26話
イモータルジェネラルの持つ大剣がミカに向かって振り下ろされそうになっていた。
この光景をカイも見ていた。カイの目の前のはイモータルジェネラルの魔法により作られた黒色の騎士がいた。カイはその騎士を無視して走った。その結果、左腕と右の脇腹を切られ血が流れたが、そんなことを気にせずにミカの所に行こうとした。
カイは自分が持てる最高速度で走った。だがこのままではミカを守ることは不可能だった。カイにはミカを守るためにはどうしたらいいか、一瞬にして答えが出た。
セレスもミカに向かって走っていたが、明らかに追いつくことは不可能だった。ミカは自分が斬り殺されると思い目を固く閉じた。
しかしミカが斬られることは無かった。ミカの前に壁が出来ていた。その壁は氷で出来ていたが色は赤色だった。
「赤色の氷...?」
「ミカ!大丈夫!?」
セレスが近づきミカを抱きしめた。ミカもセレスも何が起きているか分からなかった。カイが2人に近づいて話しかけた。
「怪我は無い?」
「な、無いよ。...これはカイがやったの?」
ミカがカイに聞いた。カイは安堵の顔していた。
「そうだよ。」
「でも、適性魔法が無いって...。」
「後で説明する。セレスさん、ミカと一緒に後ろに退いて下さい。」
セレスはカイに言われた通りにミカを抱きしめたまま壁側に退いた。セレスは感知した魔力によって分かっていた。カイのほうが自分よりも強いことを。
カイは怪我をしている左腕と脇腹を見た。
(腕は大丈夫だけど、脇腹は少し流れすぎかな。)
脇腹の傷の上に手を置き傷口を氷で覆った。
カイは右手を手刀の形にし、肘あたりから指先まで、赤色の氷で覆う。小指側の氷の厚さは薄くなっていた。カイは即席で自分の腕を剣にした。
先ほど作った氷の壁を見てカイはため息を出したくなっていた。
(閉じ込めようともしたんだけどな...。)
カイは赤色の氷壁でミカを守りつつ、イモータルジェネラルを閉じ込めたかったが、イモータルジェネラルは黒い騎士と意識を共有しているため、カイが魔法を使って来たことを察知し、ミカとは反対側に跳んでいた。
カイが氷壁に触れるとそこには何もなかったかの様に氷壁が無くなった。
カイとイモータルジェネラル達の戦闘が再開された。
カイはすぐに黒い騎士がいるところまで地面を凍らせ、騎士が動けないように足の付け根まで氷で覆った。この時の氷は普通の色になっていた。カイはイモータルジェネラルの目の前に歩いて移動した。イモータルジェネラルは先程までとカイの雰囲気が違うことでその場から動けなくなっていた。だが、敵が目の前に来たことで再び動き始めた。イモータルジェネラルがカイを斬りつけるが、カイは右腕で受け止める。カイが剣を受け止めた瞬間にイモータルジェネラルの右腕が凍りついた。カイが右腕を引くとイモータルジェネラルの右腕部分と剣が氷と一緒に砕けた。カイは右腕を引くと同時に左手をイモータルジェネラルの腹部に触れる。そして、左手に炎を作り出し、イモータルジェネラルの鎧を溶かし始めた。
イモータルジェネラルは鎧を燃やされたことで後ろに下がろうとした。だが、下半身が凍り付いていたため動けなかった。カイの右腕とイモータルジェネラルの剣がぶつかったときにカイが下半身を凍り付かせていたのだ。イモータルジェネラルが作った隙をカイは見逃すことは無く、右手の氷を一瞬で溶かしてから跳躍した。左手で兜を掴み、再度右手を覆った氷で目を貫いた。その氷は先程よりも先が鋭く、刺突に特化した作りだった。
目を貫いた瞬間、イモータルジェネラルの鎧がガシャンと音をたてて崩れた。
倒したことを確認したカイは右手を元に戻し、イモータルジェネラルの兜と鎧の残ったところ、盾を回収してミカとセレスがいるところに向かった。
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ミカとセレスは目の前で戦っているカイを見ていた。ミカは自分の実力不足に悔しく思っていた。カイは自分と同い年なのに。カイは自分を守るために怪我をしてしまった。自分と2人の時は苦戦していたのに、今は敵を圧倒している。それらの事実にミカはカイから目を背けたくなった。
(ダメ!カイの戦いをしっかり見ないと!)
ここで目を背けてしまえば自分は強くなれない。そう思いカイの1つ1つの行動を見逃さないようにしていた。
そんなミカをセレスは嬉しそうに見ていた。
(この子は強くなれるわ。それに、私たちが知らないカイの秘密もこの子なら聞いて支えることが出来そうね。)
セレスはそんなことを思っていた。
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カイがミカとセレスのいるところに着いた。
「助けてくれてありがとう。」
開口一番、ミカが笑顔でカイにお礼を言った。その笑顔に照れてしまいカイはミカの顔を見ることが出来なかった。
「顔を赤くしてるわ。」
「ホントだ!」
そう言うとミカとセレスは嬉しそうな顔をしていた。
「そ、それよりも、セレスさんイモータルジェネラルの素材ってどこなんですか?」
「基本は鎧よ。でも、この状態じゃ素材にならないわね...。」
「...すみません。」
イモータルジェネラルの鎧はボロボロになっていた。
右腕の部分はカイが砕いたため無くなり、腹部も溶けて無くなっていた。
「でも、イモータルジェネラルの中でも珍しい素材ががあるわ。レア素材と言われるものね。それはイモータルジェネラルの使っていた武器と兜よ。武器は戦闘中にぶつかり合うから基本使い物にならないわ。兜なんて叩き潰すことが基本だから素材として残らないわ。」
そう言うと、セレスはイモータルジェネラルの兜を指さした。
「この兜と、少し傷がついてるけど盾は売れるわよ。兜に関しては傷1つ無いから高値で売れるわね。」
「素材の報酬はカイとミカの2人で分けるのかしら?」
「はい。そのつもりです。」
「待って!私は何もしてないから要らないよ?!」
ミカが報酬は要らないと言い始めたためカイはどうしようか考えているとセレスが代わりに答えた。
「ミカもイモータルジェネラルと戦ったんだから報酬は受け取るべきよ。」
「...分かりました。報酬受け取ります。」
報酬の問題も解決したため、カイはミカとセレスの近くに腰を下した。
「そういえば、ボス部屋に居続けて大丈夫なんですか?」
疑問に思ったミカがセレスに質問した。
「大丈夫よ。ボス部屋は入って来た扉が開くか、先に進むための扉を開けない限りボスは再出現しないわ。あまりにも長時間いすぎると入って来た扉が開くの。その状態でもボス部屋に居続けるともう一度ボスと戦うことになるわ。」
「もう一回イモータルジェネラルと戦うんですか...。私は万全の状態だったとしても勝てそうに無いんですが...。」
「大丈夫よ。普通のボスはオークファイターだから。」
セレスの言葉にカイとミカは驚いてしまった。
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ここまで読んでくださりありがとうございます。
どうして氷が赤かったのか...
次回に続きます。
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