第9話
2人はさっそく魔力を渡すことを始めた。
「カイ、今から魔力を流して渡す。渡した後体調とか教えて」
「わかった!」
紙の端の片方をカイが、もう片方をライラが掴んだ。
ライラはさっそくカイに魔力を流し始めた。カイは流れ始めた瞬間に バチッ と感じたがそれも一瞬だったため気になっていなかった。ライラが流し始めて少しして、カイは魔力と言うものを感じ始めていた。
(なんだろう…。すごい不思議な感覚…。でも力が湧いてくる…!)
これで強くなれる。レイに自慢して褒めてもらえる。そう思い嬉しく思っていた時、ラウラが紙の端を離した。
「もう渡し終わった。体調どう?しんどいとか無い?」
「大丈夫!なんか不思議な感じ。力が湧き出る感じがする!」
「それが魔力。最初は違和感があると思うけど、直になじんでいく」
「僕、これで強くなれたんだよね!」
カイが嬉しそうに聞くが、ラウラは首を横に振る。
「それはカイ次第。カイが努力をすれば強くなれる」
「そっか!!僕頑張るよ!」
そう言った瞬間、カイの意識は途切れた。
カイが倒れた。自分が親友から魔力を渡されたとき、自分は倒れなかったためラウラは酷く驚いた。何が起きているかわからなかったが、カイに話しかけた。
「カイ!大丈夫!?返事して!」
しかし、カイが返事を返すことは無く意識を失ったままだ。ラウラはカイが気絶した原因は魔力を渡したことしかないため、すぐに魔力を見ることができる眼鏡型の
「なにこれ!?っ!!」
不意に言葉が出て、大事なことを忘れていたと思い出した。
カイの体内で、赤色の魔力と青色の魔力が反発していたのだ。しかも膨大な魔力同士が。ラウラが渡した氷の魔力は確かに多かった。親友は常人の1.5倍近くも魔力を持っていたのである。その魔力をそのまま渡したのだからカイの魔力は大幅に多くなる。それは予想していた。しかし、カイ自身もその魔力に負けない量の魔力を持っていた。カイが訂正検査を受けていないのに手から炎を出せたのは、これが原因だった。
そして、ラウラが思い出した大事な事とは『相反した魔力は反発する』ことだった。ラウラは氷の魔力と共鳴した人が出て来たことに嬉しく思いそのことを忘れてしまっていた。
炎と氷。この2つが反発して、カイの体を内側から壊そうとしていた。
(不味い!?このままだとカイが死んじゃう!)
ラウラは焦っていた。このまま放置していては魔力がカイの体を壊しつくし、カイは死んでしまう。ラウラはカイを死なせたくなかった。親友の魔力を持っている。それもあったかもしれない。しかし、そんなことよりも、少しの時間だがラウラはカイといろいろことを話し、目を輝かせながら質問をしてくるカイに愛着がわいていたのだ。
だから、ラウラは荒業を使うことにした。
(私の魔力をカイの中に入れて、2つの魔力をくっつける)
荒業だった。普通はできないことだ。反発する2つをくっつけることなど常人には不可能なことだ。
しかし、ラウラは常人ではない。今は森の中で暮らしているが、森に来る前ラウラは冒険者をしていた。世界中の冒険者の中でもトップの実力を持っていて、さまざまな難関を親友とともに超えてきた。それゆえに彼女は魔女と呼ばれているのだ。その実力は伊達では無かった。
ラウラは自分の魔力を使い、カイの中にある2つの魔力をつなぎ合わせた。
しかも、今後もう体内で魔力が反発しないように混ぜ合わせ1つの魔力とした。
カイの魔力を混ぜ合わせた後、ラウラはまだ問題があるかもしれないためカイの魔力を見ていた。だが、問題がもう起きないと判断できたため一息ついていた。
(何あの魔力の量…。カイもあの子も多すぎ。疲れた…)
ラウラ自身も常人の1.2~1.3倍の魔力を持っているが、魔力を混ぜるために7割も使い果たしていたのだ。
(でも、カイは当分の間魔法使えない…。魔力器官がボロボロ…。これは待つしかない)
魔力器官とは、魔力を体内から外に出すときに通る道のことであり、そこに損傷があると魔法を使うことが難しくなり、損傷の度合いによっては魔法が使えなくなってしまう。この損傷は自然に治るが、損傷している時に魔法を使うとより損傷してしまう。
ラウラは冒険者としてたくさんの人を見てきており、魔法の酷使で魔力器官が傷ついている人を多く見てきたが、その中でもダントツで酷い状態になっていた。
(魔力感じ始めてた…。どうしよう…)
カイが起きたら絶対に魔法を使うだろう。注意すれば使わないかもしれないが絶対に使わないという保証は無かった。
どうしようかと悩み周りを見渡していると、あるものが目の前にあった。ラウラは閃いてしまった。
(忘れててもらおう。カイが無理やり魔法使うとも限らないし)
記憶をしまうことができる
ラウラはすぐに箱を開け、カイの魔法に関する記憶と自分に関する記憶を箱の中に入れて閉じた。
(この損傷具合だとたぶん3年で完治する…3年後に会いに行こう)
ラウラはカイに一度謝り、背負った状態で森の入り口まで連れていき木の幹に背中を預ける状態寝かせ、近くにモンスターがいないか確認しながらカイが起きるのを待っていた。
そして、カイが目覚め屋敷に帰っていくのを見届けてからラウラは森の中に入っていった。
9話読んでいただきありがとうございます!
ここまでがカイとラウラの間にあった過去の話しとなります。
前の話までに説明できなかったのですが、ラウラがたくさんの
また、誰がどの適性を持っているのか、カイとラウラがどんな
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