48話
(急がないと...!)
カイは魔力を纏い全速力で走っていた。
あのローブ男達を捕まえたいという思いに後ろ髪を引かれていたが、教師達が危ないため教師達の所に向かっていた。
(ッ!?)
その時ローブ男達がいたところで膨大の魔力を感じたため、後ろに振り返った。
(何が来る!?)
カイは警戒し、戦闘体勢に入ったが、突然膨大な魔力が無くなった。同時に魔力感知でローブ男達を探すが2人の反応は無かった。
(逃げられた...)
カイは何らかの
自分の中で結論が出たため、カイはまた教師達の所に急いで向かい始めた。
カイが着くと、ガルは氷の壁に向かって一心不乱に魔法を放っていた。その魔法が当たると氷は崩れて落ちるが、氷はすぐさま元に戻っていた。教師が壁に魔力を流し続けることで氷の壁は維持されていた。
カイは考えるよりも先にガルに向かって走り出した。そのままガルの腹を殴り後ろに跳ぶ。
ガルは接近していたカイに気づかず、守ることなく殴られ魔法を撃つことを止める。魔法が撃ち込まれなくなったため、教師は氷の壁への魔力供給を止めた。
ガルは首をゆっくりと動かしカイを視界に入れると、標的を氷の壁からカイに変え、カイに向かって魔法を撃つ。
「ウォーターボール、ウォーターボール、ウォーターバレット」
その魔法は一切の手加減が無く一発当たるだけなら問題は無いが、何発も当たれば命の危険があるほどの威力だった。だが、カイはそれを全て避けていた。
(気絶させればいいかな...?)
カイはどうすればガルを止められるかを考えていた。ここに来るまでも考えていたが、洗脳を解く方法が全く浮かんでいなかった。
(早く止めないと...)
実際、考えている時間は無かった。
ガルは自分の魔力残量を考えもせずに魔法を撃っている。今までの戦闘と先程まで暴走して魔法をたくさん撃っていたため、すでに最大魔力量の1割と少ししかなかった。
(気絶させて意識が無い間に魔力を回復させる。それしかない)
方針を決めたカイは再度ガルに向かって走り出す。ガルが魔法を放つが、カイは全て避ける。接近出来たカイはガルの下半身が隙だらけだったため、脛に向かって蹴りを入れる。ガルがまた守らなかったため、カイの蹴りはガルの脛に当たる。普通の人ならば声を上げ、痛みでしゃがみ込むか後ろにのけぞるが、ガルは無反応だった。ガルはそのままカイに手を向ける。
「ウォターボール」
魔力感知をしていたカイには魔法は来ることが分かっていたため避けることは簡単だった。
(...嘘でしょ?痛くないの...?)
ガルは先程同様にカイに向けて魔法を撃つ。カイはその魔法を避けて近づこうとする。
カイが蹴りを放ってからガルが魔法を2発撃ったところでカイが再度接近したところで戦況が変わった。
教師が作った氷の壁が無くなった。
「うぉおおおお!!!」
「ま、待ち...なさい...!」
1人の生徒がガルに向けて走り出した。教師が止まるように言うが止まらない。壁が無くなったのとその生徒が走り出すには3秒ほどしかなかった。
その生徒はガルが最初に魔法を当てた生徒だった。
その生徒は魔法が飛んでこなかったためすぐに近づくことが出来た。拳を顔の横まで上げてガルのことを殴ろうとしていた。まさにテレフォンパンチだった。ガルは声に反応したのか、カイからその生徒に標的を変え手を向けた。カウンターとして魔法が撃ち込まれようとしていた。
それを間近で見ていたカイは、ガルに背中を向けた状態でその生徒とガルの間に入る。カイは手に魔力を纏わせてその生徒の拳を止める。まだ、撃ち込み始めていなかったため簡単に止めることが出来た。
「ウォーターキャノン」
ガルは魔法を放った。その魔法は本来飛び出した生徒に当たる物だったが、カイが間に入り込んだためカイの背中に当たった。
2人は魔法が当たった衝撃で教師の近くまで飛ばされる。
カイは背中に魔力を集中させて纏ったためそこまでダメージが無かったが、周りは無防備で魔法が入ったようにしか見えなかった。
「カ、カイ君!!」
教師がカイに話しかける。カイが教師を見てみると、魔力を多く消費したためか、手と膝を地面につけた四つん這いの状態で顔からすごい汗が出ていた。
「だ、大丈夫...ですか!?」
「大丈夫です。バイトを止めます」
カイと一緒に飛ばされた生徒は何が起きたのか分からないため、他の生徒はカイがいることに驚き放心状態で動けない状態になっていた。
カイは再度ガルに向かって走り出す。今度は鞘に納めた状態の剣を持ちながら。
「ウォーターバレット、ウォーターバレット」
ガルは走ってくるカイはもちろんのこと後ろにいる生徒に向かって魔法を放つ。カイはそれを持っている剣で叩き落す。飛んでくるウォーターバレットのサイズは大きくないが、カイは正確に叩き落としながらガルに接近していく。
ガルの撃つ魔法を叩き落しながら接近することが出来たカイはガルの顎に向かって拳を打ち込む。殴られた瞬間ガルは糸が切れた操り人形の様に崩れ落ちた。
カイは気絶しているガルを背負い教師の所に戻る。
教師はガルが崩れ落ちたときは驚いていたが、気絶しただけだと分かり安心した。
「す、すみま...せん。時間...切れで...壁が...消え...ました。の、伸ばし...たかった...のですが、...もう魔力が...」
「今はゆっくりしててください」
教師は苦しそうにカイに先程壁が消えた原因を話した。カイの感知で教師の残りの魔力は行きの時の1割ほどしかなかった。普通ならば魔力の残りが最大魔力量の1割半になれば、気分が悪くなり、1割ほどになれば、立つのもやっとの状態になる。ここにいる者たちは全員が魔力量を最大にしてからダンジョンに来ているため、教師は魔力が残り1割と言う状態だった。しゃべるのも辛いはずなのに教師はカイに何とか説明した。
カイがガルの魔力残量を見てみると最大魔力量の3分しかなかった。
(これしかないなんて...。このままだと魔力切れで死んでた...。あの魔法は危険すぎる...)
カイは洗脳の魔法がどれほど危ない物か分かり寒気がしていた。洗脳してしまえば遂行するまで止まらない。攻撃された痛みも感じず、命が尽きそうになろうとも命令されたことを実行する。
そんな危険な魔法を持っている者を逃がしたことにカイは後悔し始めていた。
皆が先程までのことにパニックになっていたため、少し休んでからダンジョンを出ることになった。ダンジョンを出る際はカイが先頭で動ける人が動けない人を背負い戻ることにした。
問題はガルだったが、カイが戦闘の時以外背負うと言い出したため問題にならなかった。
帰りはほとんどモンスターを遭遇することなくダンジョンから出ることが出来た。
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ここまで読んでくださりありがとうございます。
補足説明
『ウォール』や『サークル』などの維持する魔法には発動し続けられる時間があります。それは、発動する魔法が大きければ大きいほど持続時間が短いです。再度魔力を魔法に流すことで時間を延ばすことが出来ます。
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