38話


 戦闘終了から2分ほど経ち、ミカと話していた女生徒が立てるようになったが、まだ膝が笑っておりしっかり歩けないため、ミカが肩を貸してヒースと担任が行った方に向かった。


 ミカは前方で戦闘音が聞こえたため少し急いで歩いた。女生徒も戦闘音に気づいたのか早歩きになった。


 2人が着いた時、部屋にはグループの人たちに2体のオークの死骸とオークファイターがいた。

 ミカは部屋の様子を見て少し固まったが、すぐに隣の女生徒を座らせ動き出した。

 今の状況は、5人の取り巻きのうち4人が膝をついて座っていたり、倒れていた。他の生徒たちはその後ろで怯えて動けなくなっていた。ヒースはオークに殴り飛ばされたのか、少し離れた壁の近くで倒れていた。担任はオークファイターの対応をしていたが、近づかせないことで精いっぱいだった。


 しかし、ミカが固まった原因は他にあった。

 ヒースの近くに入学試験でカイに負けたと言っていた男子生徒が血を大量に流してうつ伏せに倒れていたからだ。


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 ミカがオークと戦闘を開始した時、ヒース達は通路を走っていた。

 走っていると、目の前の部屋にオークがいることに気づいたヒースは魔法を放った。担任はヒースの隣にいたため、便乗して魔法を放った。

 魔法名を言いながら放ったことでオークは気づいたが、すでに遅く魔法が当たり絶命した。しかしオークはもう2体いた。部屋に着いた取り巻き達はやばいと思ったのか、自分達の体調を気にすることなく、小さいほうのオークに魔法を一斉に撃った。オークを倒すことは出来たが、魔法を撃ったため体調が悪化し、座り込んだり倒れたりしていた。他の生徒は遅れて部屋に入ってきて、何をしたらいいのかあたふたしていた。

 だが、まだ部屋の奥にはオークがいる。そのオークは先程まで戦っていたオークの一回りは大きく、手には人間で言う大剣と大盾を持っていた。生徒たちは普通のオークだと思ったが、担任だけはそれがオークファイターだと分かった。


「バーシィ!下がれ!」

「大丈夫ですよ。オークなんて簡単に倒せます。」


 その時、ヒースは担任の方を見て話してしまった。


「あいつはオークファイターだ!」


 担任はこう言ったが、ヒースには「オーク」とまでしか聞こえてなかった。担任が話している途中で、オークファイターが大盾でヒースを殴り飛ばしたからだ。この時大剣で薙ぎ払われなかったのは不幸中の幸いだった。ヒースは殴られたことで気絶し、壁まで勢いよく飛ばされた。


「ヒース様!」

「バーシィ!」


 取り巻きと担任が叫んだが、オークファイターは止まらなかった。そのままヒースに歩いて近づき大剣で斬りつけようとした。生徒を守るべきである担任はヒースが飛ばされたことに驚き見ていることしかできなかった。他の生徒も恐怖で動けなくなっていた。


「ヒース様ぁぁあ!」


 他の取り巻き達が体調不良で動けない中、入学試験のトーナメントの決勝戦でカイと戦った男子生徒だけはヒースに向かって走っていた。

 その生徒はオークファイターよりも早く近づき始めていたため、剣が振り下ろされるよりも前にヒースとオークファイターの間に入ることが出来た。倒れているヒースを引っ張るようにして、すぐに離れようとしたが出来なかった。

 オークファイターは容赦なく剣を振り下ろした。

 男子生徒は、離れようとしていたため体が2つに分かれることは無かったが、背中を深く切られた。切られた痛みで男子生徒は気絶してうつ伏せに倒れ込んだ。その顔はヒースを守れたことで少し嬉しそうな顔をしていた。

 担任はこの状況になりようやく動いた。


「お前たち!動けるなら逃げろ!ファイアボール!!」


 担任がファイアボールを放ち、またヒースを斬ろうとするオークファイターをけん制する。

 他の生徒は恐怖で座り込み、残った取り巻きののうち3人は仲間が死んだかもしれない事実に担任の声が聞こえてなかった。最後の1人は何とか気を保っており、周りの状況を見て担任の言葉に受け答えをした。


「すみません...。今はみんな動けないです。それに、2人程いません。」


 生徒のその言葉に担任は驚いたが、今オークファイターから目を離すわけにもいかないため、どの生徒がいないか分からなかった。


 担任はファイアボールやファイアウォール、ファイアキャノンを放ち生徒に近づかせないようにする。オークファイターは魔法を大盾で受け止めたり、避けたりするためダメージを与えることが出来なかった。そもそも担任は前衛がいないとあまり戦えない後衛であった。そのため、オークファイターにダメージを与えることが出来なかった。


 このままでは魔力が尽きてオークファイターにより全滅してしまうと担任が考え始めたとき、オークファイターに雷が放たれた。そのおかげで担任の放ったファイアボールが当たった。


「プギィィィイィイィイイイイ!!」

「先生下がってください。私がやります。」


 担任の隣にはミカがいた。


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 ここまで読んでくださりありがとうございます。

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