第60話
カイがいろいろ考えているうちに、日は傾き始め夕方になっていた。
「カイ、ご飯がそろそろ出来る。考え事は終わった?」
考え事がひと段落したところでラウラがカイに話しかける。
「うん。これからすることも考え終わった」
「ん。さっきよりもいい顔してる。ご飯食べよう」
カイはラウラについて行き、そのままラウラと一緒に晩御飯を食べ始める。
晩御飯を食べ始めてからの会話は学園でどのようなことがあったのかをカイがラウラに身振り手振りで話す。
学園に入学する前に家から追放されたこと。学園の入学試験で現役の冒険者と戦ったこと。授業でダンジョンを探索したこと。その時、一緒に探索したミカと一緒に行動していること。嫌なことも嬉しかったことも全て話した。
そんなカイに対してラウラは相槌をしながら聞く。
2人とも終始笑顔で話ながら食事をとった。
食事が終わってもカイの話しは終わらなかったため、いったん中止しラウラが2人分のお茶を入れ戻って来て席に着いたところで話しが再開される。
「~でさ、この頃のミカは前の倍ぐらいの速度で魔力操作ができ始めてるから魔法の発動も速くてさ!適性が雷だからもしかしたら同時に魔法を発動させたらもう守ること出来ないかもしれない!」
「いつか負けそう?」
最後の方は特訓につき合っているミカの話しばかりになっており、ミカの話しになるとカイは笑顔なのはもちろんのこと目がキラキラしていた。
今までの話しには今の王国の魔法事情もあったため、王国の人間であるミカをカイがそこまで評価しているためラウラも興味を持っていた。
「ま、負けないよ!!」
「弟子はいつか師匠に勝つもの」
「それだったらラウラも俺に負けることになるよ!」
「私は例外。誰にも負けるつもりはない」
「絶対にいつか勝つから!」
先程までのキラキラした目から変わり、カイの目はやる気に燃えている目になっていた。
「これからどうするの?」
学園での話しが一通り終わったため、ラウラはカがこれからどうするか聞いた。もしもカイが協力してほしいと言うのならラウラは協力するつもりだった。
「大まかに2つ。レイ兄上とミカに帝国と戦争が起きたときにどうするかを聞きたい。もう1つはあいつらの情報取集する。まだ何かしようとしてるのは確実だから、何かされる前に捕まえたい」
「...確かに今ある情報だけだとそのローブ男達の目的が分からない。だけど、情報収集するにも手がかりが無い。どうするの?」
「そこだよね...。ほんとあいつら何も残さなかった...。何か残ってればよかったのに...」
ダンジョンと言う場所だったためもしも何か残ったとしてもダンジョンが全て飲み込んでしまう、それに先にカイが撤退したため物が残っていても回収されてしまっていた。
「その男達が言ってたことを思い出すしかない」
「うん」
あのローブ男達が言ったことはオークファイターを作ったことだけだった。
(そういえば、ウォッシュは1回も喋ってない。喋ってない??)
カイはウォッシュが一言も喋っていないことに違和感を感じた。どうして引っかかっているのか分からないが、その部分が気になっていた。
分からないからこそラウラに話しかけた。
「そういえば、一緒にいたウォッシュってやつは一言も喋って無かった」
「ん?洗脳使いが?」
ラウラのその言葉によりカイは何が引っかかってるのか分かったためラウラに詰め寄る。
「そう!!洗脳使いが!!」
「...どうしたの、急に」
「洗脳の魔法を使ってるのにあいつは1回も喋ってない!おかしくない?」
「何で?」
「さっき言ったじゃん。入学試験で他の生徒は皆魔法を詠唱してたって!ミカが言ってたけど、王国だと魔法は詠唱する物だって教わる。無詠唱は威力が低くなるから使わないって。だから王国の人間なら戦闘で魔法を無詠唱で使うとは思えない。それなら他国の可能性もあるかもしれない」
「カイの言いたいことは分かった。でも他国だとしたら可能性が一番高いのは...」
「...帝国」
ここに来て帝国に疑いの芽が出て来た。
「でも、カイみたいに無詠唱はイメージ次第って教わった可能性もある」
「確かに0じゃないけど、可能性としてはかなり低いと思う」
「...やっぱり情報が足らない」
「だよね...」
無詠唱=帝国と考えるのは確実じゃないため、結局は手詰まりになった。
とカイは思ったがそうでは無かった。
「だから、私が帝国に行って調べる」
ラウラの言ったことに数秒理解できなかった。
「えええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
カイは今日一番の大声を上げた。
「うるさい」
「いや驚くって!!帝国に行くの!?」
「たぶんまだ知り合いがいるからいろいろ知れる」
「ええええぇぇぇ ングッ」
これまたラウラの発言により大声を上げたカイだったが、今度はラウラが口を押えたことにより短かった。
「落ち着いて」
ラウラにそう言われたため、カイは首を縦に振る。カイが反応したためラウラは口から手を離す。
「ラ、ラウラの知り合いに生きてる人がいるの!?」
「いる。その人は魔法で成長止めてるから」
「その人も!?」
ラウラが魔法により成長を止めていると前に言っていたが、他にも成長を止めている人がいるとは思っていなかったためカイは驚いた。
「そもそも、私はその人に魔法をかけてもらったから成長を止められてた」
「ま、待って。前に親友に魔法かけてもらったって...」
「その親友が帝国にいる。氷の魔力を渡してくれた人と、成長を止める魔法をかけてくれた人。この2人が私の親友」
ラウラの爆弾発言によりカイは驚いたが、3回目のこともあり、叫ぶことは無かった。
「その人は、光と無属性の適性魔法を持った珍しい人」
「2属性...」
「その人の無属性魔法のおかげで私は成長を止められた。それにたぶん...」
「たぶん...?」
「何でもない」
ラウラが何か言おうとしたが、話さなかった。言わなかったということは言わなくても良いことだと察したカイは深く聞かなかった。
「とにかく、カイが学園に戻ったら私は帝国に行く。次の長期休みには戻ってくる」
「分かった」
その後はたわいもない話しをして過ごし、夜も遅くなったため寝ることになった。
(明日から街に行ってみて、レイ兄上がいたら話そう。早めに話せると良いな...)
明日やることを決めてからカイは眠りについた。
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