52話
空は暗闇に包まれ星が輝いて見える時間。その部屋には2つの人影があり、明かりは机に置かれたランプだけだった。
片方の男はそのランプの明かりで書類を呼んでいた。その書類を読む速度は以上に早く傍から見たら流し読みをしているようにしか見えなかった。その場を紙をめくる音が支配していた。
そんな男の手が止まる。
「…これは何だ?」
「…学園長…その報告は事実でございます…」
ここは学園の学園長室。話していたのは学園長と副学園長だった。
「『生徒全員が帰還。意識不明の重体が1人』これが事実だと?」
学園長は副学園長を問いただす。
「研究所からの要請で生徒を何人か渡す手筈になっていたはずだが?」
「…研究所からは失敗したと…」
学園長はとてもイライラしており、副学園長は学園長が放つ威圧感に喋りづらそうにしていた。
「…」
副学園長の言葉を聞き学園長は持っている報告書を読み進める。
そして、読み終わると放り投げるようにして報告書を置くと、机に置いてあったもう1つの報告書を手に取る。その報告書の表紙には『オークファイター作成の最終実験結果』と書いてあった。
それを見た瞬間、学園長は口元を吊り上げ嬉しそうな、他人から見たら不気味な顔になる。
さっそく学園長はその報告書を読んでいく。
「…ほぉ、これは面白い」
学園長は面白そうに読んでいく。その姿は嬉しそうに漫画を読む子供、それと変わらなかった。
「『時間を空けずにオークにオークの肉を食わせることで進化させることが可能』か…」
学園長は報告書を読みながら興味深いところを呟くようにして読んでいく。
「『しかし、この過程で進化させた個体は急な進化に耐えれず体が内部から壊れていく。活動時間は多く見積もって30分であると考えられる』…?」
学園長は疑問に思ったような顔になる。『考えられる』と言う部分に引っかかったようだった。
しかし、次のページを見たことでその顔は驚いた顔になる。
「『共食いで進化させたオークファイターは学園の生徒に倒された』だと!?」
学園長が声を上げる。副学園長はその声に体をビクッと震わす。
「今回探索をしたのはFクラスだぞ!?それなのにオークファイターを倒すなど…」
「…」
副学園長は震えて声を出せなくなっていた。
学園長はありえないと思いながらも報告書を読み進める。
「…な!?あの実験体に傷を負わせた上に博士に魔法を使わせた!?」
学園長が驚愕する。
「あり得ぬ!?学園生があれに傷をつけるなど!?」
学園長は取り乱す。
「が、学園長お、落ち着いてください…」
「落ち着けるか!!」ドンッ
副学園長が落ち着かせようとしたが、逆に学園長は机を叩きつけ苛立ちを表に出す。
それからしばらく荒れていた学園長だったが、落ち着いたのかゆっくり深呼吸し始めた。
「…所に攫わせようとした生徒達は誰だ?」
「こ、こちらの生徒です」
まだ怯えている副学園長は震える手で学園長に紙を渡す。学園長はそれを奪うようにして取る。
「…ふむ」
学園長は紙に書いてある名前を見るが、全員がオークファイターには勝てなそうだと見ていた。
「こいつは…」
名前を見て唯一知っている名前があったため副学園長に聞く。
「オークファイターを倒したのはバイト家の長男か」
「…」
学園長はそう言うと難しそうな顔をする。そんな中副学園長は言いずらそうな顔をする。
「?どうした?」
それに気づいた学園長は副学園長に問いかける。副学園長は何とか口を開き話し出す。
「きょ、教師から来たほ、報告書には、オ、オークファイターは…バイトでは…無く……カ、カイが…倒したと…か、書いてあります…」
副学園長は怯えながら、たびたび言葉が詰まりながら言う。そのことに学園長は理解が出来ないのか呆然とした顔になる。
しかし、時間が経つと先程のことを理解しようと動き出す。
「…カイ?それはあの無能のことか…?」
「は、はい」
副学園長は怯えながら答える。
声に出すことでようやく理解した学園長は怒鳴り出す。
「そんなわけあるか!!あの無能が!?ありえん!!」
「し、しかし、報告書には…」
「間違いに決まっておろう!!おそらく最後に攻撃したのが無能なだけだろう!!」
ありえないことだと決めつけ学園長はそう決めつけた。
「…ハァ。もうよい。この話はここまでだ。念のためオークファイターを倒したバイトのことを監視しておけ…」
そう言うと学園長は情報漏洩を防ぐために報告書を燃やす。だが、それは間違いだった。その報告書の最後には
『研究所から学園に要請。オークファイターの討伐並びに実験体(ウォッシュ)を傷つけることが出来る存在、カイの監視を要請する』
と書かれていた。それを読まずして学園長は報告書を燃やしてしまった。
「よ、よろしいのですか…?」
「別に良い。オークファイターの報告はあそこで終わっていた。最後の1ページには今後の実験の予定でも書いてあったのだろう。それの許可をするのは我々では無い。読んでも無駄だ」
もし先に副学園長がこの報告書を読んでいれば、カイの監視をしていたが、副学園長は研究所からの報告書は学園長の後に読むようにしていた。それがミスだった。
「王国にも今日のダンジョン探索のことを報告しておいてくれ」
「はい。わかりました」
学園長の言葉に、すっかりもとに戻った副学園長が答えた。
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ここまで読んでくださりありがとうございます。
学園長が言っていたウォッシュが実験体とは…
今後の展開を楽しみにしていただけたら幸いです。
次回はカイがあの男と再戦...!
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