31話


 カイと医師が国の関係性を話した次の日の朝、医師はカイの脇腹の傷を見ていた。


「うん。大丈夫そうですね。しばらくは動きづらいと思いますが、普通に生活して大丈夫ですよ。ただ、運動をしたら開くから一週間くらいはしないでください。」

「今日、模擬戦をする予定なんですけど、それもダメですか?」

「ダメですね。そんな激しい運動したら絶対に傷が開きます。絶対にダメです。」


 カイは、ミカと模擬戦をする気だったが、医師に厳しめに言われてしまったためおとなしく言うことを聞くことにした。


「...分かりました。では、俺は授業に行きます。昨夜お願いしたことお願いしますね?」

「分かっていますよ。」


 カイは振り返り医務室から出ようとした。


「あ、カイ君2日後くらいにまた来てください。傷の様子を見たいので。」


 それだけ言われ、カイは医務室から出た。




 カイは医務室から冒険者体験の授業が行われる教室に向かっている途中でミカと会った。


「カイ、おはよう。」

「おはよう。ごめん、模擬戦できなくなった。医務室にいた先生が運動するなって。」

「昨日安静にするように言われたって言った時からできないと思ってたから大丈夫だよ。それに、今はカイと戦うよりも修業をつけてもらった方が良いでしょ?今の状態じゃ勝負にもならないと思うから。」

「じゃあ、ビシバシ鍛えないとね。」

「よろしくね、カイ師匠。」

「師匠はやめてよ...。」


 こんな話をしていたら2人は教室に着いた。


 カイは窓際のすぐ近くの席に座るとミカはその隣に座った。


「隣で良いの?」

「なんで?それに昨日のダンジョン探索で一緒になった人同士で座ってるみたいだよ?」


 カイはミカに質問をしたが、隣に座るのは当たり前という言うような感じだった。

 カイはこれ以上言っても無駄だと察したため、さっそくミカに課題を出した。


「じゃあさっそく修業開始ね。ミカは入学式の時に体内で魔力操作をしてたよね?」

「え、してたけど、なんでわかったの!?」

「俺は魔力を感知できるんだよ。それは置いといて。ミカは魔力操作を滑らかに出来てるけど速さが足りてない。だから、この授業中は速く動かすことを意識して操作して。」

「分かったよ。でも、魔力を感知できるなんてズルじゃない?対人戦闘で感知出来たら魔法が飛んでくるタイミングがわかるじゃん。」

「確かにズルかもしれないけど、出来る人は少なからずいるから仕方ないよ。」


「とにかく今回の授業は、魔力を速く動かすことをイメージして操作して。」

「分かった。」


 タイミングよくアルドレッドとセレスが入ってきて授業が開始された。


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「まずは、これからの授業の進め方だ。昨日のダンジョン探索でダンジョンがどのくらい危険な場所か分かっただろう。さて、昨日君たちはダンジョンでスライムと戦っただろう。しかし、スライムの弱点を知らず倒すのに手こずった者もいた。」


 アルドレッドがそう言った瞬間に何人かの生徒は昨日の戦闘を思い出したのか、嫌そうな顔をしていた。


「冒険者としてモンスターの情報は大事になってくる。だからこれからの授業はモンスターのことや、素材のことなど、冒険者として必要な知識を学んでいく。そして数回に一度、またダンジョンに潜る。こんな流れで授業を進めていく。」

「座学は主に私が担当するわ。ときどき問題を出すからしっかりと聞くようにね。今回の授業では基本的なことをおさらいするわよ。」


 そう言いセレスが授業を始めた。


 カイはセレスの授業を聞きながら隣のミカの様子も見ていた。


(前よりは速く動かせてるけど、まだまだ遅いな。さすがに早すぎたかな?)


 そんなことを思っていたらセレスがカイに問題を出してきた。


「ではカイ君。森の中でモンスターを倒した時の対処法は?」

「はい。モンスターの死体をそのまま置いておくと死体にモンスターが集まったり、腐敗して病気が発生する可能性があるため、素材をはぎ取った後は燃やしたりします。もし燃やせないようなら、燃やせる場所もしくは燃やせる人がいるところまで運びます。ただ、運ぶのはリスクが高いのでその場で燃やすのがベストです。」

「その通りよ。炎の魔法を使えない人は、火を出すことのできる魔法道具マジックアイテムなどを持って行くようすると良いわ。あと埋めるのも有りだわ」

「先生。もし買えないようだったらどうするんですか?」

「その時は、自力で火を起こすか運ぶか埋めるかしかないわ。」


 その後も順調に授業が進んでいった。


「では...ミカさん。ダンジョンに入る方法は何がありますか?」

「...。」

「ミカさん?聞いてますか?」

「ッハ!?す、すみません。聞いてませんでした...。」

「授業はしっかり聞くようにしてくださいね。では、他の人に聞きましょう。」


(セレスさんも厳しいな。一番聞いてなさそうなタイミングで聞くなんて。)


 セレスはミカが体内で魔力操作をしていることに気づいていたが、最初には質問しなかった。その時はミカもセレスの話しを聞く余裕があったからだ。しかし、セレスが問題を出す少し前に魔力が乱れて聞く余裕が無くなったことに気づいたため、セレスはミカに問題を出した。


 その後もセレスがときどき問題を出し生徒が答えていた。


「では、今日の授業はこれでおしまいにするわ。今日のことは基礎だから忘れないようにね。それとカイ君とミカさんは少し残って。昨日のことで話があるわ。」


 そういわれ2人はアルドレッドとセレスがいる教壇に向かった。

 他の生徒がいなくなり教室には4人だけになった。


「昨日ぶりね。ミカは様子を見る限り大丈夫だと思うけどカイは大丈夫かしら?」

「はい。一週間ほどは運動をしないように言われてますが大丈夫です。」


 カイが大丈夫だったことを聞き2人は安心したような顔をした。


「セレスさん、さっきの授業聞いてなくてすみませんでした。」


 ミカがセレスに謝った。急に言われたことにセレスは驚いてしまったがすぐに笑顔で答えた。


「今日の内容は基本的なことばかりだったから大丈夫よ。でも、これからは気を付けてね?」

「はい!」

「カイも厳しいわね。人の話を聞きながら魔力操作をさせるなんて。」

「セレスさんほどじゃないですよ。魔力が乱れた瞬間に問題を出すんですから。」

「え、あのタイミングで出したのってたまたまじゃないんですか!?」

「フフ。私は魔力を感知することが出来るのよ。」


 この場で笑っている2人を見て、アルドレッドとミカはこの2人のことを悪魔か何かだと思った。


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 ここまで読んでくださりありがとうございます。

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