第10話
カイは目を覚ました。目の前にラウラの顔があった。奥には天井が見えていた。
ラウラに膝枕をされていた。カイは周りの状況を冷静に判断して、目の前にいるラウラに話しかけた。
「久しぶり」
「ん、久しぶりカイ」
カイとラウラは2人で笑いあってしまった。
「ラウラ、氷の魔力を渡すなんて一言も言ってないじゃん」
ひとしきり笑った後、しまっていた記憶を思い出したカイはラウラに話しかけていた。
「魔力を渡すとは言った」
「氷とは言ってないじゃん…」
カイは1つ1つゆっくり思い出し、ラウラが過去に言ったことに対して質問していた。
「ところでラウラお姉さん?持っている適性魔法と相性の良い人がわかる
ラウラに笑顔で聞いた。何も知らない人が見たら楽しそうに見えるが、ラウラにはカイの笑顔の後ろに怒った鬼がいるように感じていた。
「あ、ある。あの小箱…」
「あれ?あれは記憶を一時的にしまう物だって言ってませんでしたっけ?」
「…ある。世界中を探せば…」
ラウラはカイが怖すぎて涙目になり、最後のほうは声が小さくなっていった。
「ラウラお姉さん、本当は?」
「…ごめんなさい。魔力が共鳴してると言っても信じてもらえないと思い嘘つきました」
ラウラは泣かないように頑張っているが、泣き出すのはもう時間の問題だった。
「もう怒ってないよ」
そうカイが言った瞬間、ラウラは顔を上げ、怒っていないかを確認するため顔を見る。
「ところで、炎の魔力を持ってたのに何で氷の魔力が共鳴したの?」
「それはわからない。でも、確実に共鳴していた。じゃなかったら、反発してた時に体中を壊しきってたと思う。膨大な魔力のぶつかり合いだった。最悪死んでた。魔力器官の損傷程度で収まってカイはラッキーだった。」
自分がもしかしたら死んでいたという事実にカイはゾッとした。
「そういえば、魔力を渡された後の記憶が無いんだけど…。どうゆうこと?」
「カイはその後すぐに気絶したから記憶が無くて当然。渡した後何があったか今から話す」
そして、ラウラは話し始めた。体内で魔力が反発して体を壊していたこと。それを止めるために魔力を混ぜ合わせたこと。その過程で自分の魔力をカイの体内に入れたため、カイは今ラウラの魔力を感じ取りやすいこと。魔力器官を損傷していたため、記憶を消して魔力感じ取っていたことを忘れさせたことなど、その後にあったことを話した。
その話を聞いた後、カイは疑問に思っていた。
「俺はラウラから魔力を受けっとたんだよね?」
「うん」
「なら、なんで適性検査の時に適性が無いと言われたの?」
「それは、しょうがない」
「しょうがない?」
「適性検査は、炎・水・風・緑・雷・地・氷・光・闇・無の10種類、どれに適性があるか出す物。じゃあ、どうやって判別してると思う?」
「それは…。司祭が魔法陣を通して感知して…」
「じゃあ、どうやって感知してると思う?」
「それは…」
カイは答えられなかった。
司祭が魔法陣を通して感知して、感知したものを、紙に円や円の色で結果を出している。そのことしか知らなかった。結果が円で出るのが当たり前だと思っていた。カイが悩んでいるとラウラが答えを言い出した。
「あれは魔法陣が手を置いたものから魔力を少し吸い上げる。その魔力がどの属性かで結果を出してるだけ」
「ん?司祭は関係ない?」
「関係ない。あの検査で必要なのは専用の魔法陣が書かれた紙だけ。それ以外は要らない」
「…13歳に検査をする理由は?」
「たぶん考える力が無い状態で魔法を使うと危ないから。実際に子供が魔法で事故を起こした例はたくさん聞いた」
「適性検査を受けた後に魔力を感じ取れるようになる理由は?」
「吸われることで魔力が動く感覚をつかめるから」
「…なんで教会でやらされたの?」
「わからない。私が検査をしたときはどこでもできたから」
知らなかった。適性検査は教会で司祭の立ち合いがある時でしかできないと教えられてきた。どうしてそんな嘘をついているのか、カイとラウラには想像もできなかった。
「適性検査をどこでもできるのはわかった。けど、それは俺の結果が出なかったのに関係は無いんじゃないの?」
「うん。関係ない」
頭を抱えてしまった。今まで当たり前だと思っていたことをラウラは真顔で言ったのだ。しかし、ラウラはカイを置いて話し始めた。
「適性検査は魔法陣を使ってその人の魔力の属性を目で見えるようにしたもの。ここまでは良い?」
「いろいろ混乱してるけど…。わかった…」
「適性検査で判別できるのは10種類の魔力だけ、つまり魔力を持ってないか、10種類以外の魔力を持ってる人には何もでない」
「待って。魔力を持ってない人がいることは聞いたことあるよ。俺もそれだと思ったもん。でも10種類以外の魔力を持っている人なんているの…?」
「いない。私は世界を旅したことあるけど、聞いたことが無い」
「じゃあなんで…」
冷静になりかけていたカイの頭の中は、また混乱していた。
しかし、その状況でもラウラは話し続けた。
「カイは炎の魔力と氷の魔力が混ざってる。それはもう別物。炎の魔力でも氷の魔力でもない。だけど炎と氷の魔法は使える。だから、適性無しって言われたのは間違い」
カイの頭の中はパンクしていた。パニックになっていた。だからか、ラウラがまだ話していたがカイの耳には届かなかった。
「えっ、適正無しって言われたの間違い!?」
気づけば叫んでいた。
ここから、カイとラウラはどうしていくのか。
今後の展開を楽しみにしていただけたら幸いです。
1章完結まであと2話…
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