3-11

「――諸君。再確認だ」


 むき出しの鉄板と鉄骨で造られた格納庫。サジタリウス前部にあるその空間に、クローゼの言葉が響いた。

 今、彼女の前には百名ほどの人間が整然と並んでいた。引き締まった体に、皆一様にぴったりとした黒い戦闘服ボディースーツを身に着け、口元には防毒マスクを装着している。手にはマシンカービンを一丁持っていて、腰には巨大なククリナイフが提げられていた。

 顔を見る限り人種は多種多様。年齢も二十代から四十代辺りと比較的幅広い。ただ体つきからして、その集団は全て女性だった。最前列には同様の衣服を纏ったヴァレリーの姿もある。

 クローゼは彼女らを見渡しながら続ける。


「いいか。今回の作戦は制圧であり襲撃。肝要なのはドラモンドの確保だ。金庫を開けるまで奴は絶対に殺すな。逆にそれ以外は誰を殺しても構わない。障害は徹底的に排除しろ」

了解ラージャ


 漆黒の部隊が、一糸乱れず答える。


「一番、二番、三番隊は対地砲撃と共に落下傘パラシュートで降下。その後は速やかに展開し、正面と東西から攻め入れ。四番隊は降下地点で待機。サジタリウスの着陸支援と周辺警戒にあたれ。それと予定通り、今回は私も降下に同行し直接指揮を執る。――ヴァレリー」

「はい」

「お前の小隊と同行する。シャドーエメラルドを私の手に導け」

「承知しました」


 その時、クローゼの懐から声がした。


『――主幹。応答願います。こちら操舵室』


 クローゼは部隊に向かって平手をかざすと、ジャケットの内ポケットから小型の無線機を取り出した。


「なんだ?」

『目標、見えました。間もなく上空に侵入します』

「……よし。火器管制最終チェックに入れ。右舷砲塔『マーズ』『プルート』起動。投下爆雷、一番から四番、装填開始」

『了解』

「砲撃は躊躇うな。特に庭園は徹底的に爆撃、着陸を万全にしろ。以上だ」


 クローゼは無線を切ると、黒の部隊に向き直って両手を広げた。


「さぁ諸君、間もなくだ! 今宵、稟議は承認された! 宵の明星として星の影イクリプスの力を存分にふるえ! この作戦はわが社の、次のイノベーションに繋がる!」

「我らの力、社の未来のために!」


 黒の部隊――イクリプスの一同がマシンカービンを掲げる。それを見て、クローゼは嗤った。


 

これが力だ、ドラモンド。

 あたしを弱者呼ばわりしたツケを、払わせてやる。



 間もなく、グラン・ミネラが爆轟と共に震えた。

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