第7話
(何を言ってるんだ…?炎の魔力があった…?適性検査で適性魔法が無いと言われたのに…?)
カイはラウラが言ったことを考えていると
「これ以上説明しても今の状態じゃ無駄」
ラウラが言ってきた。カイはここまで話して無責任に無駄というラウラに対し怒りを感じた。
「無駄ってなんだよ!!記憶消したのも、氷の魔力を渡したのもラウラがしたことじゃん!!」
「氷の魔力を渡したのは渡すときに許可取った」
「記憶が無かったら意味無いよ!!」
カイは感情に任せて怒鳴ってしまった。良くなかったと思いラウラのほうを見るが、ラウラは真っすぐな瞳でカイのことを見ていた。
「これ以上話しても無駄だと言ったのは記憶が無いから。なら記憶を戻せばいい」
「…戻す?」
消した記憶を戻せるとは思っていなかったため、カイは驚いた。
「言ったはず。この箱は記憶をしまう物。この箱をカイが開けるだけで戻る」
それを聞いてより驚いた。カイは手を震わせながら小箱の上に手を置いた。
「戻るの…?」
「戻る」
「開けるよ」
「ん」
そしてカイは箱を開けた。
カイが9歳の頃だった。カイは既に酷い扱いを受けていた。家族や執事、メイドからは無視。唯一話してくれるのは兄のレイだけ。そのレイも人目があるときは話しかけられない。レイには「それで良いのか?」と聞かれたが、大好きなレイが自分と同じ扱いを受けるほうが嫌だったからレイに頼み話しかけないようにしてもらった。そんなカイでも家にいて嬉しいことがあった。それは本を読むことだった。いろいろな知らない知識を教えてくれて、レイと話す内容もくれる。カイは本をどんどん読んでいった。その中でもお気に入りの本があった。それは『冒険者が魔法を駆使してモンスターやドラゴンを倒す』という物語の絵本だった。その本を読んで、カイは自分も魔法を使いたい。魔法を使いモンスターを倒したいと思うようになった。そして、冒険者になりたいと思った。それからカイはその本を何回も何回も読んでいた。
初めてその絵本を読んでから数日たったある夜、カイは自分も魔法が使えないかと気になっていた。カイは興味本位に絵本の冒険者を真似て右の手のひらから炎が出ないかと試した。いや、試してしまった。
ボゥ
そんな音が鳴ったように感じた。手のひらから大の大人の拳並みの炎が出た。部屋は一瞬で明るくなり、カイは自分が出した炎に見とれていたが、すぐにまずいと思った。もし燃え移ったら火事になってしまう。カイは消えろと念じた。すると炎はパッと消えた。カイは興奮していた。明日、朝一でレイに報告しよう「自分には魔法の才能がある!」と。そう思いカイは寝た。
カイは朝起きてレイに炎を出したことを言おうと思ったが、レイは朝から稽古があり、父親たちと一緒にいて話しかけることができなかった。話しかけられず、どうしようかと思ったが、カイは魔法の腕を磨いてレイを驚かせようと思った。その時、レイが前に言っていたことを思い出した。
「カイ知ってるか?家の近くにあるあの森に魔女がいるらしいぞ!」
「魔女?レイ兄上、魔女ってなに~?」
「魔女ってのはな!魔法を使うのが上手い女の人のことだ!」
「そんな人がいるの!!魔法が使えるようになったら会いに行きたいね!」
カイはこの会話を思い出し、森に向かって歩き出していた。
森に入って1~2時間経過したが、魔女に会うことは無かった。カイは魔女に会いたい一心で歩いていたため迷い帰れなくなっていた。
そんな時、モンスターと遭遇してしまった。ウサギに角が生えたホーンラビットだった。ホーンラビットはそんなに強くない魔物だが子供が相手をする場合十分脅威になりえる相手だった。
「く、来るな!」
カイは尻餅をついてしまった。ホーンラビットはなにかしてこないか警戒していたが相手が子供だったため、気にせず角をいかした突進してきた。カイは怖くなり目を閉じて、ホーンラビットの角が当たるのを待つだけになってしまった。
その時だった。ホーンラビットの足元が足と一緒に凍り付いたのである。
「プゥプゥ!?」
それがホーンラビットが最後に出した鳴き声であった。カイは目を閉じていたため、何が起きたかわからなかったが、カイが目を開けるより前に声をかけられた。
「君、大丈夫?」
これがカイとラウラの初めての出会いだった。
読んでいただきありがとうございます。
今回、カイとラウラの出会いが分かりました!
次話でどうなっていくのか…
楽しみにしていただけると嬉しいです!
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