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煙は完全に風にさらわれ、その場には静寂だけが残っていた。クローゼは集まってきたイクリプスに肩を貸してもらいながら、ふらふらと立ち上がる。体の自由は戻ってきていた。
「なんだ……何なんだあの連中はぁっ!」
吐き出すように絶叫する。そばには、空のアタッシュケースだけが転がっている。それだけで状況は全て察せた。
出し抜かれた。終始ふざけたようなあんな連中に。
今すぐ追撃したかったが、こちらには飛空船以外に足がない。煙の中で聞いた走行音は、奴らが移動にキャリッジを使っていたことを示している。この大都会に紛れた一台のキャリッジを今から追跡するなど不可能だ。
「主幹」
声に振り返ると、ヴァレリーが立っていた。彼女の唇には、赤黒い血の塊が張り付いている。
どうしますか。
いつものように聞かれると思い、クローゼは顔をしかめた。どうもこうも、策などないことは、彼女にもわかっているだろうに。どこまでも実直なのは彼女の美点だが、こんな時ばかりは鬱陶しく思った。
しかし彼女が続けた言葉は予想外のものだった。
「彼らの行き先を、掴めるかもしれません。一人の背中に、『日食』を見つけました」
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