34話


 カイとセレスは医務室から出て廊下を歩いていた。


「...カイ、あの医師のことは信じても大丈夫だと思うかしら?」

「...確実に大丈夫とは言えないです。それでも、僕があの人の弱みを握ってる間は大丈夫だと思います。」

「同じ弱みを私たちも握られているのだけどね。」


 セレスは苦笑いしながら呟いた。


「大丈夫です。セレスさんたちは僕の弱みを握ってるじゃないですか。」

「...それもそうね。私たちはカイの秘密を知っていたわね。」


 お互い暗い顔をしていたが、先程よりも明るく、少し安心したような顔をしてた。


「今まで嘘を言っていてごめんなさいね。」

「いえ、このことは言えないことでしたから仕方ないですよ。」

「そう言ってくれるとありがたいわ。」


 そのまま歩いていたが、セレスは不意に気になったためカイに聞いた。


「そういえば、カイはあの男から何を聞いていたのかしら?」

「国のことを聞いていました。王国がどんな位置にいるのかとか。」

「そうなのね。それなら王国と帝国が敵対してるのは聞いたかしら?」

「はい。それに王国は他国とほとんどやり取りしてないことも聞きました。」

「そこまで聞いたのね。」

「帝国と王国が小さい小競り合いをしてるっていうのは本当なんですか?」

「本当よ。でもここ最近は減ってるわ。」

「何で減ってるんですかね?」

「私も調べてみたけどわからなかったわ。でも私は大がかりの準備をしてるんだと思うわ。」

「そうですか...。」

「王国民のあなたにこんなことを言うのは酷よね。ごめんなさい。」

「大丈夫です。僕自身、王国が絶対に正しいとは思っていないので。」

「そうなの?」

「はい。医師が『王国は王国こそが至上の存在だと思っている』と言ってました。僕自身そのことはあってると思いました。父親も貴族至上主義でしたし、同級生の上級貴族の子息は他の人を見下してるような態度でした。」


 それを聞いたセレスは心なしか寂しそうな顔をしていた。


「他の貴族がこういう人ばかりだとは思ってないですけど、もしそういう人しかいなかったなら、僕はあまり王国のことはあまり好きではないです。そのうち他の国に逃げるかもしれないです。」

「そうなれば帝国に来てくれたら私は嬉しいわね。」


 セレスがまた明るい顔に戻ったのを見てカイは少し嬉しくなった。


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 セレスは用事があるため演習場には向かわなかったが、カイはミカの特訓に付き合うために演習場に向かっていた。

 放課後だったため廊下にはほとんど人がいなかったが、向かいから歩いてくる人がいた。

 その人はカイの知っている人だった。


「レイ兄上!?なんで学園にいるんですか!?」

「カイ!こんなところにいたのか。寮にこれから向かうところだったんだよ。」

「寮には何しに行くところだったんですか?」

「カイに会うためだよ。そのネックレス使っただろ?」

「あっ。そういえば使いました。どうしても攻撃が避けられなくて攻撃くらうって時にこの魔法道具マジックアイテムに守ってもらいました。」

「それがこの魔法道具マジックアイテムの効果だからね。」

「兄上ありがとうございます。」

「気にするな。カイが無事だったのならよかったよ。」

「はい。」

「じゃあ俺は戻るよ。やることを残してきてるからね。これからたびたび会いに来るよ」

「帰り道気を付けてください。」


 レイはそのまま帰って行った。



 その後はミカの特訓に付き合って一日が終わった。


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 ここまで読んでくださりありがとうございます。

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