53話
あの話し合いから1週間後、カイ達は再度話し合いをするために医務室に集まっていた。
「あれ先生?あの子達いないんですか?」
話し合いが始まる前にミカが医務室のベッドを見ると誰もいなかった。
「片方の子は意識が戻ったので寮に戻りました。もう片方の洗脳の魔法を受けてた子は4日くらい前に家族の関係者の方が来て家で療養するそうです」
ガルはあれからまだ意識が戻らず、医務室でずっと眠っていた。毎日医師がガルの魔力器官と魔力量を見ているが、一向に元に戻る様子が無かった。
そんな中医務室にガルの家に仕える執事が訪れガルを家まで連れて行った。
「そうですか...。よくなると良いですね...」
その後の話し合いで、医師の調べであのダンジョンは安全確認をしたうえでFクラスはダンジョン探索したことになったこと、カイがいた班以外にはしっかりとそのことが話されていたことが分かった。
問題になったダンジョン探索から1か月が経った。1ヵ月間は目立った問題も起こらず、カイとミカは特訓したり、冒険者に必要な知識をつけて過ごしていた。その間クラス単位でダンジョンに入る演習がある予定だったが、前回の問題を考慮し2学期まで延期となり、冒険者体験の授業でもダンジョンに入る予定だったが、安全確認のため2学期まで延期となった。
そして今日は冒険者体験の試験日だった。
「今日は試験をするぞ」
アルドレッドが生徒達に向けて話しかける。
生徒達はその一言に緊張したような顔になる。
「試験内容は2回もの授業と同じで俺との模擬戦だ」
生徒達はより険しい顔になる。
「安心しろ。勝てなくても問題は無い。それに、今回の動きが悪くても2学期3学期ある」
それを聞いた生徒達は少し力が抜けたような顔になる。
今回の模擬戦は前回の模擬戦と違い、アルドレッドとセレスが生徒を選び順番に模擬戦をすることになった。
(俺は最後かな?)
もしアルドレッドとカイが戦えば、アルドレッドは体力と魔力を消耗してしまい他の生徒との模擬戦に問題が出るかもしれない。カイはそう考えたが、それは違った。
「じゃあ、カイ前に来てくれ」
アルドレッドの言葉にカイはどうして自分が一番初めか少し考えてしまうが、すぐに理由が分かった。
(全力で戦うために...)
アルドレッドの嬉しそうな、獲物を狙うような顔を見てカイはそう思った。
「カイ、出せる力でかかってこい」
「!?分かりました」
カイはアルドレッドの言おうとしてることが分かったためすぐに構える。
「それでは、模擬戦始め!!」
セレスに開始の合図を出された瞬間、2人ともお互いに向けて走り始めた。そして木剣がぶつかり合った。
「カイ!受け止めて良かったのか?」
「アルさんの攻撃を受け流せる程の技量は無いですよ!!」
カイは模擬戦が始まった瞬間に魔力を纏わせていた。『魔力を纏う』それがカイの人前で出せる全力だった。
お互いの木剣がぶつかったまま動かない。だが、よく見るとアルドレッドが力でカイを押しつぶそうとしていた。
カイはちょっとずつ押されていたが、負けじとアルドレッドに斬りかかる。
しばらく斬りあっていたがアルドレッドが後ろに跳んだ。
「容赦なく魔法を使わせてもらうぞ!!」
そう言うと勝負を決めるために、左手を地面につけた。その瞬間、地面からツタが出てきてカイに向かって行った。
しかし、ツタがどのように来るのかをカイは魔力を感知することで避ける。
「やっぱりか!!」
「同じ手でもう1回捕まりませんよ!もう負けませんよ!!」
ツタを華麗に避けてアルドレッドに斬りかかった。アルドレッドはカイの木剣を受けるために左手を地面から離した。その瞬間ツタは動かなくなった。カイの木剣をアルドレッドが受け止めた。
その後も、お互いが相手に切りかかり、それを受け止めるか受け流す。そのやり取りが続いた。
「状況が変わらないな。これならどうだ!!」
アルドレッドが至近距離にいるカイを捕まえるため、地面からツタを出した。先程まで地面に手を付けて発動していたのはカイを騙すためのフェイクだった。アルドレッドはカイはそのままツタに絡まったが・・・
「マジか!?」
「脆いツタですね!!!」
ブチブチとツタがちぎれる音が聞こえた。それはカイがツタをちぎった音だった。
カイは、アルドレッドの魔力が足に集まっていることを確認していたため魔法を発動することが予想出来ていた。そこから先程使用していた拘束する魔法だと思い隙を作るためにわざと捕まったところでツタをちぎった。案の定隙が出来たアルドレッドの懐にカイは潜り込む。カイはアルドレッドの胸元に剣を突き刺す寸前で止まった。
「俺の負けか。」
「はい、俺の勝ちです。」
「勝者、カイ!」
この模擬戦はカイの勝利で終わった。
------------------------------------------------------------------------------------------------
ここまで読んでくださりありがとうございます。
今回はカイのリベンジ対決でした。
次回はミカがアルドレッド相手に善戦する...かも...?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます