35話
前回のダンジョン探索から2週間が経った。
その間にカイの傷も治った。
そして、その日の授業でアルドレッドとセレスから連絡を受けた。
「明日からは、それぞれのクラスでダンジョンに潜ると連絡が来た。そのため1週間はこの授業は休みだ。A組から順番に1日1クラスで探索するそうだ。」
カイはこのことを言われるまで忘れていた。そして自分はFクラスだから6日後だと認識した。
「お前たちは先にダンジョン探索をしてるが油断しないようにな。」
この2週間冒険者体験の授業では座学か模擬戦しかしていなかったため、生徒たちはダンジョンに1回しか潜っていない。
「今日はここまでだ。」
アルドレッドとセレスはそのまま教室から出て行ってしまった。
カイとミカ以外の生徒はそれぞれグループごとに集まり、クラス単位のダンジョン探索のそれぞれの思いを話していた。その中には「他の奴と探索したらどんな感じに変わるんだろう?」や「他の人は探索したことないから不安だね。」などがあった。
カイは特に何も思っていなかったが、ミカは少し不安に思っていた。
「そんなに不安にならなくてもミカは強いから大丈夫だよ。」
「...ありがとう。はぁ~。変な人がグループにいないと良いな。」
今回の探索は、クラスを3つのグループに分け、そのグループ1つ1つに教員が補助として入ることになっていた。
「確かに。でも、ミカならすぐ人と仲良くなれるから大丈夫だって。」
「そうかな...?それよりも、カイも気を付けてね。」
「ミカもね。」
カイとミカはクラス単位のダンジョン探索の話しを止め、ミカに修業をつけるため演習場に向かった。
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クラス単位のダンジョン探索初日。一年生はAクラスのみが教室に集まっていた。他のクラスは休校になっていた。
「これから今回のダンジョン探索のグループ分けを言うぞ。しっかり聞いとけ。その後はグループの半分ずつで馬車に乗ってダンジョンに向かうぞ。」
Aクラスの担任が生徒達に話し始めた。
ミカは最初のグループに入っていたため、すぐに名前を言われた。ミカと同じグループには、カイが入寮した初日に食堂でカイと騒動を起こしかけた『ヒース=バーシィ』とその取り巻きがいた。ミカは知らなかったが、このグループ分けはヒースと担任が裏で話を合わせて組まれたグループだった。
「よろしくお願いします、ミカ=アルゲーノスさん。」
「...よろしくお願いします。」
ヒースは笑顔でミカに挨拶をした。ミカが感じたヒースの第一印象は胡散臭いだった。
「よし、グループはこんな感じだ。移動しろ。」
グループ分けの発表終わり、担任が移動しろと言ったため、ミカは即座に移動し始めた。ヒースはミカに話しかけようとしたが、ミカがすぐにいなくなっていたため話しかけることが出来なかった。
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ミカは指定された馬車に最初に着いたため、先に乗り込んで座って待っていた。しばらくして、ヒースとその取り巻きの数人が乗り込んできた。
「ミカさん!もう乗られていたんですか?早いですね。」
ミカはあれ以上ヒースと話したくなかったが、ダンジョン探索に支障が出ないために当たり障りない返答をしていた。
「はい。早めに乗っていた方が良いと思いましたので。」
「それは良いことですね!もしも、ダンジョンで何かあっても私が対処するので安心してください!」
ヒースは自慢げに話した。取り巻きたちは「さすがヒース様!」「頼りになります!」など言っていた。そのころ、ミカは既に早く馬車を下りたいと思っていた。
「そういえば、ミカさんはどの授業を受けてられるんですか?」
「私は冒険者体験の授業を受けています。」
「冒険者体験ですか?」
ヒースは少し困惑した顔をした。
「あなたなら他の授業の方が良いと思いますが...。」
ヒースは言ったことにミカは笑顔を作り反応しなかった。
「そう言えばミカさんは知っていますか?不正してこの学園に入った無能のことを。」
「無能ですか?」
「はい。確か冒険者体験の授業を受けてると聞いたのですが...。実は不正でこの学園に入った者がいるんですよ。」
「学園はなぜ除籍にしないんですか?」
ヒースはバツの悪そうな顔をした。
「...学園はあいつの不正の証拠をつかめてないのです。」
「それならば不正をしてないのでは?」
「そんなことはありません!!不正をしなければ僕が負けることはありません。」
それは入学試験でカイに負けた生徒だった。
「彼は私ほどではありませんが、それなりに強いです。それなのに負けたのは、不正をしたとしか思えません!!」
ヒースの言葉に取り巻きたちは「そうだそうだ!!」と声を上げるが、ミカは何も言わなかった。
「その方は何と言う方なのですか?」
「正直、あいつの名前を言うのも嫌なのですが...。」
ヒースは心底嫌そうな顔をして名前を言った。
「...カイと言う奴です。不正をした無能です。」
ミカはその名前を聞き、笑顔は崩さなかったが、内心すごく怒っていた。
その後も他の話しをしていたが、ミカはその話を全く聞いていなかった。
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