5-8

 クローゼが倒れた直後、ブリッジに通信が入った。


『こちらシュタルニア公安部』


 左右の窓には、シュタルニア公安の攻撃飛空船が見えた。彼らが間に合ったことに、ライルはひとまず胸をなでおろす。


『貴殿らにはシュタルニアに対するテロ行為の疑いがかけられている。よって特例により、貴殿らを拘束する。こちらの指示に従ってドックに停船せよ』


 指揮系統を失った航空士たちに抵抗するつもりはないようで、飛空船は回頭し始める。

 すると隣にならんだシエルが言ってきた。


「ライル。ボクが来ること、わかってた?」

「……なんとなくな」

「そっか」


 ――と、シエルが手を引く。


「さ、ライル、逃げよう。その格好じゃまずいよ」


 言われて、ライルはベイドリックとの約束を思い出す。おそらく、あの公安の飛空船にベイドリックは乗っている。

 ライルは笑顔を作ると、シエルに告げた。


「いや、いいんだ」

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