無能判定されたけど間違いだった！？～実は最強の氷炎使い～

54話

　カイとアルドレッドの模擬戦がカイの勝利で終わった。

　模擬戦後アルドレッドは小休憩をしたのち模擬戦を再開した。

　その後の模擬戦ではアルドレッドは負けることはもちろんのこと手こずることもなかった。

「よし、次で最後だな。最後はミカだな」

「はい」

　ミカが木製の槍を持ちながらアルドレッドの近くまで移動する。

「どこまで強くなったか見せてみろ」

「期待しててください」

　ミカが槍を構えるとアルドレッドも木剣を構える。

「模擬戦始め！！」

　2人が準備し終わったのを確認したセレスが開始の合図をする。

　その瞬間、前回同様にミカは足に雷を纏わせアルドレッドに急接近する。

　アルドレッドはミカが見えなくなった瞬間に横に転がるようにして移動した。

　この行動は普通の生徒にはアルドレッドはミカが見えなくなったから横に転がるようにして避けたと思っていた。確かに避けはしたが、避けるまでにはしっかりとした攻防があった。

　アルドレッドはミカが移動を始めるよりも少し前に、前から攻撃が来ても良いようにと動き始めていた。だが、ミカが移動をしてすぐに攻撃が来なかったためアルドレッドは後ろを取られたと思い横に転がるようにして避けた。

　その予想は当たっていて、アルドレッドがいたところにはミカが突きを放っていた。

（予想以上だな...これはマズイかもしれんな）

　アルドレッドはセレスと一緒にミカの特訓に付き合っていたが、前回の模擬戦以降ミカがアルドレッドの前で足に雷を纏う技術を見せることは無かった。

　アルドレッドは前回よりも速くなり、技術を磨いたことで強くなることを予想していたが、ミカはその予想をはるかに上回っていた。

（やっぱり速い。あの感じだとアルさんの予想を超えてたかな？）

　それを見ていた普通でない生徒の顔はミカの攻撃がアルドレッドの予想を超えていたことでいたずらが成功したみたいな嬉しそうな顔をしていた。

（でも、いくら初見じゃないとはいえ、その速度の後ろからの攻撃が掠るだけって...）

　避けたアルドレッドをよく見ると左腕には薄く切れた跡があった。もちろんそれはミカの槍によってできた傷だった。

　突きを放ったミカだったが、それだけで倒せないことは分かっておりすぐに横になっているアルドレッドを突こうとする。だがそれをアルドレッドは全て避け、ミカから離れたところで体勢を立て直した。

「...まさか後ろからとはな」

　アルドレッドが話しかけたときミカがいた場所から消えた。ミカを見ていた生徒は急いでアルドレッドの方を見ると、ミカの槍をアルドレッドが木剣で止めているところだった。

「相変わらず速いな！！」

「受け止める方がすごいですよ！」

　ミカはアルドレッドから離れる。

　ミカは自分とアルドレッドを比べたとき、速さだけは絶対に負けていない。だが、速さだけではいずれ魔力が切れて動けなくなってしまう。どうするかとなった時、防御のことを考えていたらより攻撃がおろそかになると考え、防御を捨て攻撃だけをすると考えた。そのため作戦は攻撃しては後ろに退くヒット＆アウェイを繰り返そうと決めていた。

　アルドレッドはミカからの攻撃を防ぐことが出来るが高速で動くミカに攻撃を当てることが出来ず、ミカは攻撃の中にフェイント入れて攻撃するが全てが防がれるか避けられていた。

「前回のアドバイス通りしっかりフェイントも入れられてるな！」

「良い先生がいますから！！」

　そう言いながら互い応戦する。

「ならこれはどうだ！！」

　アルドレッドが先程よりも力を込めて槍をはじくと魔法を撃つ準備を始める。ミカは予想よりも大きく槍がはじかれたためかすぐに攻撃しに行くことが出来なかった。

　アルドレッドはツタを多く出すあの魔法がミカの速さを確実に殺すことが出来る手段だと分かっていた。そのためすぐにでも使いたかったが、ミカの攻撃が激しかったため発動することが出来なかった。ミカもツタを出させないために間髪容れずに攻撃してきたのだとアルドレッドは考えていた。

　だがミカは全く焦っていなかった。

「同じ手で負けませんよ！！」

　ミカはそう言うとアルドレッドに向けて手を突き出す。

「前回のアドバイスで言ってましたよね！！『魔法を撃ったりして手数を増やせ』って！」

　そう言うとミカは手から雷を放つ。その雷は本来の雷と同じ速度で飛んでいったため目視は出来なかった。ミカが魔法を撃ったと思われる方向にあったツタが全て切られていた。ドカドカと音をたててツタが落ちる。見ていた生徒達は何が起きたのか分からないようだった。だが、カイとセレスは分かっていた。カイは魔力感知で、セレスは自分が教えたためどうしてこうなったか分かっていた。セレスが教えたのは、魔法を撃つ際刃状にして撃つことだった。そのため、ツタはミカが作り出した雷の刃によって切られた。

　切れたツタを足場にミカがアルドレッドに接近する。ミカが槍を振った瞬間、アルドレッドの下の地面からツタが大量に出てくる。それが見えたミカは捕まると思い一瞬動きが止まってしまう。だが、そのツタはそれ以上動かずミカを捕まえようとはしなかった。ミカはフェイントだと分かった瞬間槍で突くが、アルドレッドはそれをミカを跳び越えることで避ける。後ろに着地したアルドレッドは木剣をミカの背中に当たる寸前で止める。

「勝者、アルドレッド！」

　セレスが模擬戦の結果を言う。ミカは振り向きアルドレッドのことを見る。

「最後のツタがフェイクだとは思いませんでした」

「途中まではとても良かったぞ。ただ、最後は焦りすぎたな」

「はい」

「よし！これで今日の授業は終わりだ！長期休みに入るが、腕が鈍らない様に気をつけろよ」

　アルドレッドは全員に聞こえるように言うとセレスと共に演習場から出て行ってしまった。

「お疲れ様。最後惜しかったね」

「ありがと。あー、もう長期休みか～」

　カイに話しかけられたミカは明日からは長期休みだということに不満があるようにつぶやく。

「カイは師匠の所に行くんでしょ？」

「うん、師匠に長期休みは戻るって言ってあるからね」

　カイは長期休みは師匠の所に行くとミカに言っていた。

「カイは師匠がいていいな～。私は長期休み1人で特訓だよ？」

「でも、王都にはアルさんとセレスさんがいるじゃん」

「それでも、毎日特訓をつけてもらうことは出来ないじゃん？」

「確かにアルさん達も忙しいか...」

「あの事、長期休みを使って本格的に調べるって言ってるし」

　ミカが言っているあの事とはローブ男達のことだった。アルドレッドとセレス長期休みを使いそのことを詳しく調べようと考えていた。

「そのことは師匠に何か知ってるか聞いてみる」

「何か知ってると良いんだけど...」

　そんな話をしながらカイとミカは演習場から出て行った。

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　ここまで読んでくださりありがとうございます。

　今回で2章終了となります。

　学園長が研究所と一緒に何をしているのか...。

　楽しみにしていただけたら幸いです。

　残りの5月中の投稿ですが休みとさせていただきます。

　そのため、次の投稿は6月1日になります。

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