49話


 帰りはカイだけが戦闘をし遭遇したモンスターはしっかり倒していったため、誰1人欠けることなくダンジョンから出ることが出来た。


 ダンジョンを出たところで検問所にいた兵士が驚きカイ達に向かって焦って走りながら近づいてきた。半分ほどの生徒と教師が他の生徒に肩を貸してもらいながら歩いており、1人は意識不明で背負われていたからだ。学園で生徒達が潜るときはここまで班が壊滅しかけた状態で帰ってくることがなかったため、兵士が驚くのは当然のことだった。

 兵士は急いで馬車を呼びカイ達を乗せた。兵士は御者に急いで学園に向かうよう言い、頼まれた御者は言われた通り学園に向かうために走らせ始めた。


 走り出してからすぐに、休憩して気分が良くなったのか教師がカイに話しかけた。


「カ、カイ君、あの男達はど、どうしましたか…?」


 あの男達とはもちろんローブ男達のことだった。突如現れ、生徒達を危険な状態にした存在。教師はあの男達のことが気になっていた。


「オークファイターを倒したら逃げました」

「オ、オークファイターに勝ったのですね」

「オークファイターとは前に戦ったことがあったので何とかなりました」

「オ、オークファイターと戦ってる時にあ、あの男達はな、何もし、しなかったのですか?」

「はい。何もしてきませんでした。多分オークファイターが勝てると思って攻撃してこなかったんだと思います」

「ほ、他に何か言ってませんでしたか?」


 カイは、あのローブ男達が他に『ガルを洗脳して皆を殺すように命令した』ことを教師に話した。


「せ、洗脳をする魔法ですか…そんな魔法が…」

「あいつらはそう言ってました。あの2人を捕まえようとしたんですが、先生達が危ないと言われ、油断した瞬間に逃げられました。」


 カイは本当のことと嘘を交えながら話した。

 ここでオークファイターについても言っても良かったが、他の生徒がいたためいうことを控えた。


「で、ですが、敵の嘘かもしれないとはお、思わなかったのですか...?」


 ここまで聞けば結果的には本当だったが、カイが相手の言った言葉を嘘か確認せずに信じたようにもとれるため教師はカイが嘘ではないと確信を持てた理由を知りたくなっていた。


「急にバイトが3階層の奥に行こう暴れた時がありましたよね?」

「は、はい。カ、カイ君が止めなければそ、そのまま奥に行っていたとお、思います」

「そのことをあの男は知ってたんです」

「ほ、本当ですか!?」

「はい。洗脳で『3階層の奥に来い』と命令したと言ってました」

「そ、そのせいでバイト君は暴れたのですね...」


 そこまで話していると馬車が学園に着いたため、歩けるようになった教師が生徒達を先導して医務室に向かっていた。カイはオークファイターのことを言うため教師の隣にいた。

 他の生徒達がそれぞれ話始め、自分たちが話しても聞いてなさそうなタイミングでカイは教師以外には聞こえないように小さな声で話しかける。


「先生、あと1つだけ」ボソッ


 教師はどうして小声だったのか分からなそうにしていたがカイの言葉に頷いた。


「あの男たちはオークファイターを作ったと言っていました」


 カイがそう言うと教師はとても驚き周りをキョロキョロと見る。周りが慌てていないことに安心したのか一息ついてからカイに話しかける。


「そ、それは本当ですか!?」ボソッ

「はい、ただそれしかわかりませんでした」 ボソッ

「わ、分かりました。ほ、報告は私がしておくのでカイ君は医務室でゆっくりしていてください」ボソッ


 カイが教師の言葉に頷くと丁度良く医務室に着いた。




 医務室に生徒達が着くと、以前カイが怪我をしたときに治療した医師がいた。医師は生徒達の様子を見てどんどん治療をしていった。


 治療をしていき、後は教師とガルとカイだけになった。


「...これは...!?」


 医師がガルの様子を診ると驚いていたが、すぐに顔色を戻し教師に容態は話した。


「魔力を多く消費しただけだね。寝かせておけば問題ない」

「じ、実はその生徒はダンジョンで怪しい者たちに洗脳する魔法を受けたんですが、だ、大丈夫でしょうか...」

「...それは、分からない。今は起きるのを待つしかない」

「先生、気絶する前の命令が『周りの者を攻撃しろ』だったんですが、大丈夫ですか?」

「そうか...。念のため拘束しよう」


 医師は机を漁ると紐を取り出しガルを拘束していく。

 拘束がし終わると次に教師の容態を診る。


「...先生も魔力の消費が激しい。魔力器官も傷ついている。当分は魔法を発動させないようにしてください」

「わ、わかりました」


 次はカイを診ようとしたときに医師は残っていた者達に声をかけた。


「あ、もう戻って大丈夫だよ。皆安静にするように」


 医師がそう言うと生徒達は皆出て行った。


「わ、私は今回のダンジョンで何があったかほ、報告してきます。せ、先生カイ君をお願いします。」

「はい」


 教師は医師にそう言うと出て行った。

 医師は医務室の周りに誰もいないことを確認してから話し始めた。


「これはどういうことですか!?」

「実は・・・」


 カイは医師にダンジョンで3階層に行く前まで話した。


「ここまでは普通ですね?」

「ここからですよ。その前にセレスさん達を呼んでいいですか?」

「...そんなにヤバイことですか?」

「はい。かなりヤバイです」

「...分かりました。呼んできてください。私は生徒達の容態を診ます」


 そう言うと医師はガルの所に向かった。


(生徒...?)


 カイは医師の言葉に疑問に感じながらアルドレッドとセレスの所に急いだ。


------------------------------------------------------------------------------------------------


 ここまで読んでくださりありがとうございます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る