだから一緒にって感じだな」

「何言ってるのよ。アルと魔法無しで戦えるのは5人もいないじゃない。十分強いわよ」


 2人のことを聞き、カイとセレスは空いた口がふさがらなかった。


「聖国でも帝国の近衛騎士は凄いと聞きます。そんな中にお2人は居るんですね」

「あ、俺たちの情報売るなよ?」

「分かっています。帝国の近衛騎士にはかないませんから」

「本当に頼むぞ?」


 アルドレッドの注意にラクダレスは少しふざけるようにして答える。それに対してアルドレッドは(こいつはこんなやつだった)と思い、笑いながら頼む。




 アルドレッドとセレスのことが分かり、話しは王国と聖国の対抗戦のことになった。


「この対抗戦、絶対に何か起きますよ」

「私たちが学園に来る時点では決まって無かったから、この長期休みで決まったことだと思うわ」

「最低限の情報収集はしてたつもりですが、こんなことが起きてるなんて今朝まで知りませんでした」

「つまり、長期休暇の期間に秘密裏に話しが決まったってことか」

「でも、隠す必要ってあったんですか?」

「隠したんじゃなくて知られるよりも前に決まったとか?」

「その可能性はあるかもしれないわね」


 セレスの返事に皆の視線が集まる。セレスがアルドレッドの方を見るとアルドレッドは小さく首を横に振る。カイはそれを見逃さなかった。


「帝国の目的は他国と友好的になることよ。王国とは争いを起こしてるから和平ね。そのための足掛かりにするつもりなのかもしれないわ」

「その可能性はありますね。帝国が他国と友好的にしたいのは火を見るよりも明らかですからね」

「そう思ってくれてるのは嬉しいわ」

「そうだな、これ以上に嬉しいことは無い」


 ラクダレスの言ったことにアルドレッドとセレスがとても嬉しそうになる。


「でも、王国の目的は何だ?」

「帝国の人間としては生徒達に危害を加えるとか、帝国に対して何か危害になることをしようとしてると思っちゃうわ」

「あまり情報が無い状態で決めつけるのは良くないですが、私もそう思います」

「今までのことを考えるとそう思うのは仕方ないと思いますが、情報が少なすぎです。今は情報を集めるべきです」

「そうね。今は情報を集めましょう。私とアルでこのことを調べるわ。ラクダレスとカイとミカはローブ男達のお願いするわ」


 カイとアルドレッド、ラクダレスはすぐさま頷く、ミカが遅れて頷く。


「じゃあ、今日は解散ですね。しばらくは情報収集に専念しましょう」

「ごめんミカ、この後少し話したい事あるんだけど...」

「分かった。どこで話す?」

「ついて来て。じゃあ、俺とミカは先に帰ります」


 そう言って、カイとミカは医務室から出て行った。


 アルドレッドとセレスもカイに続いて退室しようとするが、ラクダレスに止められた。


「さっきは隠してたことを暴いてすみませんでした」


 ラクダレスがアルドレッドとセレスに深く頭を下げた。


「...言っちまった物は仕方ねぇよ。それに、カイとミカなら問題ないだろ」

「でも、なんで言ったのかは気になるわ」

「あの2人は知っていた方が良いと思ったんです。セレスさん、カイ君はオークファイターに手こずるほどの技量ですか?」

「いえ、カイだったら簡単に倒せると思うわ」

「やっぱりですか...。カイ君はたぶんローブ男達と戦ったことがあります」


 アルドレッド達は驚いた顔になる。


「冒険者体験の試験でカイ君がアルドレッドさんに勝ったと聞きました。そのカイ君ですら捕まえられなかった相手です。...ローブ男達は私たちが予想してるよりもヤバイかもしれません」


 3人はこれからより警戒した方が良いと判断した。

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