51話
医師の言葉により話し合いが終わった。
「じゃあ、俺はもう戻りますね。さすがにダンジョン探索で疲れました」
「あ、私はカイについて行きます」
そう言うとカイはゆっくりとミカは慌てるようにして座っていた椅子から立ち出口に向かう。
「失礼しました」
「失礼しました。アルドレッドさん、セレスさん、また今度稽古つけて貰って良いですか?」
残っている3人は笑顔になりながら返答をする。
「怪我をしたらすぐに来てください。用事が無くてもいつでも来てください」
「おう、いつでも付き合ってやる。今度の授業もビシバシ行くぞ」
「いつでも良いわよ。魔法に関して分からないことは何でも聞いて」
カイ達はそう言われながら医務室を出た。
医務室を出たカイ達はその後たわいもない話をしながら寮に向かっていた。
「じゃあ、また明日ね」
「...」
普段、カイとミカが一緒に帰るときは男子寮と女子寮の間あたりで分かれることになっているが、カイが話しかけてもミカが返答しなかった。
「どうしたの?」
「...まだ話してないことある?顔が暗いよ...?」
ウォッシュと戦うときに魔法を使っていれば捕まえることが出来たかもしれない。そうすればあそこまで教師とガルが衰弱することが無かったかもしれない。このことにカイは後悔していた。
それに、まだ『ローブ男達と戦ったこと』とは話してなかった。あの場に医師がいたため話せなかっただが、ミカには隠し事をしてると勘違いされていた。
カイは周りに人がいないことを魔力感知で確認してから離し始めた。
「実はさっき話したローブ男達のうち片方と戦った」
「!?」
「魔法を使えば勝てたかもしれないのに使わなかったせいで逃がした...」
「...でも、カイは魔法を使うわけには...」
「あの時、医務室で寝てる生徒がいたでしょ?」
「うん、すごく顔色が悪かった」
「ミカは魔力感知が使えないから分からないと思うけど、あの生徒実は最大魔力量の7%しか残って無かったんだ...」
「7%...?」
「普通だったら全体の15%で気分が悪くなって、10%にでもなったら立ってられないはず」
「7%...じゃあ...」
「立つこともしゃべることも辛いはず。普通だったら意識を無くしてるレベルで辛いはず...。もしかしたら意識を無くすくらいかもしれない...」
「だからあんなに顔色が悪かったんだ...」
「それなのにあいつは魔法を撃ち続けた...」
「え!?」
「さっきの話で洗脳されてたって言ったでしょ?」
「うん」
「それは体調とかそんなの関係なしに命令を遂行させようとしてた」
「だから限界を超えて魔法撃ったせいで魔力が無くなった...」
「そう。...俺がもっと早くローブ男達を倒してればバイトはあそこまで消耗することは無かった...。先生もバイトを止めるために無理して魔法を使ってたせいで魔力器官をかなり傷つけた。もっと早く俺がバイトを止めてれば先生があそこまで無理することもなかった...」
こう言ったカイの顔はかなり暗い顔になっていたためミカは心配そうに見る。
「実は魔法を使えることを知られるのは危ないかもしれない。でも、仲間とかクラスメートが危なくなったら魔法を使うって決めてる。それなのに今回は危なくなっても使わなかった...」
「カイ...」
「モンスターから守ることは出来るけど、聖国から追われるようになるかもしれない。聖国から追われることは無いけど、モンスターに殺されるかもしれない。どっちが良かったんだろう...」
カイはダンジョンを出てからずっと悩んでいた。
そこから2人は黙り込んでしまった。
「どっちがいいなんて決められないよ...」
沈黙を破ったのはミカだった。
「モンスターにやられそうになるのも、国に追われるのもどっちも嫌だよ。」
ミカはどちらも嫌だと言った。カイもそれは分かっている。だが、どうすれば分からない。
「どうすれば...」
「魔法を使わずにモンスターから守れる様に強くなるしかないよ」
単純なことだった。わがままに両方を取ればよかった。
「...もう少し考えてみる」
「うん、その方が良いよ。もう帰るね。また明日」
それだけ言うとミカは女子寮に向かって行った。カイも先程のことを考えるために自室に向かい始めた。
「見てもらって良いですか?」
医師はセレスに手に持った
セレスは医師に言われた通り
「...っ!?何よこれ!?」
セレスが見た生徒はガルのことだった。
「魔力はほとんど無いし、魔力器官はボロボロ。こんな状態になるまで魔法を使うなんて死にに行くのと同義よ!?」
セレスが言った通りガルの魔力は魔力器官がボロボロになっており、そのせいで魔力の回復が遅くなっていた。
「そんなに酷いのか...?」
「ほら」
セレスはいまいち分かっていないアルドレッドに
「...詳しくない俺でもこれが酷いのはわかるな...」
素人のアルドレッドから見てもかなり酷い物だった。
「こんな状態になれば普通は魔法を撃てません。なのに気絶する寸前まで魔法を撃っていたそうです。」
「それは...」
「はい。洗脳魔法のせいだと思われます」
「やっぱり...」
3人は暗い顔になる。
「さっきまでは良く分かって無かったが、かなり恐ろしいな...」
「はい...」
この後、3人とも黙ってしまった。
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ここまで読んでくださりありがとうございます。
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