第48話 ペルシャ-アッバース1世

アッバース一世 (大王) (1571-1629)

 偉大なるアッバース(統治1587ー1629)として知られるこの人物はペルシャ湾、そして現在のイラクにおいて軍功を上げた。彼はシャー・タマスプの曾孫であり、そしてシャー・ムハンマド・ミルザ・クダバンダ(1595没)の息子であった。アッバースがのちに王朝名を後アッバース朝(アッバースの後裔)としたのは、叔父ムハンマド、そしてカリフたるアリにちなんだものかもしれない。


 アッバース一世は1581年、クラサーン(近代的な呼称でホラーサーンおよびラサン、イラン)の統治者に任命された。その6年後にムハンマドが退位すると、彼はイラン皇帝として義父の後任となった。彼がペルシャ国王となったとき、アッバース朝はペルシャ内乱の脅威によって、そして外的にはオスマン・トルコの軍隊によって蚕食され、これに対抗を余儀なくされた。


アッバースは侵攻の脅威を終わらせるため、まずはオスマン・トルコに敬意を表して財貨を支払った。これにより、彼は彼の国内における反抗勢力を打ち負かすに十分な時間を与えられた。


 軍はウズベク人の反逆を叩くことに専心し、ホラーサーンではそれに成功した。そして1598年、長く長く続いた闘争の後に、彼の軍はモサド市の中枢を奪い、ウズベク人からの脅威を断ち切った。


 最初のサファヴィッド・リーダーとして、アッバースは近代ペルシャ-後に改名されイラン-を一つの州としてまとめ上げるのに尽力した。そして国内の言語を統一し、ペルシャ公用語とすることに成功する。


内部対立と叛乱が制圧された状況で、アッバースは外部の敵の可能性に立ち戻った。オスマン・トルコ帝国。彼らは1601年攻撃を開始し、1604年までにタブリズ(現在の東アゼルバイジャン。イランの首都)を制圧した。


 コーカサスの山岳地帯ではアッバースの戦力が、特にジョージアおよびシルヴァンで勝利を得た。このエリアでのアッバースの成功が偉業として輝かしいものではあったが、オスマン・トルコとの抗争は彼の治世の終わりまでアッバースを悩ませることになる。


1606年、アッバースはスルタン・アーメド2世の下でオスマン・トルコと戦い、シスで一連の大会戦の結果、20000人のトルコ人をこの一戦で殺した。


 トルコは和平を求めて論争を起こしたけれど、アッバースは種々の衝突でそれらと戦い続けた。けれども何年もの彼の王国に、比較的平穏な日々があった。アッバースが1616年に大勝利を収めて栄華を極めてから2年後、1618年までの2年間は、比較的穏やかな日々が続いた。


 1622年、アッバースの軍はホラズム海峡に行軍し、ホラズムの島上に上陸すると、イギリスの東インド会社の援助でその島の貿易を担っていたポルトガルの業者を追い出した。アッバースは商取引の拠点をゴンブルーンに移動させるとこの地をバンダー・アッバースと改称し、ペルシャ湾の主要市場における足場を確立した。


 1623年、アッバースの軍は現在のイラクにおけるバグダッドを取った。しかし彼らがモスル(現在の北イラク)とバスラ(現在の南イラク、ペルシャ湾近郊)に軍を展開しようとしたとき、彼の軍は逆撃され放り返されて都市を確保することができなかった。


 もう一つの戦闘により、彼はカンダハル市(アフガニスタンのカンダハル)を取った。が、それはアッバース死後1年を待たずして1630年、ウズベク人によって奪われることになる。


 その治世の間に、アッバースは、特にペルシャの首都イスファハンにおける数多の公共事業で名を知られた。彼の没年は1629年、享年は58才、あるいは59才。ハビブ・イブン・ムーサーの神殿に位置するカザーンの彼の墓はまさに脅威の人を思わせるが、その刻碑は老朽化を始めている。現代の歴史家は彼をペルシャ統一のシンボルとしてだけでなく、外敵脅威に対抗するための用兵家として彼を覚えているが歴史遺産を復旧しようとはしていない。


 彼のペルシア陸軍は中東では有名だが世界のほとんどに知られていない。しかし彼をきわめて重要な軍事的指導者としてランク付けする人物に、英国の傭兵兄弟サー・ロバートとサー・アンソニー・シャーリーがいる。


 歴史家トム・マグヌッセン曰く「注目に値する建国君主の中で、アッバースは知的であり、そして遠くを見通す目を持ち合わせてもいたが、時として残酷で、厳酷でもあった。かれは練達の、そして精力的な支配者であり、将帥であった。彼のペルシア軍改革はその練度をほぼオスマン・トルコと同等の域に引き上げた。」

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