第4話 1カメ~9カメ

 抜けていた魂が戻り、『ハッ。』と意識が蘇りました。

 その間どれだけの時間が経ったかまったく分かんないですね。

 ですが戻った拍子に一つ閃きました。


 “鉱物には物理耐性あっても超常的エネルギー耐性はないんじゃね?”理論です。


 っていう訳で、ヒュドラ的に魔法攻撃が出そうな頭くん達へ、個体を識別するための番号を仮で振っていきます。

 だって異なる魔法がでた場合に解からなくなっちゃいますもんね。視野がカメラのイメージなので1カメ、2カメって感じで。


 持ってた知識にあったスタジオでのカメラの番号順に自分の左手【下手】側から1カメ~9カメと付けました。ヒュドラの首って9本でしたっけ?


 さて、どうやって魔法を出そうか。とりあえず1カメさんから超常エネルギーを放出するイメージで…。

『ブファッ!』

 出たぁ!?そんな直ぐて噓でしょ?簡単すぎるっしょ、さすがに。いや助かるけど。


 1カメさんの魔法は、お約束の“毒霧”ですね。

 ただ、広い効果範囲でカルデラ内部がモヤモヤしてる。1発目に出てほしい魔法じゃないな、これは。視界が狭まる。


 2カメさんは少し時間を置いてから。魔法は“毒玉”でした。

 大きく口を開いてフーセンガムの様に玉を作ったら、口を窄(すぼ)めて勢い吹くと発射される。大きさはバランスボールぐらいで安定するかな?速さはそこまでじゃないが幾つでも連射が可能。


 3カメさんで問題発生。ここまで順調だったけど魔法が発動しない。

 まったく出ない。ウンともスンとも言わない。色んなイメージを試しても無理っした。攻撃するカメさんでは無いのかな?

 とりあえず後日に追加検証とし、早く脱出するためスキップ。


 4カメさんで一安心。出ました魔法。“酸毒”ですね。

 しかも丸めた舌と上顎を使って弾丸みたいに撃ち出せる。気持ち的には中距離の銃。これは使えると思う。


 5カメさんです。ついに。お待たせしました。し過ぎたかもしれません。

 中央でメインを張る首です。かなり期待大です。では、まいります。

 『ボシュゥゥゥゥウウウ!!!ドォォォオオオンンン———。』

 ハッ?マジ?マジいってんの?コレ?

 見たらわかる、ヤバい奴やんっ!喰らったら木っ端微塵の奴やんっ!超電磁砲(レールガン)みたいの出たやんっ!みんな好きな奴やんっ!

 毒のビームだけど、毒ほぼ関係ない。毒は申し訳程度の要素で衝撃音がもはやミサイル。威力エグい。


 お次は6カメさん。まさかの物理魔法で“毒針”です。

 針は体内で無限に生成できるらしい。尽きない。発射方法と性能は毒酸とほぼ同じ。毒の矢より弾って印象でメッチャ速い。対象を溶かしたくない時とかに使い分け便利そう。


 7カメさんにも期待。っと思ったんすけど…。3カメさんと同じ状態。

 魔法。出ない。後回し。


 8カメさんは“粘毒”ですね。

 トリモチみたいな毒の粘液なんで相手を行動不能にするみたい。毒玉と同じ位の大きさ安定ですが、それより速度は格段に速い。でも唾を吐く様に発射するんで汚らしい。素行悪い不良みたい。


 9カメさんでラスト。魔法は“毒煙”でした。

 これも1カメさんと同様に広域の魔法ですね。煙幕に使えそう。これ、もしかしなくても両端の首は前方に加えて側面・後方にも対応するから広範囲攻撃になってる?


 結局は全て魔法違いました。案の定。識別しといて良かった。

 魔法は両端から1-8、2-7の様に対になってる感じですね。5はモチロン唯一無二の威力。


 纏めると、

  1カメ:毒霧

  2カメ:毒玉

  3カメ:?

  4カメ:毒酸

  5カメ:毒砲

  6カメ:毒針

  7カメ:?

  8カメ:粘毒

  9カメ:毒煙

 になりました。パチパチ。


 で、こっから本来は脱出のため【鉱物魔法耐性検証実験】をする予定だったんですけど…。


 実はもう散々っぱら撃って結果でてんですよね。だって実験・検証と称していろんな首の魔法乱打した結果、『鉱石ちゃんビクともしてない。カスリ傷一つもついてない。』。

 強い。知ってた。いかにも魔法耐性ありそうな素材だもん。だからこの魔法が強いとか声を大にして言えなかったんですよ。あっ、5カメさんは別格。もう音で。


 そもそも攻撃が効くなら封印が成功してる訳ないよねー。


 うぇっへっへ。ちきしょう。

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