第59話


 模擬戦後の反省会が終わり、今度は落ち着いてから考え直す。


(王国は人工的に作ったモンスターを戦争に使うのはほぼ確実。で、その戦争の相手はおそらく帝国。アルさんとセレスさんは確実にその戦争に参加する。聞いた限りだと帝国の方が優れてるけど、数で押されたらどうなるか分からない)


 今度は焦らない様に1つ1つ冷静にゆっくり思い出しながら判断していく。


(そもそも本当に王国がモンスターを作る研究をしてるのかな?可能性があるだけでどこかの組織が研究してる?)


 思い出していく中で国がモンスターを作る研究をしてるかもしれないと決めつけていたが、どこかの組織が作り出したのかもしれないという考えがすっかり向け落ちていた。


(どこかの組織がモンスターを作る研究をしてるんだったら何のため?)


 どこかの組織が研究していると考えたときに何が目的かを考える。


(学園の関係者しか入れない時にダンジョンにいるってことは目的は学園の生徒。第一学園を運営してるのは王国だから、王国に対しての宣戦布告?でも、それにしてはインパクトが弱い。確実に被害を出すためにFクラスを狙った?わざとFクラスを狙ったとしたら、学園の予定が確実にばれてる。ってことは学園の中にあの科学者のスパイがいるのはほぼ確実。ならこれからもあの科学者達が妨害してくる。つまりまた会うことは必須...。なら次にあったら絶対に捕まえる!!)


 王国が人工的にモンスターを作っている可能性を捨て、どこかの組織が研究していると考える。カイは落ち着いていたことにより今までよりも深く考えることが出来ていた。


(でも結局は情報が少なすぎる...。何が目的なのか分からないと何とも言えないし...。それに王国が研究してても、どこかの組織が研究してても、どちらにしてもあの時ウォッシュを手負いにしたから目はつけられてる。結局は王国が研究しててもあいつらには対峙する。なら、今はあいつらについての情報収集をする。あとは王国が研究をしてて戦争が起きるならどうするか...)


 カイが昨夜から考えたことを考える。カイは落ち着いている今ならば自分が満足する答えが出ると確信していた。


(おそらく王国は帝国との小競り合いで負け越してるから、次の戦争で確実にモンスターを大量に投入する。そうなればいくら帝国でも数に押されて危なくなるかもしれない。それなら確実にアルさんとセレスさんはその戦争に参加する。その時俺はどうしたい...?)


 先程まではアルドレッドとセレスが戦争に参加することに不安しか感じていなかったが、今は自分がどうしたいかを考えることが出来ていた。


(今まではラウラとレイ兄上だけには傷ついてほしくなかったけど、今はミカとアルさん、セレスさんに先生にも傷ついてほしくない。レイ兄上は昔から争いごとを嫌ってたけど、戦争が起きたらそんなこと言ってられない...。それはアルさん達も一緒...。兄上とアルさん達を天秤にかけて答えが出ないなら国単位で考えればいい?)


(王国はどうなっても良いと思ってる。でも、帝国に対してはまだどう思ってるか分からない。なら、帝国の、アルさんとセレスさんの味方をすればいい?)


 カイは悩みに悩んでようやく答えが出始めた。まだまだ悩んでいるがひとまず答えが出たことに肩の荷が少し落ちたためにその場で大きく息を吐く。そして、1回深呼吸をして再度考え直す。


(帝国の味方をするとしたら、レイ兄上はどうすれば...。それにミカがどうしたいかも聞かないといけない。...結局今すぐには決められない...。とにかく今は戦争が起きたらアルさんとセレスさんについて行く。もしもそうなったらレイ兄上とミカもついて来てくれたら嬉しいな...。...よし!!まずは2人と話し合おう)


 力ずくで2人を連れて行くことは出来ない。だから話し合う必要がある。自分の考えを話し、そのうえで2人がどうしたいのか話を聞く。

 自分のやりたいことが分かり再度大きく息を吐く。


「(でも、帝国に味方をするなら帝国がどうゆうところなのか知って起きたい。実際に自分の目で見たい)...帝国に行ってみたいな」


 不意に吐いた言葉だった。その言葉は誰にも聞かれることは無い。

 だが、この時点で誰も知らない。カイが帝国に状況になることを。

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