第34話 アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン

アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン(一五八三-一六三四)

 ボヘミア人のオーストリア傭兵隊長、帝国軍総司官。主にオーストリア・トルコ戦争(一五九三-一六一六)、ヴェニスとの戦争(一六一五-一六一七)、グラディスカ攻囲戦(一六一七-一六一九)、三〇年戦争(一六一八-一六四八)などに参加。主要な戦闘はデッサウ橋(一六二六)、アルテ・ヴェステおよびリュッツェン(一六三二)、ステイナウ(一六三三)など。


 一五八三年九月二十四日、ボヘミアのヘルマニースに生まれる。両親の死後、彼はオルミュッツのジェスイット派神学校で貴族的教育を受けた。ごく短い期間アルトドルフの大学にも通ったが、一五九九年不作法ゆえに退学。その後広くヨーロッパの南方と西方を旅し、ボローニャとパドヴァで学んだ。


一六〇四年一〇月一〇日、グラン攻囲戦においてハンガリー皇帝ルドルフ二世の軍に加わり、活躍して栄誉を勝ち得た。一六〇九年ボヘミアに帰り、未亡人ルクレツィア・フォン・ブコワと結婚。一六一四年に彼女が死に、そのモラヴィアの所領はヴァレンシュタインが相続した。


彼は騎兵二〇〇を養成、これを指揮してヴェニスとの戦いでグラディスカを包囲攻撃した(一六一五-一六一七年)。


三十年戦争の発生において、彼はボヘミアのレジスタンスへの参加を拒絶。胸甲騎兵連隊創設のため財産・証券をもってウィーンへ逃げた。彼はガブリエル・ベトレン(ベートレン・ガボル)と戦ってこれを粉砕・勝利し、一六二〇年一一月二〇日プラハ近郊白山でのプロテスタントの敗北の後、モラヴィアとボヘミアの広大な土地を獲得した。


はじめ王権を主張する神聖ローマ帝国の伯爵(一六二二)となり、のち(一六二三)公爵。一六二三年には裕福な遺産相続人、イザベラ・カタルナ・ハラッヒと二度目の結婚。彼は一六二三から一六二四,モラヴィアで対ベトレンの作戦を継続し、一六二四年フリードラント公。一六二五年四月、デンマーク介入前夜、皇帝フェルディナンド二世の直属の軍隊を預かる。一六二六年四月二五日、デッサウ橋でエルンスト・フォン・マンスフェルドの軍を撃破。マンスフェルド死後、彼は北に帰ってティリーと合流し、八月、リュッターでティリーとともにクリスティアン四世を撃破し追い落として、一六二七年戦争からデンマークを脱落させる。これらの成功から一六二八年、彼はサガン公とされ、さらにメクレンブルク大公として広大な所領を与えられたが、北ドイツを服従させる彼の試みは一六二九年二月二十四日から四月四日までに到るバルト沿岸シュトラールズント市の意外な抵抗により頓挫させられた。


 ヴァレンシュタインは彼が望んだときだけ帝国の命令に従ったが、彼はすでに自分の所領と掠奪による収入で巨大な軍事力を保有するに到っており、事実上彼は独立国の君主と言って良かった。一六三〇年八月、フェルディナンドはその軍事力を惜しみながらも強権をおそれて彼を解雇し、彼は一旦フェルディナンドに彼の公爵領から引退させられたが、グスタフ・アドルフのドイツ侵攻と一六三一年九月一七日の第一次ブライテンフェルトにおけるスウェーデン軍のティリーへの圧勝は、皇帝にヴァレンシュタイン再起用を決めさせた。


 ヴァレンシュタインは一六三二年七から八月、ボヘミアからザクソン人を駆逐し、スウェーデン軍のニュルンベルグへの前進を阻むと、一六三二年九月下旬から十月下旬、アルテ・ヴェステに強固な野営地を築いてグスタフの猛攻をやりすごした。一六三二年一一月一六日、グスタフはリュッツェンに決戦を期し、ヴァレンシュタインは彼を殺した。しかしスウェーデン軍はむしろいきり立って戦い、ヴァレンシュタインは長く厳しい戦闘の末、撤退する事を余儀なくされた。彼はボヘミアに退いて冬営した。


 一六三三年皇帝フェルデナンドが和平交渉の活動に入ると、彼は帝国から亡命してその翌年を無気力に過ごした。しかしフェルディナンドにとってヴァレンシュタインの存在はすでに障害でしかなく、皇帝は一六三四年1月二十四日ヴァレンシュタインの密計をでっちあげると二月一八日には彼を大逆罪で告訴した。それまで不活発に病気を装ってきたヴァレンシュタインは占星術によりスウェーデンに身を投じる事に決したが、その前に帝国の士官イェーガー・ギャリソンが彼と彼の幕僚達を殺した。


ヴァレンシュタインは帝国の政治権限の断固たる支持者ではあったが、しかし宗教的派遣の再確立に対しては賛同しなかった。彼は帝国の将帥で最上級の能力を保持していたが、しかし戦術的、戦略的技能においてグスタフの才に一歩及ばなかった。ただし狡くて粘り強く、臨機の才に富んだ彼は、彼自身の大規模な作戦を遂行するため自らの所領をフルに活用し、その方面に関しては素晴らしい管理能力を示した。

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