2-7

 それは、正午前のこと。

 東西フェルゼンの繁華街上空には、謎の大型バルーンが現れていた。

 ペリカンをデフォルメした極彩色のバルーンで、奇異な見た目に市民の目は釘付けになる。

 だが直後、バルーンが急激に膨らみ始めた。異常な大きさまで膨張したバルーンはもはやペリカンと認識できなくなり、ほとんど球形のようになるまで膨らみ続ける。

 瞬間、バルーンが内圧に耐え切れず破裂した。バルーンは散り散りに破れ落ち、花火がひゅるひゅる飛び出して爆発する。さらに中からは大量の紙片――手作りらしいビラが散った。

 ビラには、こう書かれていた。



 レディース&ジェントルメン。

 本日正午過ぎ、大自然と人類の英知が交わる場所にて、最高のショーを開催いたします。

 命をかけたアクターたちの輝きを、どうかお見逃しなく。

                              ペリカンサーカス

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る