27話


 このダンジョンの5階層のボスはオークファイターだった。その事実にカイとミカは驚いてしまった。


「2人の驚いた顔は面白いわね。本当のボスはオークファイターなのよ。イモータルジェネラルなんて化け物はこんな上層で出る者じゃないのよ。カイとミカはイモータルジェネラルがどのランクの冒険者が倒すモンスターだと思う?」

「私はCランク以上だと思います。この前戦った冒険者がDだと言っていました。あの人ではイモータルジェネラルとは戦えないと思います。」

「入学試験で戦った冒険者の方がどのランクか分からないですが...。たぶんDランク以上の方が戦うべきだと思います。」


 セレスは2人の答えを聞き、呆れた顔をしていた。


「2人ともよく聞いて。イモータルジェネラルと戦えるのはBランク以上だと言われてるわ。それでも、私みたいな後方支援だけだと相手したくない敵よ。」


 セレスの答えに2人は驚愕するしかなかった。


「ミカは私から見て、Cランク冒険者並みの力があるわ。カイはもうAランク冒険者並みよ。私よりも魔法の威力は強くて発動も早い。この前の模擬戦だって、魔力を纏っていたらアルに勝ってたんじゃないかしら?」


 2人が驚いたままだったが、セレスはこのままでは話が進まないと思い話を変えることにした。


「そういえば、あの氷塊はどうして赤色になってたのかしら。」

「そもそも、カイは適性魔法が無いんじゃないの?」

「ミカの質問から答えるね。まずこれを見て。」


 そう言うとカイは右手に炎を作り、左手で氷を作り出した。


「さっきの戦闘でも思ったけど、カイは2属性持ちなんだね。」

「ここまでは私も知ってるわ。」

「はい。ここまではアルさんとセレスさんにも見せました。けど、ここからは俺と師匠しか知らない秘密です。今から話す事は、他の人に言うと危険な事になるかもしれません。それでも聞きますか?」

「私は聞きたい。カイのこと気になるから。」

「私も知りたいわ。」


 ミカもセレスも即答した。


「わかりました。他言無用でお願いします。」


 そう言うとカイは炎と氷を消した。少しして、カイは右の手のひらには青色の炎を、左の手のひらには赤色の氷塊を作り出した。


「まずは炎の方に手を近づけてみてください。」


 カイに言われ2人は青色の炎に手を近づけた。


「「冷たい?」」


 2人の声が重なった。2人が疑問に思っていたが、カイは無視して話しを進めた。


「今度は氷の方に手を近づけてください。ただ、絶対に触らないでください。」


 2人は赤色の氷に手を近づけた。


「っ!?熱い?!」

「熱いわね...。まるで炎に手を掲げてるみたい。」

「この氷は炎と熱さは全く変わりません。この炎も氷と同じ冷たさです。師匠は炎と氷、反発する2つの魔力を持ってたからこんなことが出来るのかもしれないと言っていました。」

「でも、魔法が使えるなら適性検査で炎と氷って結果が出てたんじゃ...。」

「ミカは適性検査ってどんな物か知ってる?」

「教会で司祭が検査をする者の魔力を感知してるんじゃなかったけ?」

「一般的にはそう言われているよ。帝国でもそう言われていますか?」

「えぇ、帝国でもそのように言われてるわ。」

「それに間違いがあるんです。適性検査は、あの時に使う魔法陣が魔力を吸収して、どの属性か判別してるそうです。教会で行うのには意味がないそうです。」

「ちょ、ちょっと待って!?それは本当なの...?」

「師匠はそう言ってました。俺もそれが正しいと思ってます。もしも司祭が判別できるのなら、俺の属性が炎と氷だって判断できるはずですから。」

「...確かに司祭が判断できるなら、カイが炎と氷だって判断できると思うわ。 確かに、そうね。」

「はい。教会が嘘をついて適性検査をしている。こんなこと言ったら、聖国を敵にするのと同じことですから。」

「確かに一国を敵に回すのは危なすぎるね...。このことは外では言えないね...。カイが危ないって言うのも分かった。」


 カイは自分の魔力が融合していることは隠した。これこそバレてしまえば危ないからである。もし、国に知られたら軍事利用されるだろう。これだけはカイもラウラも避けたかった。


 3人の空気が悪くなってしまった。この空気を変えるためにカイが口を開いた。


「それより、これからどうしますか?」

「...そうね。もう少しここで休んでから来た道を戻りましょう。ミカは魔力が空っぽだし、カイは怪我をしてるから、ここからは私が戦うわ。」


 そう言われて、カイは自分が怪我をしていることを思い出した。


「そう言えばそうでした...。氷で覆ってたので忘れてました...。でも、こんなでもまだ動けますよ?」

「ダメだよ!その傷結構深いよ...。今は休むべきだよ。」

「その通りよ。これ以上動いたらもっと開くわよ。それに、私が戦ってる間に誰がミカを守るのかしら?」

「分かりました。後ろでおとなしくしてます。」


 談笑しながら3人はもうしばらく休憩した。


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「でも、これどうやって持って帰るんですか?」


 ミカの体調がだいぶ良くなったため、ボス部屋から出ようとしたときにミカが2人に聞いた。


「...そうね。2人が持つには大きすぎるし、私が持つわ。2人はゆっくり後ろをついてきて。」


 そう言いセレスが大盾を掴もうとしたが、カイが止めた。


「良いですよ。俺が持ちます。これがあれば簡単に運べるので。」


 そう言うとカイはズボンのポケットに隠していた魔法道具マジックアイテムを取り出した。


「もしかして、魔法道具マジックアイテムかしら?アイテムを入れておくものなんて珍しいのを持ってるのね。」

「えぇ、師匠から入学祝いで貰いました。けっこういっぱい入るんですよ。」


 カイは大盾とイモータルジェネラルの兜を袋に入れた。


「こんな魔法道具マジックアイテムがあるなんて...。いいなぁ~。」

「ミカもダンジョンを探索してたらいつか見つけられるかもよ?」


 カイとミカが楽しそうに話しているのに嬉しく思っていたセレスだが、さすがにそろそろ戻る方が良いと思い、2人を連れてボス部屋から出た。


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 ここまで読んでくださりありがとうございます。

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