第05話 タダより高いモノはないよね
「え、マジで見つかったんだけど……嘘、本当に?」
捜索開始からたったの十分。
まさかの展開に驚いて、僕は思わず自分の目を疑った。
いや、だってこんなに簡単に見つけられるとは思わなかったもの。
それに、なんだかこの世界に来てから悪いこと続きで運なんて無いに等しかったし。
というか、普通ならこういう異世界転移ってチート能力の一つでもプレゼントするのが筋ってものじゃないの? なんで僕はこんな序盤で寝床と水探しのガチサバイバルなんてやってるんだよ。
あの天使風美女め。連れて来たんなら、せめて能力ぐらい用意しておいてほしい。
もしくは異世界での生き方的なチュートリアルでも可。
まあ、今は寝床(仮)を見つけられたから気分がいいので、このくらいで許してやろう。
そんなことを考えながら僕はゆっくりと、見つけた元巣と思わしき洞窟の中に入っていった。
「うわ、でかい蜘蛛の巣……でも、新しいのはないな。やっぱり」
洞窟内は三メートルぐらいの高さがあり、余裕で入ることができた。
元はきっと蜘蛛型モンスターの住処だったんだろう。辺りには巣と思しき巨大な糸の残骸が幾つも散らばっている。
ぬちゃぬちゃ、と歩くたびに足裏越しに伝わる感触が気持ち悪いけど今は我慢だ。
やっぱり、マイホームの安全性はしっかりと確かめないとね!
「にしても、ここの巣の主がいなくて本当に良かったよ。このサイズなら間違いなく僕のことなんて……うん、想像するのはやめようか」
一瞬、自分が糸で縛られ巨大な蜘蛛の顎に捕食されるシーンを想像してしまった。
……おえっ。予想以上にグロいな。なしなし! 今の脳内映像やっぱなしで!
と、そんなこんなで歩くこと五分。
万が一鉢合わせたらいつでも逃げれるように気を付けてたけど、この分じゃ大丈夫そうだな。
うん、よし、決めた。
ここは今日から霜根辰郎のマイハウスや!
若干、変なテンションになってるのは自覚してるけど今は見逃してほしい。
だって、今までの野宿からようやく解放されそうなんだよ!?
これはテンション上がってもしょうがないでしょ!
というか、もう本当に野宿だけは勘弁したい。
……あー、にしても今日はよく頑張ったな、僕。
疲労感と達成感の両方を感じながら、僕はその場に座り込んだ。
「本当なら適当な柔らかい葉っぱとか持ってきて、枕代わりにしたいけど……今日はいいや。明日やろーっと」
明日やろうは馬鹿野郎。
そんな言葉があるけど、しったこっちゃないね。今はとにかく、この安心感に心から浸っていたい。マジ、洞窟最高。
敷金、礼金、おまけに家賃までなしとか、ちょっと優良物件過ぎなーい?
粘着質の蜘蛛の巣が散らばってるのを除けば、かなり良い家だよね、本当。
「さて、それじゃあ寝る前の一発決めちゃいますか」
寝る場所は決まり、安全性は確保された。
これがどういうことか、わかるかい?
ふっふっふ……つまり、いよいよオナニーの出番ということだよ!
異世界に来てからというものまだ一発も出してないのだ。モンスターが跋扈している森の中では変態紳士たる僕でも流石に無理だった。
おかげで強制オナ禁生活を強いられていた僕のムスコの限界値はすでに突破寸前だ。
これはもう、するべきだろう。いや、するしかないといっても過言ではないね!
たとえ、誰かに止められたとしても僕はやる!! やり遂げてみせるんだっ!!!
「よしっ――するか!」
覚悟を決めてジャージを下ろす。
あー、この解放感。誰にも邪魔されない高揚感がたまらない!
前立腺がまるで導火線になったかのように快楽の火花が全身を駆け巡る。
僕は横になると、この世界に来て初めて用を足す以外の目的で息子を握りしめた。
「ふっ……まさかオカズなしの妄想ニーをこの僕がするとはね。だが、僕は変態紳士――その名誉にかけて、オナニーに対する妥協は絶対にしない!」
目を閉じる。生まれた暗闇の中で僕は妄想で想像した美少女の姿を思い描く。
すると、その瞬間、いきなりムスコがフルスロットルになった。
こ、これはどういうことだ!? こんな序盤で直立するなんて今までは……っ!
いや……違う。これはここ数日のオナ禁の効果によるものだ。
ふふっ、ここ数年。いつも自己研鑽に励んでいた僕はどうやら忘れてしまっていたらしい。
禁欲の効果を。その反動の凄さを!
「うおぉぉぉぉぉぉッッ!!」
止まらない! 右手の加速が止まらないんだ!
荒ぶるムスコの暴走に僕が戦慄していると、何やらピチョピチョと耳元で聞こえてきた。
……え、まさかもうイったのか? でも、出た感覚はなかったけど。
も、もしかして、異世界転移の転生ギフトって早漏だったりしませんよね?
恐怖心にかられて、僕は咄嗟に目を開きムスコの方を確認した。
「よかった。まだ出てないか……でも、それならこの音は一体?」
ふと、気になって目線を洞窟の天井に向ける。
そこには、ぶら下がった馬鹿デカい銀色の蜘蛛が僕のムスコを見てガチガチと顎を開け閉めしていた。
口元から垂れた緑色の液体がポツポツと洞窟の壁面に滴りおちている。
……あ、なるほど! 音の正体はこれだったんだー!
早漏にジョブチェンジしなくて本当によかった――
「じゃねぇぇぇぇよ!?」
この世界に来てから一番の僕の叫び声が洞窟内に響き渡った。
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