第8話 ドラ〇かジャ〇子
ゴリ爺に連れられて森の中を進む。
木漏れ日と言うには眩しすぎる、ステンドグラスに通したかのような色とりどりの光がキラキラと舞う。
まるで木々はゴリ爺を避け…ちょっと待って。ホントに避けてない?私がこの不思議現象について尋ねるより先に、
「そもそも自分を知らないってどう言うことなんじゃ?」
と、逆に尋ねられる。私はこれまでの経緯をなるべく細かく伝えていくと、意外にゴリ爺は興味深そうに聞き入って眼は輝きを増していく。
「なるほど。それは難儀じゃったなぁ。どれ、そういう事ならワシが名前ぐらい
付けてやろうかの。」
「結構です。」
返す刀でブッタ斬る。
「それはないじゃろぉー。まだ候補も聞いとらんのに…。」
「え~、聞くだけですよ?」
「おーよしよし。では…うん?そもそもお主、男かの?女かの?」
「そら当然…。」
ちょ、ちょ待てよっ!!私は男性だと思い込んできたが、女性の可能性もあるのか。と、ゆぅことは…
私は恐る恐る全カメさんで股下を確認する―――。
あぁ!ない!!シンボルが無い!!血潮を吹き上がらせ奮い立つ魂が!!
私は全身を震えを必死で抑えながら、ゆっくり頭を持ち上げる。
「オンナノコ ダタ ミタイデス。」
「そうか。ならヒュド子、ヒュド美、ヒュド江、ヒュド乃、ヒュド花、ヒュド…」
「和風!?しかも古風!!この世界の女性ってそんな名前なの?
しかも”ヒュド”ってなんですか!?そんな安直な名前は無いでしょがっ!
せめて取るなら”ドラ”の方がまだマシですよ!?」
「え。ドラ子やドラ○がいいって?」
「ダメ、絶対。」
「しかたないのう。ではジャ〇子、ジャイ美、ジャイ江、ジャイ乃、ジャイ花、ジャイ…」
「うぉい!ジャイどっからキタ!?」
「ヘビの蛇(ジャ)だけじゃ語呂が悪いからの。
蛇(ジャ)と大きさを兼ね備えた言葉のジャイア…」
「それもダメ。」
「じゃあ、蛇(ジャ)と大きい(ビック)を掛け合わせて、
ジャビック、ジャビッコ、ジャビッタ、ジャビッツ、ジャビッ〇…。」
「それ以上はいけない。」
なんだこの爺さんは?自信満々のクセに候補の名前は壊滅的だし、何故か危険な匂いがする名前が各所に混ざってるし。
「なんじゃい。ワガママじゃのぅ。」
そらそうよ。この候補ならそうなるよ。
「大変お気持ちは嬉しいのですが、私(わたくし)の今世の大切な名前ですので、しっかり検討して自分で決めたいと思います。」
ごねられないよう、これでもかと丁重に断ろうとすると、
「名前なんてもんわな。深く考えずに簡単なヤツを景気よくパパッと付けたほうがいいんじゃ!」
何だその謎理論。いや、ゴリ爺の場合はそれ以前の問題でしょう。
とにかく何でもいいから先に仮名を付けてしまおう。
「とりあえず『ヒューイ』と名乗りたいと思います。」
なんだか風の旅団を率いてたりとか、三つ子でわんぱくなアヒルだったりとか、追われる女の子を助けるホワイトシェパードだったりとか、息子が『オタコン』ってあだ名の原子核専門家だったりとかしてそうな名前だが、ここはヨシとしよう。
「お前、ワシとあんまり変わらんじゃないか。その名前も十分男っぽいぞ。そもそも”ーイ”はどっから来たんじゃ?」
それを言うな爺さん。私も己のセンスの無さに驚いてんだから。
”ーイ”の部分は持ってた知識としての”ヒュ”にくっ付く語呂の印象が強かったからだよ。
「まぁ、しかたないの。でも気が変わったらいつでもヒュド子に…」
「ないですから。」
ショゲてしまったゴリ爺。しまった、可哀そうなお爺ちゃんに見える。何とか煽(おだ)てて取り繕わなければ。寧ろ変な名前付けられそうになって、被害受けたの私だと思うんですけど…。ズッチいなぁゴリ爺。
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