周盤龍（４１５―４９３）

　北蘭陵・蘭陵の人。劉宋の時代、土断法により東平郡に遷る。周盤龍は胆略人に過ぎ、弓馬に並外れて優れた。泰始の初め従軍して赭圻を攻め、門を壊して陣頭を城壁を登った。功績により竜驤将軍、積射将軍を授かり晋安県子に封ぜられた。食邑四百戸。元徽二年(４７４)、桂陽で叛乱が起こる。時に周盤龍は従僕射、騎官主、領馬軍主となり、蕭道成に従って新亭に頓していた。騎校尉・黄回とともに城の南から打って出て、賊軍と対陣、その勢いの盛んなことから城中に退き帰し、黄回と兵を合して抵禦した。ことが寧らぐと南東莞太守とされ、南東莞太守に任ぜられ、前軍将軍、驍騎将軍を加えられる。昇明元年、仮節、督交広二州軍事、征虜将軍を任され、石頭城の袁粲を平定、昇平二年(４７８)、沈攸之の反乱を平定した。督司州軍事、司州刺史、仮節を授かる。蕭道成が即位すると右将軍となった。

　建元二年(４８０)、北魏が寿春に来寇。周盤龍は軍主として豫州刺史・垣崇祖を助け、?水で決戦。輔国将軍・張倪を率いて勇力奮戦し、敵衆万余を殺す。戦後、皇上は周盤龍の無事を大いに悦び、詔書を授けてこれを慰労した。また、周盤龍の妻のために金簪二十枚を贈る。

　翌年、北魏の軍が淮陽を攻め、角城を囲んだ。皇上は成買を援軍に送ろうとしたが成買は理由をつけて拒み、やむなく出撃したところでたちまち囲まれた。皇上はこれを救うため領軍将軍・李安民に周盤龍を送った。皇上は周盤龍に「角城と漣口はようやく北魏軍が訪れたばかりであり、西路には無数の賊軍が待機している。汝は歩兵と騎兵を率いて淮陰に入って李領軍のところに帰り、鐘離にわずかな船を浮かべてこれに数日分の干草を積んで放ち、敵がそれに気をとられている間に軍を還して淮河沿いを歩いて去れ」と命令した。角城に至った周盤龍は成賈とともに勇戦し、無数の敵兵を殺傷、翌日目覚めると手に大量の血のりがついていた。成賈はその日の戦いで陣没する。

　周盤龍とその子・周奉叔は単騎二百余名の決死隊を募り、北魏軍数万に突撃、魏軍は万余の兵を左右両翼に開いて周盤龍らを包囲殲滅しようとするが、一騎速戦する周盤龍に及ばない。周奉叔没すとの報せも周盤龍の快速を止めることはできず、馬を馳せて北魏の軍を割り自ら「周公至る！」と叫ぶ周盤龍に、北賊は手も足も出なかった。まさに向かうところ敵なし。時に周奉叔が敵を大いに殺し、敵軍の外に一旦退避していた。周盤龍はそれを知らず、東を衝き西を撃ち、南に走って北を突いて、賊にあえて当たるものなし。周奉叔は父が長いこと敵中に囲まれているのを見て不安を覚え、馬を躍らせ陣中に飛び込んだ。再会した親子は思うさま敵陣を撹乱し、二百人で数万の北賊を大敗させる。という離れ業を演じる。この一戦で周親子の名は北方に轟いた。周盤龍は一見細身で病弱に見え、また言葉も朴訥であったが、陣に臨んでの並外れた勇猛ぶりは諸将を畏服させた。

　永明元年(４８３)、征虜将軍に遷り、南琅邪太守を授かる。三年、右衛将軍に遷り、給事中を加えられた。五年、大司馬、征虜将軍、済陽太守を授かる。世祖（蕭?）はしばしば軍事教練を閲兵したが、周盤龍は常に騎兵を領し、騎術を競い長矛の扱いを演じて見せた。のち病を得て改めて光禄大夫を授かる。まもなく回復し持節、都督?州緑淮諸軍事、平北将軍、?州刺史を授かり、爵位を侯爵に進められた。

角城の守将・張蒲が暗に北賊と手を結んだ。張蒲は大霧に乗じて舟を新中に進め、樵を選び、北賊の捕虜二十人を乗せて武器防具を竹の下に隠し、まっすぐ角城の東門に逼った。防御の不備に乗じて上陸、兵を率い抜刀して城門に殺到した。戌主・皇甫仲賢と軍主・孟霊宝三十数人が門前で抗戦、魏兵三人を斬る。賊の与党も創を受けて入水した。しかしこのとき北魏の軍三千が城外に殺到しており、護軍の塹壕のためになかなか進むことが出来なかったが、危急の事態であった。周盤龍は淮陰の軍主・王僧慶に士卒五百を授けて角城救援に向かわせ、北賊を退ける。周盤龍自身は戦陣に出ることを請うたが、皇上より止められて庶民に落とされ、官爵を奪われた。王僧慶の勝利により官爵に復す。大功ある勇将に対して、余りと言えばあまりな処置だった。

　周盤龍は年老いて鎮辺を守ることあたわず、致仕を求めて許される。朝廷より散騎常侍、光禄大夫を贈られた。世祖が「卿よ、頭に貂蝉の冠を戴く感覚は如何か？」と笑って問うと、「私には貂蝉の冠がよろしい。古い兜では戦陣に赴きたい衝動を我慢できなくなるので」と答えた。永明十一(４９３)年病没。享年七十九歳。安北将軍、?州刺史を追贈された。