第7話
「ねぇねぇ」
「なに?」
まだまだ夏の暑さが引かないどころか、今年の最高気温を塗り替えそうな今日、体育祭の前日を迎えた。今日は俺の仕事の半分が詰まっている。放課後に会場設営なのだ。
「昼休憩に会合あるよ」
「分かった」
くっそ面倒臭い。それでも他より少ないのは確かなのだ。文句は言うまい。てか、その情報はどこから仕入れてるんだろ?
「サボっちゃダメだよ?」
「分かってるって」
俺、神崎さんにどんなイメージ持たれてるのだろうか……面倒くさがりではあるが、やることはやるのだが……
そんなことを思いながら退屈な授業を受け昼まで過ごした。
★★★★★
「……え〜、これで会合を終わる。放課後、よろしくな。んじゃ、解散」
ドタドタドタドタ……
会合はあっさり終わった。放課後に残って会場の準備をするだけだからだろう。あと五時間目が終わり次第放課後になるらしいから、相当時間がかかる前提なのだろう。
「放課後、頑張ろうね」
神崎さんの笑顔。それだけで致死的なダメージを心に負う。しかし、この半年で耐性はつけてきた。即死は回避出来た。俺にしては上出来だろう。
「おぅ」
返事した瞬間、神崎さんの笑顔がニパッて開花して……
「ぐはぁ……」
俺は戦闘不能になったのだった。
★★★★★
「きりーつ れー」
「「「ありがとうございました」」」
五時間目が終わり、俺の仕事の時間がきた。会合であった通り、体操服に着替えてグラウンドに行く。
日差しが強いとかその次元じゃない。焼かれてるみたいだ。少しくらい曇ってもいいと思う。てか、曇ってくれないとやばいかも。六学年分の会場係と先生が集まると流石に人類がゴミのようだ。
『それでは、学年毎に並んでくださーい』
拡声器越しに指示が出される。俺は人の間を縫って高一が集まっているところにたどり着く。思ったより近くで助かった。
『昼休憩でも説明しましたがー 足りないテントをたてるのと、既にたっているテントの移動ですー 一、二年生白線の引き直しをしてもらいまーす。 テントは軍手をしてやってくださーい。一クラスあたり二人いると思うので、一学年で一つのテントを建ててくださいねー 以上、作業に取り掛かってくださーい』
わらわらーって人間が動き出す。俺も押されて歩いていくしかない。
ガシッ
「川井くん、こっち」
「え?」
神崎さんに手首を掴まれてグッと引っ張られた。俺は人の流れに逆らって神崎さんの元にたどり着く。
「ほら、流されていかないでよ」
「助かったよ」
心音がうるさい。ダメだ。うるさくてもう……
暑さと急な心拍数の上昇で俺の鼻から血が流れ始めた。白いグラウンドを赤色が彩る。
「え?! だ、大丈夫?!」
「……」
「黙らないでよ!? 怖いじゃん」
「大丈夫だ、よくある事だろ? 暑くて鼻血出るのは。神崎は無かったのか?」
「そ、そうかな? 私は無いけど……」
俺は暑さとは生まれてこの方仲良くできたためしはない。誰でもないか。あと、もうひとつ。あんまり暑いと、俺は、IQがガタ落ちする。まともに考えることなく喋ったり、行動したりする。今回も例に漏れずIQがガタ落ちしてた。
「そうか、こんなに細いのに身体は丈夫なんだな」
「ひゃっ」
俺は神崎の手首を握ってそんなことを鼻血を垂らしながら言う。後で振り返ったら確実に死にたくなるようなことも平気でやってのける。
「かっかっかっ」
「カスタネットか?」
「川井くん!!」
神崎さんの大きな声に俺は正気を取り戻した。手首を握る俺の手。おかしい。そんなことをした覚えはない……こともなかった。
「ごめんなさい」
「う、ううん。だ、大丈夫だよ? 気にしないで」
無理やぁぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!
やってしまったことを認識し、とりあえず鼻にティッシュを突っ込んだ。それから、どちらからという訳でもなく準備に取り掛かったのだった。
〜あとがき〜
ここまで読んでいただき、ありがとうございます! 準備が終わり、体育祭がいよいよ次回から始まります!
川井くんがどんな活躍をするのか!
神崎さんがどう魅せてくるのか!
どうぞお楽しみに
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