第03話 枕が変わると人って寝にくいよね

 自分の現状は確認できた。


 さぁて、問題はこの後だ。

 来てしまった以上、僕はこの世界で生き抜かなければいけない。

 僕だって死にたくはないし、死ぬつもりもサラサラないからね。

 もう異世界だから生きていけないッ! なんてネガティブ思考はそこら辺に捨てておく。

 高校受験の面接でも、自分の長所は切り替えの早いところです! と自信満々に言ったぐらいだ。まあ、まさかその真価を異世界で発揮するとは思わなかったけど。


「とりあえず目標は安定して寝泊りできる場所の確保かな。あとは水と食料」


 やはり人間は衣食住の三つは生きてく中で欠かせない。衣はないけど。

 最高なのは通りかかった優しい人が家に泊めてくれるとかだけど……そんな幸運が僕の身に起こるとは思えない。なんせ、オナニーしてたくらいで異世界に飛ばされるくらいだからね。

 それに違う世界とはいえ、人の善意に依存するのはどうかと思う。

 だから、森の中で眠る場所を探すのはやっぱり最善だ。

 それに町に降りるには、まずこの世界の情報をある程度、確定してからの方がいい。

 あとは食料と水の問題だけど……これはぶっちゃけ未知数なんだよね。

 人間は三日は水を飲まなくても生きていられるらしいけど、逆に三日を超えると命が危なくなる。

 だから、優先度としては水>寝床>食料、ってとこかな。


「よし、それじゃあ今日は寝るとするか」


 ひとまず今後の行動指針は決まった。

 今日はこれ以上、動いても体力が減るだけだろう。僕は背の高い木の根を枕代わりにして眠ることにした。

 モンスターの危険性は依然としてあるけど、そんなことを言ったらキリがない。

 捜索するにしても朝を待ったほうが効率もいいし、何よりも体力と気力を回復するためにも睡眠をとることは必須だ。


「はぁ……首が痛い」

 

 ゴツゴツした木の根が寝返りを打つたびにぶつかってくる。

 だが、めげずに目を閉じると、やがては眠ることができた。

 人間の適応力ってすごいね。やっぱり。


 瞼の中に広がっていく闇を前に、僕はこの世界で生き抜くことを誓った。


 そう……全てはオナニーのために

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