33話
カイがミカに修業をつけ始めて2日が経った。カイはその間、授業を受けたり、ミカに修業をつけて過ごしていた。
カイはその日の授業が終わり、言われた通りに医務室に来ていた。
「失礼します」
「ん?カイ君ですね。さっそく傷を見せてもらって良いですか?」
「はい」
カイは近くの椅子に座り上着を脱いだ。医師は薬が入っている瓶を持ってカイの近くにある椅子に座った。
医師は慣れたようにカイに巻いてあった包帯を取り傷の様子を見た。
「大丈夫の様ですね。これなら言った通りあと5日くらいで治ると思います。今まで通り運動はしないでくださいね」
「まだダメですか?そろそろ体を動かしたいんですけど…」
「ダメです。今の状態で動くと悪化しますよ?」
「分かりました…」
カイは少し落ち込みながらも治るまで体を動かすことを我慢することにした。
カイは診断が終わったため脱いでいた上着を着ると医師がカイに話しかけた。
「そういえばカイ君に頼まれていたこと少しは分かりましたよ」
「ほ、本当ですか!?」
ここまで早く分かることだとは思っていなかったためカイは驚いてしまった。
「えぇ、少しだけですが分かりましたよ」
「教えてください!!」
「そこまで急がないでくださいよ」
「す、すみません」
「気になるのはわかりますが、一回落ち着いてください」
医師はカイが落ち着くためか、暖かいお茶が入ったコップを前に出した。
「ありがとうございます」
「では、私が調べたことですが、彼らは王国の国民でないことは確定しました」
「それも疑っていたんですか?」
「念のためですよ。冒険者ギルドを調べたところ3ヵ月前以前の彼らの活動していた記録が無かったのです。ですが、最初の依頼の時点でAランク冒険者だったためおそらく帝国でAランクになったのでしょう。」
「そういえば3ヵ月前くらいに王国に来たって言ってました。」
「彼らが帝国でどのような活動をしていたのかはわかりませんでしたが、この3ヵ月で彼らはいろいろな依頼を受けているようです。その依頼には規則性はありませんでした」
「そうですか…。他に分かったことはありましたか?」
「もう一つだけ、彼らが王国に入国した記録が無かったのです」
「無かった?そんなのがあるんですか?」
「あります。記録を取って監視をするんです。記録が無いということは彼らは私と同じように密入国者です」
「王国が要請して来たとかは無いんですか…?」
「それならば記録が残るはずです」
「そうですか…」
カイはアルドレッドとセレスが違法に入国していることに驚いた。
「おそらくですが、彼らは情報収集のために王国に来たのでしょう」
「何の情報だと思いますか?」
「おそらくですが、戦争のことだと思います」
「戦争!?」
「はい。他国から見ても王国と帝国は戦争がいつかは起こると考えられています。彼らは起こるタイミングを調べに来たんだと思われます」
「王国の作戦を調べるとかではないんですか?」
「それならば、学園で教師をすることは無いでしょう。それに、帝国は基本的に自分から攻めることはしません。守りを固めるために攻めてくるタイミングを調べているのだと思います」
まだ話そうといていたが、誰かが医務室に接近しているのに気づいたため医師は話すのをやめた。
少ししてコンコンとドアが叩かれた。
「どうぞ」
「失礼します」
ドアを開けて入って来たのはセレスだった。
「セレスさん!?」
「さっきぶりね、カイ。ところで、あなたがこの学園の医師ですか?」
「そうですよ。今はカイ君の傷の様子を見ていました」
「傷の状態は?」
「大丈夫ですね。あと5日くらいで治ると思います。それまでは安静にしないといけないですね」
「セレスさん!!」
カイが急に大声を上げたため医師とセレスは驚いてしまった。
「セレスさんは何のために学園に来たんですか?」
「…それはあとで説明するわ。」
「それは私も気になりますね。」
医師が話に介入してきたことにセレスは少し不機嫌になった。
「私は聖国より王国の情報を収集するために王国に来ました。あなたもそうなのでは?」
セレスは医師が聖国の人間だとは思っていなかったため驚いた。
「…そんな簡単に言ってしまっていいんですか?」
「大丈夫ですよ。聖国は帝国とは仲良くいたいと考えていますから」
セレスは帝国の出身ということは言っていなかったため少し警戒し始めた。
「セレスさんすみません。俺が言ってしまいました…」
カイが本当に申し訳なさそうに言ったためセレスは何も言えなくなってしまった。
「いえ、私はカイ君が言うよりも前に知っていましたよ。今年の冒険者体験の授業は帝国の冒険者が担当すると」
「そうなんですか!?」
「えぇ、一番初めに教員のことを調べましたから」
医師はカイを驚かせることができ、少し楽しそうな顔をした。
「あなたが、聖国の人だってことはわかったわ。でも、王国を調べても意味が無いんじゃないかしら?」
「いえいえ、王国がいつ聖国に牙をむくか分かりませんから」
「…帝国にも潜入している人がいるのかしら?」
「私が知る限りだといませんね。そもそも王国にしかスパイは居ません。他の国に送っても意味は無いと考えていますから」
「それはなぜかしら?」
「帝国は聖国に攻めようと考えていますか?」
「無いわね。私たちは自分たちから攻めることは絶対にしないわ」
「そういうことです。聖国が危険視しているのは王国だけですから」
医師とセレスが話している間にカイが入りに行った。
「セレスさんは、何のために王国に来たんですか?」
「…はぁ~。この人の前で言うのは信用できないけど」
そう言うとセレスは一度深呼吸した。
「私たちが王国に来た目的は2つよ。1つは王国がいつ帝国を攻めるのか知るため」
このことは予想が出来ていることだったため、カイも医師も質問することは無かった。
「もう1つは王国の生徒たちがどのくらいの力量があるか調べるため。これは私が気になったからよ」
「何で気になったんですか?」
「昔、私は王国の魔法技術の低さに驚いたわ。そのことを思い出したから学園で教師をしているのよ。教育課程を知ればどうして魔法技術が低いか知れると思ったからよ。タイミングが良いことに冒険者が教師になれる依頼があったから私たちは依頼を受けたのよ」
「そうなんですか」
カイはセレス達の目的が敵対するものではないと知り嬉しそうにしていた。
「やはりそうでしたか」
「あなたも王国がいつ帝国を攻めるか調べてるのかしら?」
「王国はいつ帝国を攻めてもおかしくないですから。聖国もこのことを危惧しています」
「とにかく、私たちの目的はこんなところよ。聖国は本当に情報収集だけなのよね?」
「はい。情報収集だけですよ」
「…そう。カイ、そろそろ行きましょう」
「分かりました」
セレスとカイは医務室を後にした。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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