4-7
ライルたちがフェルゼンに戻ったのは、日付が変わって午前二時のことだった。
極端に急いだわけでもなかったが、フリーウェイが空いていたこともあって、結果的にはかなり早く戻ることができた。
戻った後はざっくり片づけを済ませて、あとは各々休息に。しかし思ったほど眠くならなかったライルは一階の舞台裏に留まり、適当な資材に腰掛けてぼんやりとしていた。
「あ、こんなとこにいた」
声のした方を向きやると、階段を降りてくるシエルと目が合った。彼は最後の一段を飛ばして飛び降りて、歩み寄ってくる。
「どうした?」
「別に。どこにいるのかなって思って。……寝ないの?」
「ちょっと眼が冴えててな。すぐ戻る」
「いいよ別に。好きにして」
「っても、監視対象がプラプラしてたら、お前ゆっくりできんだろ?」
「あー。そんな義務もあったねぇ」
「あったねって……」
するとシエルは隣に腰を下ろしてきた。
「ボクはライルのこと最初っから信じてるからね。監視も相部屋も、あくまで団長の命令だし。あ、だからって相部屋が嫌だったとかじゃないからね。ボクはライルと一緒にいるの楽しいし」
向けられたのは純粋な笑顔で、ライルは少し気恥ずかしくなった。咳払いして腕を組む。
「そういや、ユアンたちもまだ起きてるのか?」
「部屋電気ついてるっぽいし、たぶん皆起きてるよ。ボクもあんまり眠くない」
「元気なもんだな。お前ら、帰りのジェスターの中でずっとトランプだかで遊んでたろ」
「〈公演〉の興奮冷めやらぬ、って感じかなー。アクターズ・ハイ、みたいな。夜にライルの演出で〈公演〉やるとこうなるんだね」
「そんなもんか」
「ライルだって、そうなんじゃないの?」
「……ん。まぁな。昔も、いい盗みの後はこうなることがたまにあった」
「おっと自画自賛」
「怪盗はそんくらいでちょうどいいんだよ」
シエルは、マイクを掲げるふりなどして、
「ではライルさん、どの辺がよかったですか?」
「いけ好かない奴らからお宝を奪うのは、やっぱ快感だった」
「うわ、悪党っぽい」
「俺は悪党だ。今も昔もな」
シエルと二人、歯を見せて苦笑する。だがシエルは表情を引き戻すと、ぽつりと言った。
「ありがとね。今日」
「ん?」
「ボクのお願いきいて、盗みの計画立ててくれたでしょ」
「別に礼を言われるほどのことじゃないさ。俺だって連中にはムカついた」
「それでもボクは嬉しかったのです」
言われてライルは、鼻先を指でひっかく。
「……なら、よかった」
ちらりと横を見ると、シエルは本当に嬉しそうに頬を緩ませて、足を交互に放り出していた。満足のいくようにしてやれて良かったと、ライルも改めて満足する。
「でね。頑張ってくれたライルに、プレゼントがあるんだ」
言いながら、彼は跳ねるように立ち上がった。
「……プレゼント?」
「うん。これからボクのとっておき、キミにあげる」
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