4-10

 船内を連行されてゆく途中、体に響く重い音が立て続けに響いた。

 通路にあった窓を覗いて、シエルは思わず足を止める。眼下では、アルカンサーカスの建物が徹底的に爆撃されていた。度重なる衝撃と振動で建物は瓦解し、屋上も完全に崩れ落ちていた。三階が自重で崩落し、粉塵が猛烈に吹き上がる。それでも爆撃は止まらない。


「やだ……やめてよ……」


 見ればミアもベルテもユアンも同じように足を止め、茫然とその様を見つめていた。特にミアは、その瞳に自責の念が見て取れる。黒部隊は急かすように銃を突きつけてくるが、シエルは構わずがなった。


「やめろよ! 死んじゃうだろ! ライルもガストンもエリザベートも、まだあの中にいるんだ! 今すぐやめさせろ!」


 シエルは暴れるが、すぐに取り押さえられまた床に組み伏せられる。だがそれでもシエルは目に涙を溜めて抵抗を続けた。


「許さない! 絶対、絶対許さない……! 降ろせ……ボクたちをここから降ろせぇっ!」

「――黙らせろ」


 黒部隊の誰かがそう言って、シエルの腕に円筒形の器具が押し当てられた。それは圧縮空気で肌を貫通させて薬剤を注入する注射器ハイジェッター。ぱしゅっと音がして、直後、シエルの体の力が抜ける。


「なんで……こんな……」


 押し寄せる悲しみもろとも、意識が闇に攫われた。

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