第6話

 二週間、何事もなく過ぎ去った。体育祭の練習が体力を削っていくだけの日々。会場係はすごく楽だった。前日と後日に働くだけなのだから。


「おはよ、川井くん」

「おはよ、神崎さん」


 毎日、同じような生活。今日も練習だろう。ぶっちゃけ、入場行進なんてなくてもいいと思うのは俺だけなのだろうか?


「もう夏も終わりだね」

「そうだな」


 九月ももう半ば。まだ暑いとはいえ八月ほどではない。日の入りもだいぶ早くなってきた。


「そういえば、川井くんは二年後だけど応援団やるの?」

「……どうしよ」


 応援団、それは高校三年生で構成される団体だ。高校最後の行事だと言っても過言じゃない(らしい)。受験とか考慮したら文化祭とか球技大会とかは全力で取り組むことはできないのだろう。


「神崎さんはどうするつもりなん?」

「私は……どうしよっかな〜」

「決まってないんだ」

「うん」

 

 会話が終わった。喋ることがない。そろそろ現実を見た方がいいのだろうか? うん。見よう。


「なんで、え? 今日課題提出の日なん?!」


 おっと、誰かが代わりに言ってくれたわ。助かる。(自称)優等生の俺でもさすがに把握してなかった。確かに夏休み前に言ってた気がせんでもないが……普通、授業で触れたりしない? 先生、それ、悪意ですよ?


 体育祭期間でも朝練をする野球部の練習が終わり、始業の時刻が迫っていることを伝えてくれる。


「やってないの?」


 僅かに心配そうにこちらに問いかける神崎さん。眉毛の端っこって人間には下げることができないらしい。


 ……と、まだ現実逃避をしていたみたいだ。


「あと、五ページ」

「……びみょいね」


 そうなのだ。急いだらギリ終わる……かもしれない。そんなところなのだ。ほんとに微妙なラインである。


「やるけどな。一応、モブは優等生なのが定番だから」

「……もぶ?」


 君は分からなくてもいいんだよ。ネームドキャラクターよ。


 俺と時間の勝負がいま、幕をあげた。



 ★★★★★


「勝った……!!」


 まるで神が祝福してくれているかのようだ。そんなことあるわけないのだが。


「おめでと」


 女神が祝福してくれました。これはこれでありではある。


 そこに先生が入ってきた。


「あ〜、今日は一応課題提出の日だったんだが、予告するの忘れてたから明日でいいぞ〜」

「「よっしゃァァァァああああああああぁぁぁ」」


 若干数名が雄叫びをあげた。が、俺はそんな気分にならなかった。むしろ不機嫌。ムカつく。窓の外に先生を投げてやりたいくらいだ。


「……」

「……」


 クソみたいに晴れてる空を仰いだ。少しだけだが気分が晴れた。


        〜あとがき〜


 次回から体育祭編です!

 お楽しみに!



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