22話

 本日公開分の2話目です。この後19時に23話を公開します。

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 ダンジョンの前には頑丈そうな門があった。そこで入るための検問しているようだった。


「これからダンジョンに入る。ここからはいつ死んでもおかしくない世界になる。」


 アルドレッドが生徒達に聞こえるように言った。全員が気を引き締めたような顔をした。


「入る順番を言うぞ。1番初めはセレスのグループ。2番目は俺のグループ。3番目に入るのは9人のグループだ。9人のグループにはそろそろ冒険者が来るはずだ。」


 同行する冒険者はここで合流する予定になっていた。


「その冒険者が来るまで休憩とする。各々しっかり休んでくれ。」


 皆が思い思いに休憩を取り始めた。


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「ねぇカイ。」

「ん?ミカ。どうしたの?」

「カイは家族に酷い扱いをされて辛くなかった...?」

「...うーん。俺の場合は師匠がいたから。師匠がいたから辛くなかったかな。それに優しい兄上もいたから。」

「そっか。私ね、姉上とか兄上に何言われても辛くないんだ。だけどお母さんには辛そうに見えてるみたいで。そんな私を見てお母さんが辛そうにするの...。」


カイはミカに声をかけることが出来なかった。


「だから私はAランク冒険者になってお母さんに『私は強くなってなりたいものになったよ!だからもう大丈夫!!』って言いたい。お母さんを安心させたい。だから私に強くなる方法を教えてください。」


 ミカがカイに頭を下げた。カイにはミカが真剣に強くなりたがっていることはわかった。

 だが、カイが魔法を使えることは隠さなければならないことだ。一緒にいれば、いつか魔法を使うところを見られるかもしれない。そうなればカイは言い訳する術が無い。


 少し考えたが、もう「守り人の牙」にはばれていること。それにミカにばれてもミカは他の人に言わないと思ったため、カイはミカの頼みを聞くことにした。


「...分かった。でも俺が教えられるのは近接格闘のことだけだからね?」

「うーん...。わかった!ありがとうカイ」


 カイはミカが最初に悩んだことに疑問に思ったが、同行する冒険者が着いて休憩が終了したため聞くことが出来なかった。


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「よし、これからダンジョンに入るわよ。」


 セレスがカイとミカに言い、2人を連れて検問所に向かった。


「学園の冒険者だな。気を付けるように。」


 兵士にそれだけ言われて、カイ達はダンジョンにつながる階段を下りた。

 階段を下りていくと、広いところに出た。カイとミカはここがダンジョンだと再認識し警戒度を上げた。ダンジョンの中は普通の洞窟と変わらない見た目だが、大きく違うのは壁が程良く光っているところだった。

 戦闘がいつ起こっても良いように、それとミカがモンスターを倒すのが初めてということで最初の立ち位置は、前衛がカイ、中衛をミカが担当していた。セレスは危なくなるまで手を出さないと2人に言っていた。


「セレスさん、どうして壁が光ってるんですか?」

「ここのダンジョンは光っているけど、場所によっては光って無いわ。それに壁の見た目が洞窟とは全く違うところもあるわ。ダンジョンはわからないことだらけなのよ。」


 そんな話をしていると、目の前にモンスターが現れた。初めてのダンジョンで初遭遇したモンスターはスライムだった。


「ミカどうする?」

「私にやらせてもらって良い?」

「分かった。」


 そういうとカイは下がり、ミカが前に出た。そして、ミカが右手を前に出すと雷の塊を生み出した。サンダーボールだ。ミカが魔法を放つと、一瞬でスライムを貫いた。


「うん。私でもしっかり戦える。」

「お疲れ。」


 カイがミカに近づき話しかけた。


「ありがとう。でも、これだとあんまり戦闘した気にはならないね。」

「いきなり、強いのが出てこられても俺は困るけど...。」


 そう言うとミカは、さっきまでスライムがいたところに近づいた。


「スライムは何も残らないんだね。」

「スライムは核を貫かないと倒せないわ。それ以外は液体で出来てるの。そのせいで倒した後は何も残らない。ミカ、初戦闘はどうだったかしら?」

「モンスターを目の前にしたら動け無いんじゃないかと思ってたので、しっかり動けて良かったです。」

「それは良かったわ。次はカイね。カイが戦闘を終えたら今日の目的を話すわ。」


 そう言い3人はまた進みだした。


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 今度のモンスターは緑色の肌をしたモンスターだった。


(あれはゴブリン。スライムと違って音で気づかれるよね。)


 カイはゴブリンを発見したため、止まり2人を見た。


「ゴブリン発見。倒してくる。」ヒソヒソ


 ミカが頷いたのを確認して、カイは腰に下げているアイアンソードを抜いた。

 1回だけ深呼吸をして、ゴブリンに接近した。


「グギャァァァァアア!」


 ゴブリンはカイが接近したことに気づき気持ちの悪い奇声を上げたが、カイはかまわずゴブリンの首を斬りつけた。ゴブリンの胴体は緑色の血液を出しながら倒れた。


「お疲れカイ。」


 戦闘が終わったことに気づいたミカが後ろから近付いてきた。


「ありがとう。悪いんだけど、あのゴブリンに魔法を撃って貰って良い?」

「何で魔法を撃たないといけないの?」

「ゴブリンから取れる素材は無いんだよ。取るのは討伐証明のための耳だけど、今回は授業で来てるし、臨時パーティーだから取らなくて良いと思う。モンスターの死骸は燃やしとかないと他のモンスターが近づいてくる可能性があるから、雷を当てて燃やしてほしい。」

「その必要は無いわよ。少し見てて。」


 セレスに言われカイとミカは休憩がてらゴブリンの死骸を見ていた。5分程ゴブリンの死骸を見ていたら、ゴブリンの死骸が地面に飲まれ始めた。


「セレスさん!?あれって...?」

「あれはダンジョンの仕様よ。ダンジョンは魔力を持っていた死骸を吸収するのよ。一説によれば、ダンジョンがモンスターを生み出すために死骸を吸収しているとされているわ。それはモンスターだけじゃなくて、人間も吸収されるわ。」

「死体をですか...。つまり、ダンジョン内で死んでしまったら何も残らないんですね...。」


 カイは空気が暗くならないように話を変えることにした。


「そう言えば、俺たちの今日の目的って何ですか?」

「カイとミカはダンジョンについて知っていることはあるかしら?」

「えーと、確か何階層ごとに強力な敵がいるって師匠が言ってました。」

「その通りよ。このダンジョンだったら5階層ごとにボスがいるわ。あなたたちには5階層のボスを倒して貰うわ。」


 カイとミカのダンジョン攻略はいきなりボス攻略から始まるようだ。


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 ここまで読んでくださってありがとうございます。

 この後19時に23話を公開します。

 23話は3階層まで行きます!

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