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星の瞬く帝都フェルゼン。アルカンの円形広場で突然起きた騒ぎに、周囲は騒然としていた。集まった警官たちは捜査のために動き始め、やじ馬が一帯から遠ざけられる。
だがそんな中、アルカンの円形広場が突然左右に割れた。機械的な音と共に円形広場が開いて、そこから巨大な飛空船がゆっくりと浮上してくる。
そして、市民にとって懐かしい声が響いた。
「レディースアンドジェントルメン!」
見れば、飛空船の上に彼はいた。白銀の燕尾服を風になびかせ、華麗なものごしてシルクハットをつまんでいる。つけていたのはモノクルだったが、その見た目はまさに――
「ランスロットだ!」
誰かの声を皮切りに、民衆が、フェルゼン市警がざわめき立つ。
「ホントだ、ランスロットだ!」
「きゃーっ♡ 嘘ぉっ! 今日予告出てたの!?」
「やだ私カメラ持ってきてない!」
「こっち向いてーっ♡ ランスロット様―っ♡」
その声に、ランスロットはいつもの笑みで応える。
「長らくお会いしていなかったのに、この泥棒めを覚えていてくださるとは。誠に光栄でございます」
「はは! 忘れるわけねーだろ!」
「今日は何を盗むのー!」
すると彼はシルクハットのつばをはじいた。
「誠にお恥ずかしい話なのですが、今宵、私のお宝が盗まれたのです。私のアジトは無粋な者たちに破壊され、宝を盗んだものは既に逃走。今からこの飛空船で追いかけるところなのです」
「ランスロットも出し抜かれることがあるんだなー!」
「でもそういうとこも大好きでーす♡」
民衆は口々に声を投げる。壊れた建物と飛空船はランスロットのもの。彼らはそれを確信し、まさか政府との関係に気づく者など皆無だった。
「せっかくの再会ですが、今日はこれで失礼しますよ。私にとって、夜はとても短い」
すると民衆の中から、一つ声が飛んだ。
「また、会えますかーっ!」
その女性の声に、ランスロットはウインクして、
「いつかまたきっと。素晴らしいお宝のそばには、必ず私がいますよ」
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