32話
カイが空を見上げると暗くなろうとしていた。
目の前には、息を上げながら大の字に寝っ転がっているミカがいた。
このようになった原因は授業が終わった後まで遡る。
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授業後、話が終わり、アルドレッドとセレスから演習場の使用許可を貰い、2人はさっそく演習場で特訓を始めた。
「まずはミカも実力がどのくらいか見たいから、今日は様子見で行くね?」
「分かったよ。私がどのくらいの力量かしっかり見てね!」
カイは少し離れた場所に、高さが大人と同じくらいの氷柱を作り出した。
「まずは魔法の腕を見せてもらうね。あの氷に魔法を撃って。威力は普通くらいで良いから。」
「分かった。」
ミカはカイに言われた通り氷に向かって雷を放った。
(威力は他の生徒よりも強い。撃つときに無駄になってる魔力も少ない。魔力操作のたまものだ。魔力の総量はラウラよりもちょっと少ないくらいかな?)
一回の魔法でカイはそこまで分析できた。
(やっぱり、やることは魔力操作をより早く出来るようにすることかな。後はとっさに魔法を撃つときにどれだけ魔力を無駄にしないかだけど...、今の俺だとそれを調べるのは出来ないな。)
そして、これからミカがすることを考えた。
今日は様子見のため、カイが何をするか考えているとミカがカイに近づいた。
「どうだった?まだまだ威力が低いかな?」
「いや、威力は十分だったと思う。けど、魔力をたくさん使った威力が強い魔法は発動が遅かったからこれからは魔力操作を早くできるように練習しよう。」
「威力が高い魔法って、この前イモータルジェネラルと戦った時の?」
「そうだよ。あれの威力は高かったけど撃つまでが長かったから。魔力を早く操作できるようになればもっと早く撃てる様になるはず。」
ミカはカイの見解を聞き嬉しそうにしてた。
「やっぱり教えてくれる人がいると違うね!」
「ミカは今まで1人で特訓してきたの?」
「そうだよ。今までは家の庭で自主練習ばっかしてたの。」
ミカと話しながらカイは次にやることが思い浮かんだ。
「じゃあ、次は接近戦の方にしよう。槍を使わない動きも見たかったけど、今日は使おう。」
「分かったけど、どうするの?私が敵と戦っていることを想定して動けばいい?」
「それもいいかもだけど、俺が相手するよ。」
「え、でもカイ運動しちゃいけないって...。」
「大丈夫。全部魔法で防御するから。」
そう言うとカイはミカの前に氷柱を作り出した。その氷柱はミカの足元から顔までの高さだった。
「っ!?いつの間に!?」
「これと同じ速度で氷作るから大丈夫。」
「...絶対に一撃入れるから。」
カイの行動はミカのやる気に火をつけたらしい。
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カイとミカはお互い離れ、カイは特に構えてはいないが、ミカは演習場にあった木製の槍を構えた。
「魔力を纏わせていいからね。」
「言われなくても纏うよ。カイ相手には手加減なんてできないよ。」
「じゃあ、いつでも攻撃してきて。」
言った瞬間にミカがカイとの距離を縮めた。
ミカは槍で突いたり斬りつけるが、カイは全てを氷柱で防ぐ。
ミカが後ろに回り込んで突きを放ったがそれも円盤状の氷によって防がれる。
「これも防ぐの...!?」
「前が無理だったら大体は後ろだからね。予想してたよ。」
「本当に強すぎでしょ!?」
ミカはカイから離れる。
「まだまだ行くからね!」
ミカは足に雷を纏わせカイに接近して、カイに槍を打ち込もうとする。
カイはとっさに氷柱を目の前に作り出した。
「やっぱり速いね!目視なんてできないよ!」
「これが見えてたら怖いよ!」
ミカはカイに向かって槍を振るうが一向に当たる気配が無かった。逆にカイが発動する魔法の方が速くなっていた。速くなったのはカイが魔力感知を使い始めたからだ。流石のカイも、この速さには対応が出来ないため、魔力感知を使わざるを得なかった。
そろそろミカのスタミナが残り少なくなり、息を上げ始めそうなタイミングでカイがミカに言い始めた。
「そろそろ、俺からも攻撃するからね!!」
「え。噓でしょ!?」
ミカは一瞬惚けてしまったが、すぐに回避行動に移った。その瞬間カイが作り出した氷柱がミカのいたところにできていた。もし回避していなかったら氷柱は腹部に当たっていただろう。その氷柱は、安全のためか先が丸くなっていた。
「ちょ、ちょっと待って!?あの速さで攻撃されたら避けられないよ!」
「大丈夫!少し速度落としてるから!ほらほら話してると危ないよ!」
カイはお構いなしにミカに向かって氷柱で攻撃しようとする。前方からはもちろんのこと、側面からも当たるように作り出していく。時には後ろからも作り出しミカを攻撃しようとする。
ミカは攻勢に出たいが、カイの攻撃が激しすぎて避けるので精一杯になっていた。
ミカは槍を使い、時には砕いたりして頑張って避けていた。
「回避に専念するの?ならちょっとだけ増やすよ!」
カイは先程よりも激しく攻撃し始めた。
ミカは頑張って避けるが、先程と違い時々攻撃が当たるようになってしまった。
その後もミカは避け続けたが、魔力が無くなりそうになったため足に纏っていた雷が無くなってしまった。カイはその瞬間にミカの腹めがけて氷柱を作り出した。ミカは避けることができず、氷柱に当たってしまった。ミカは衝撃に備えたがその心配は無かった。なぜなら、氷柱が当たった瞬間にカイが形を変形させ、腹を氷が覆うような形に変えたからだ。
「はい、捕まったからいったん終わり。お疲れ様。」
カイはミカに近づきながら氷を解いた。ミカはかなり疲れていたためその場で座り込んだ。
「疲れた...。攻撃を避けることしかできなかった...。」
「最初であれだけ避けられるなら上出来だよ。」
カイも隣に座って休憩し始めた。
「カイ、魔法撃つの早すぎない?」
「ミカもこれくらい早く出来るようになるよ。雷だから俺よりも早くなるかもよ?」
2人は先程の動きの反省点を話しながら休憩していた。
話しが終わるとカイは立ち上がり、ミカの方を向いた。
「じゃあ、次は今の状態で攻撃を避けてね。」
「...え。」
ミカは疲労によりカイの言葉が理解できなかった。
「あと5秒したら攻撃し始めるね。5。4。3。」
「待って!?かなり疲れてるんだけど!?」
「大丈夫さっきよりも遅くするから。」
「そこが問題じゃないの!!」
「そろそろ5秒たつよ?2。1。0!」
そう言うと、カイが作り出した氷柱がミカに向かって伸びる。
ミカは立ち上がることが出来ず、横に転がった。横に転がり起き上がると目の前には攻撃しようとする氷柱があった。ミカはとっさにかがみ込むことでそれを避ける。
その後は、走り回りカイの攻撃を避ける。カイの攻撃は容赦なくミカを襲う。
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カイ攻撃を避けきり、ミカは演習場の地面に大の字で寝転がり息を上げていた。
「お疲れ様。今日はこれで終わりにしよ。」
「...初日からハードすぎるよ。」
「大丈夫。今日が特別ハードなだけだから。明日からは一週間くらいは魔力操作を重点的に練習しよう。」
こうして特訓は終わった。
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