18話


 入学試験が終わってから2週間。ついに入学式が行われる日となった。生徒はそれぞれ入学式が行われる大きな議事堂に集まっていた。入学式が始まり、学年代表になった女子生徒が話をする順番となった。カイはその女子生徒を見たとき魔力が体内で動いていることに気づいた。


(体内で魔力操作をしてる。すごい動きが滑らかで上手い。でも、滑らかなだけで速さが足りない...。もっと早く動かせるようになれば、魔法の発動が早くなりそう。)


 カイが考え事をしていたら、学園長の話になったため考えるのをやめた。


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 入学式が終わり、生徒たちはそれぞれの教室にいた。カイがいるのはFクラスだった。教師が入ってきて教壇に立った。


「入学おめでとう。私がこのクラスの担任だ。授業で会う者もいるだろうと思う。今から前期の説明をする。しっかりと聞くように。」


 担任から言われたことをまとめるとこうだ。


 ・受ける授業は自分で選ぶこと。複数の授業を受けることも可能。

 ・月に一度クラスで集まりダンジョンに潜ること。

 ・2ヵ月後にそれぞれの授業で試験を行う。

 ・試験後、1ヵ月の長期休みを挟むこと。

 ・中期には学内対抗戦があること。


(授業か。何があるかな?)


 一年生が受けられる授業は以下の物だった。


 ・世界史

 ・王国史

 ・算術

 ・礼儀作法

 ・魔法基礎学

 ・戦闘訓練

 ・武術訓練

 ・冒険者体験


(この中だったら冒険者体験だな。まずは行ってみよう。)


 今日は担任からの説明だけで終わった。


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 次の日、カイはさっそく冒険者体験の授業の説明を聞きに来ていた。50人近く座れる教室が半分ほど埋まった状況だった。カイは他の生徒を見て、1人だけ見たことのある生徒がいた。


(あの子...。あの子もこの授業を受けるのかな?)


 その女子生徒は入学式で、魔力操作をしていた生徒だった。今も近くにいる生徒と話しながら魔力操作をしていた。女子生徒の名はミカ=アルゲーノス。カイの他に唯一模擬戦で試験官を倒した生徒だった。


 授業が始まる時間になり、ガタイの良い大男とローブを着た女性が入ってきた。カイはその男を見たことがあった。


「これから説明を始めるぞ。全員静かになれ。俺がこの授業を担当する「守り人の牙」のリーダー、アルドレッドだ。こっちにいるのが」

「「守り人の牙」のセレスよ。」


 教師として現れた大男は王都に着いた時に話しかけてきた冒険者だった。アルドレッドはカイと目が合った瞬間、口元だけ嬉しそうに笑っていた。


(アルドレッドさん、絶対に俺が驚いてるのに楽しんでるよ。)


 カイは、自分が知っている人が担任で嬉しそうに笑っていることに気づいていなかった。


「さて、この授業に関して説明する前に、なぜ俺たちが担当するか説明する。毎年この授業は教師ではなく冒険者が担当することになっている。より冒険者のことを知るためにこのような形を取っている。」


 説明をする前に、他の生徒が疑問に思っている顔をしていたためか、アルドレッドは自分たちが担当する理由を話した。1部の生徒は不満そうな顔をしていたが、大半の生徒は現役の冒険者が担当するということに嬉しそうな顔をしていた。


「さて、今日は説明だけだ。明日の授業では、俺と模擬戦をしてもらう。お前たちがこの授業を受けるのなら、3回目の授業までにしてもらいたいことがある。それは冒険者登録だ。学生証を出せば無料で冒険者登録をすることが出来る。」

「なぜ冒険者登録をしないといけないんでしょうか?」

「お前たちは冒険者が依頼以外に何で稼いでると思う?」

「ダンジョンに潜ってモンスターを倒し、その素材を売って。ですか?」


 ダンジョンとは、モンスターたちの巣窟で何層にもわたって存在している。分かっていることは


・複数個所にある。

・放置していたらモンスターたちが出てくる。

・たまにダンジョン内に箱があり、その中に魔法道具マジックアイテムがある。


と言うことだけだった。そのため、ダンジョンに潜りモンスターが出てこないようにする。それが冒険者の仕事の中で一番重要な事であった。


「その通りだ。冒険者はダンジョンに潜らなければならない。君たちにもダンジョンに潜る体験をしてもらう。ダンジョンに潜る方法は2つある。1つは、国から許可を貰う。しかし、これは問題が起きたときか、学園のクラス単位でしか出ることは無い。もう1つは、冒険者であること。冒険者はダンジョンに入る前に、入り口にいる兵士に冒険者カードを見せることでダンジョンに潜ることが出来る。」

「3回目の授業ではダンジョンに潜る予定よ。複数のグループに分かれてね。もちろん、冒険者が最低でも1人は同行するから安心して。」

「この授業は国からの許可でダンジョンに入ることは出来ないのでしょうか?」

「出来るか聞いてみたが、「結局冒険者になるのだから早いうちからなっても問題ない。」と言う理由で許可は下りないそうだ。」

「他に質問はあるか?」

「潜るグループはどうやって決めるのですか?」

「模擬戦で決めることにする。実力が近いの同士で組んで貰う。」


 その後も、質問をする生徒がいたが、質問のほとんどは冒険者に関する物がほとんどだった。


「さて、他に質問はあるか?無ければこれで授業は終了とする。」


 質問をしようとする生徒は他にいなかった。


「では、これで終わりとする。そこの男子生徒だけ残ってくれ。暇な奴はこの後に冒険者登録をしに行くことをオススメするぞ。」


 カイだけアルドレッドに残るように言われてしまった。カイだけ教壇に近づくように歩いて行き、他の生徒は教室から出ていった。


「よぉカイ!!久しぶりだな!!」

「お久しぶりです。アルドレッドさん!」

「おいおい、俺のことはアルでいいぞ?」

「アル、この子が前に言っていた子かしら?」

「おう!!カイ、こいつは俺とパーティーを組んでいるセレスだ。」

「セレスよ。よろしくね。何かあったら私たちを頼ってね。」

「ありがとうございます、セレスさん。」

「ところでカイ。入学試験の8日目の模擬戦で冒険者を倒した生徒のことを知ってるか?」

「...イエ、シリマセン。」

「カイは嘘をつくのが下手ね。」


 アルドレッドの質問に対し、嘘をついたカイだったが、セレスに簡単にばれてしまった。


「ハッハッハ!!倒したのはお前だったか!!明日の模擬戦は楽しそうだ!!」

「はしゃぎ過ぎないでよ?止めるのは私なんだから。」


 しばらくの間カイ達は入学試験で何があったか楽しく話していたが、カイのひと言が地雷となった。


「ほんと、適性魔法が無いってだけで突っかかってくる人がいて大変でしたよ。」

「...適性魔法が無い?」

「はい。適性検査で適正魔法が無いって言われました。」

「なんで君の体の中に魔力があるのかしら?」


 セレスのひと言にカイの心臓が飛び出そうになった。


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 読んでいただきありがとうございました。

 カイは魔力を持っていることがばれてしまった。どうして!?

 次回に続く...!?

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