19話


「なんで君の体の中に魔力があるのかしら?」


 セレスに言われた言葉にカイは一瞬理解できなかった。


「隠してたようね。私は魔力を感知することが出来るの。カイからは微量だけど確かに魔力を感じるわ。」

「...魔力感知がとても上手いんですね。セレスさんも魔力感知者だって思いませんでした。ばれたら仕方ないですね。手を見ててください。」


 カイの言う「セレスさん」と言うのに疑問に思ったが、アルドレッドとセレスはカイが言うようにカイの両手を見た。カイは右手から炎を出し、左手で氷の塊を作った。


「うぉ!?2つ持ちか!?それはスゲーな!!」

「...魔力操作が上手いわね。魔力の無駄なロスがほとんど無いわ。カイはすごい魔法使いになれるわね。だけど、炎と氷か...。聞いたことが無いわ。」

「師匠が言うには、炎と氷の魔力を持っている人はいないそうです。僕は生まれながらなぜか炎と氷の魔力を持ってました。」


カイは念のため、ラウラから魔力を貰ったことを隠した。


「そんなことが...。でも、なんで使えないなんて嘘を言うのかしら?」

「そうだぜ。使えることを言ったら面倒なことも減るだろ?」

「いえ、僕に適性魔法が無いことは知られてますから。あるって言ったら問題が起きますよ。後ろ盾がない状況で言うのは危ないです。」

「それもそうね...。」

「カイ、お前学園を卒業したら帝国に来い。あそこならここより生きやすい。」


 アルドレットが突然言い出した。

 確かに、帝国のほうが冒険者として生きていくなら生きやすいだろう。帝国は王国よりもたくさんのダンジョンがある。そのため、冒険者にとっては稼ぎやすかったりする。


「俺たちが普段いるのも帝国だからな。こっちに来たのは3ヵ月くらい前だが、正直、冒険者には生きづらい国だ。差別意識が強すぎる。」

「そんなにですか?」

「そうね。私たちはこの3ヵ月いろいろな依頼を受けてきたわ。貴族から来る依頼もね。帝国のほうが冒険者の態度には寛容なのは確かね。それに、貴族の依頼にしては報酬が安かったわ。」

「あー。あれはケチだよな。見返りが釣り合ってない。それに平民をバカにしすぎだ。「お前らにはこの位が丁度いい。」なんて言いやがった。」

「...それは酷いですね。」

「他の奴に聞いてみたらそれが普通とか言うしな。」

「アル、もうそれ以上言わないで。カイ、私たちは学園での一年間の教師期間が終わったら帝国に帰る予定よ。もし、帝国に来るようなら歓迎するわ。学園にいる間考えておいて。」

「わかりました。」


 この後も、カイはアルドレッド達に冒険者のことを聞いたりした。話している中で、今日にも冒険者登録をした方が良いと言われたため、カイは冒険者ギルドに向かった。


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(冒険者ギルドってでかいんだな。)


 率直な感想だった。そう思いながら、木の扉を押して入った。

 入った瞬間に冒険者たちがカイのことを見たが、カイは気にした様子もなく受付に向かった。


「冒険者登録ってできますか?」

「あ、学生さんですね。学生証を見せてもらっていいですか?」

「はい。」


 そう言って、カイは学生証を手渡した。


「冒険者カードを作っている間に、ギルドについて簡単に説明させていただきます。」


 内容はこうだった。

 ・冒険者ギルドとは、魔国以外すべてにあり、情報を共有していること。

 ・依頼を受ける場合は、依頼ボードから依頼書を受付に持ってくること。

 ・依頼書には、依頼内容・報酬・依頼を受けるときの注意、が書いてあること。

 ・冒険者にはランクがあって、上からA~Gまであること。

 ・ランクによって受けられる依頼が変わること。

 ・ランクを上げるには、依頼を達成するか、素材カウンターに素材を持ちこむこと。

 ・Dランク以上になるには、加えて試験を受ける必要があること。


「以上がギルドの説明になります。質問など、ありますか。」

「1つ聞きたいのですが。」

「はい、なんでしょうか?」

「なんでこんなに見られてるのでしょうか...?」

「あー、それはですね...。先ほどまで数人の学生さんが登録に来ていたのですが、酔っぱらった冒険者が1人の女子生徒に絡んでしまって...。その生徒さんは冒険者登録を終わらせていたため決闘を受け入れてしまって...。今まさにギルドにある練習場で決闘が起きるところなんです。」

「止めなくていいんですか?」

「ギルド職員は冒険者同士が納得した状態の決闘を止めることが出来ないのです...。」

「そうなんですか。見に行っても良いですか?」

「は、はい。練習場には冒険者は出入り自由ですから、見に行っても大丈夫ですよ。」


 見に行っても良いか聞いたとき、職員は驚いていたが、カイに練習場の場所を丁寧に教えた。


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 カイが練習場で見たものは、衝撃的な物だった。


(やっぱりあの子。勝ったんだ。やっぱり強そうだな。)


 戦っていた生徒はミカ=アルゲーノスだった。そしてそこにあった光景は、男はうつ伏せに倒れていて、女子生徒は槍の石突部分を地面に突き立てて決闘が終わったところだった。


 カイとミカの目が合った。カイはそのまま見続けていたが、ミカは興味がなさそうに目を逸らした。


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 次回、また模擬戦をします!

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