第3話
「ごめん、待った?」
「いや、そんなことないぞ」
放課後、他の生徒達があらかたはけたあと、教えてくれることになっていた。しかし、クソ先公が神崎さんに仕事を頼んだのだ。先生よ……一回くらい天に召されたらいいのに。
「よいしょ」
「……!?」
神崎さん、机を寄せた上にこっちに寄ってきたら……俺のキャパが……もたん……
「んで、どこからわかんないの?」
なんでそんなに涼しい顔してんの?
「えっと……どこがわからんかわからん」
「そこからかぁ」
なんでちょっと嬉しそうなん? Mなん? 頭逝っとん? 大丈夫?
「えっと、ちょっと待ってね」
そう言って神崎さんは教科書とA4の白紙を一枚をカバンから取り出して、なにか書き始めた。カリカリと、無音の教室に響く。その音に身を委ねてたら……
「はい、できた」
と、ものの五分ほどで何かができたらしい。
「一つ三分」
そう言って渡されたのは、先程のプリント、しかし、先程と打って変わって紙面は真っ白ではなく、文字がかなり書いてある。全部、問題だ。
「うげぇ」
「5問しかないから頑張ってね」
「しか、とは?」
綺麗な笑顔でスルーされてしまった。そしてじっと俺の手元、主に解答欄に視線を向けている。解くしかないようだ。俺は1問目に目を向ける。
『次の式のグラフの頂点を求めろ』
できるわ、平方完成するだけや。よし、次
『……この式の解がどちらも自然数解を持つ時、aの範囲を求めよ』
……!?!?
「ちょ、これは、急にレベル上がってね?」
「そうかな? めっちゃ簡単だよ?」
「は?」
次だ次、無理よ
『…………〜〜!!!!……20★★年センター』
……
『………………〜〜〜〜♪♪♪♪…………★★大学』
……
『……?★★〜……〜♪★……〜♪……★★大学医学部』
……
「どう?」
「教科書って何?」
「え?」
「さっき、教科書開いて作ったやん。これ」
「うん」
「教科書の問題なの?」
僅かな沈黙。そして、神崎さんは目を逸らした。綺麗な横顔には一筋の汗。
「わざと?」
「そ、そんなことないよ?! 私は解けるから良かれと思って……」
「……」
「ごめん」
「いや、教えてくれって言ったのは俺やから謝ることはないんよ……むしろありがとう」
「……!」
神崎さん、表情がコロコロ変わるな。見てる方まで楽しいや。にしても、入試問題解けるって言ったよな? やばくね?
「教科書の問題でやって頂けませんか?」
「わかった!」
で、なんでそんなに嬉しそうなのよ。やっぱりMっけあるのだろうか?
「とりあえず、これかな」
「これはね、ここを……」
ふわっと不意打ちのように香る神崎さんの匂い。あまり主張せず、だが、心を落ち着かせるようかいい香り。俺は急に気恥ずかしくなった。なったのだが、神崎さんがあまりに熱心に教えてくれるからどうでも良くなった。
「……それで、これを代入して計算するだけだよ。わかった?」
「お、おう。やってみるわ」
ようやく分かった。変に新しいことやったからこんがらがっていたのだ。
「分からないは放置したらダメだよ? 私でよければ教えてあげるから……ね」
「あざす」
優しすぎる。今、この優しさを独占できてるって思うとちょっと嬉しかった。その日の夜、寝付きが悪かったのは言うまでもない。
〜あとがき〜
ここまで読んでいただきありがとうございます!
もし、少しでもいいなって思ったら★、♥、フォローをお願いします!
書くの遅いですが、これからもよろしくお願いします!!
では、また次の話で会いましょう!
失礼します。
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