第12話 シンプルに口が悪い
救助方法は解った。
でも初っ端から結果を出すなら毒を特定する必要がある。
苦しそうだがホント外傷ないなこの子。毒の即効性も薄そうだ。
なら毒持ちの魔獣とか動物とかに襲われた訳じゃ無く、毒のあるものを食べたとか吸ったとか?
ってなると、私の推測が正しければ…
「お爺ちゃん!この森にガスがでる温かい泉ってありますか?」
あるだろ?あるよな?
「…あるぞい。」
しゃーオラッ!ですよねっ!
毒キノコとかの怪しいもの口にするにはドレス綺麗すぎるもん。
およそ冒険に向かない動きにくそうな格好なのに、汚れてるだけで傷んだり破けたりはしてない。森に入って数日と経ってない証拠でしょ。飢餓状態には陥ってないはず。
これで私の中では火山性ガス中毒に絞れた。自然界の毒素を吸い込んで起きる症状といえば、温泉地帯など源流付近で発生するガスが原因だ。それでもまだ絞り切れない。
「まだ三つもあんのかよっ!」
はやく正解に辿り着けないもどかしさに歯軋りする。
火山性ガス中毒はさらに硫化水素ガス、炭酸ガス、亜硫酸ガスに分けられる。この三択から当たりを引かなきゃいけない。
いや、まだ絞り込めるぞ!すっかり私の中で知識ガイド役に定着したシバサブロウ先生がそうおっしゃってるっ!!
「泉の近くに窪地のような凹んだ場所はあるんですか?」
即答願うよゴリ爺さま。
「ない。泉の近辺は平地じゃ。」
この状況でそんな事を何故たずねるのか不思議そうなお爺ちゃん。関係あるんですよ、それがね。お陰で答えに辿り着いた。正解は、
「硫化水素ガス中毒だ。」
「なんじゃそりゃ?」
嬉しくて思わず声に出ちゃった。でも、律儀に説明している暇はない。まずは『毒生成』で体内に硫化水素を作って、取り込んで―――。
コーして、アーして精製すれば、デキたーっ!ティロリロリンッ!!
『どーくーガースーなーおーしー。』
さっそく3カメちゃんの牙をちょっとだけ刺して”薬”を注入していく。
その際、綺麗な左腕に後々キズが残らないよう刺しすぎに注意を払う。
『どうだ!たのむっ!!』と心の中で祈る。しばらく続けていると呼吸が安定し始め、顔色も良くなってきている。
ヨカッター。もう大丈夫だよね。モタモタしたせいで苦しい思いさせてゴメンよぅ。
でも私だけじゃ間に合わなかったな。助けられたのは大先生のおかげです本当にありがとうございます。
先生が消去法で『咳き込んでないから亜硫酸ガス×、溜まる窪地がないから炭酸ガス×』って具合に正解絞ってくれたからだよ。
流石シバサブローテンテー!イケメンッ!!頼りになるぜぃ!!
それを黙って見ていたお爺ちゃんが徐(おもむろ)に口を開く。その口調からもう重苦しい空気はない。
「助かったのぉ、彼女。本当に運がいい。それも超絶の豪運じゃ。この状況でお前さんのような”お人よし”を引き当てられ、尚且つそれが”人”ですらない”天災”と等しい存在となればの。更にはそいつが”毒分野最上位の存在”というオマケ付きじゃ。幸運の加護でも持っとるんじゃないか?」
『お爺がなんか喋ってるなー』って感じで適当に聞き流しつつ、私はずっと彼女を慈(いつく)しんで楽しんでいたが、”加護”という言葉が唐突に飛び込んできたもんで、すぐさま反応する。
「か、か、か、加護ぉ!加護あんの!?あんの爺!?」
テンションが爆上がって砕けた口調のまま尋ねる。
「そりゃあるじゃろ。なんじゃ、お前の不思議な知識とやらは加護の内じゃ無かったんか?未知のもんがポンポン出てくるから勝手に思い込んでしもぉとったわ。」
いや、加護っていう概念自体が想定外だったのよ。なんて素敵なファンタジー要素だ!どんな加護があるのか想像するだけで生唾もんよ!お爺、後で詳しく!
それに、前世のものと思い込んでた知識も―――
「加護の可能性がある!?シバサブロー先生がぁ!?」
その発想は無かったわ。ヨッホッホーイッ!
「シバサ…誰?」
また小躍りを再開すると、ゴリラが訝(いぶか)し気にコチラを見ている。仲間になるかどうかは私にも分からない。
「お主の言うことは訳わからん事だらけじゃな。解らんことついでに話すけど、ワシが助けられると思ったヒュドラの能力は、お前さんが行った訳わからん謎知識の治療と違うぞ。本来はヒュドラなら周囲の毒を何でも吸いこんで、体内に取り込む能力があるはずじゃ。エルフ族からでも何でものぉ。なんたってお主は『毒で出来た大蛇』じゃからのう。」
「へぇ。そんな事でき…あああっ!しまったぁ!!毒を作って牙から”吐き出す”能力の対なら、毒を牙から”吸い込んで”自分の抗体にする能力の可能性大じゃん!!もっと簡単に救助できてたじゃーん!飛んでるアイディア思いついたら、楽しくトライできてたじゃーん!ワ〇ワクさんじゃなくてゴ〇リ状態じゃーん!!」
バタバタ悔しがるワタス。
「更についでに言うとな。」
付け加えてくるゴリ爺。もったいぶって何よ。
「実は口悪いじゃろ、お主。」
ハハッ。育ちが悪いもんでね。育ち知らんけど。
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